君は死なず、されど
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某日。
とある小国の上空。
「喝!!」
デイダラの掛け声とともに、下方から爆発音が響く。
「どうだ○○!オイラの芸術は」
「久しぶりに見たけど、相変わらずすごいね」
誇らしげに胸を張るデイダラに、○○は惜しみなく賞賛を贈る。
こうやって○○のように純粋に褒めてくる状況に慣れていないのだろうか。デイダラは瞳を輝かせ「当然」と呟いた。その顔だけを見るなら年相応の青年に見えたとか。
「○○、あんまり甘やかすな。
それからデイダラ、今回の任務はあくまで制圧だ。忘れんじゃねぇぞ」
「抵抗する意思のないやつは放置。殺すのは上役、その周囲の人間。
……わかってるよサソリの旦那。うん」
傀儡であるヒルコの中へ身を潜めるサソリは、長い尾をゆらゆらとデイダラに突きつけ、そう窘めた。本体とは違った低く唸るよう声は横にいる○○の耳にもしっかり通り抜けていく。
「……まぁいい。とにかく、小国と言えどこの国はちと広い。
こっからは三方に別れて制圧していく」
「ちょっと待ってくれよ旦那。少々広がろうとオイラにかかれば大したことないぜ。うん」
「お前一人に任せちまうとやらなくていい場所まで爆破しちまうだろうが!
余分な修繕費がかかると角都がうるせぇし、なにより任務後には後始末もしなきゃならねぇ……。そのしわ寄せを味わうオレらの身にもなりやがれ」
さっきよりも強めに、サソリの尾がデイダラへと向けられた。
五本の指に収まる数にすらならないくらいに二人と任務に行った経験がない○○は、これがこの二人のいつものやり取りなのだろうか。
……などと思いながら、あの二人を思い浮かべたとか。
さて。
なぜ○○がデイダラ、サソリと一緒の任務をやっているのか。
なぜ角都、飛段と行動を共にしていないのか。
ーー時は今から数時間前に遡る。
……。
暁一同、定期的に集まり話などをする日が設けられていて、今日がその日だった。
「ーーーー次の集まりはーー日後。
それまで各々の役割を全うしろ」
暁のリーダー、ペインのその言葉が解散の合図。
各々が各々散って行く。
角都、飛段、そして○○、この三人も例に漏れず、アジトを出ようとしていた。
「まーたオレらは金策か……たまにはパーっと暴れたいもんだぜ」
「……任務内容に関わらずお前は暴れてるだろうが」
「あんなんじゃ足りねーっての。
なぁ、○○?」
「え、」
「○○に同意を求めるな。
……とっとと行くぞ」
(で、実際どうなんだよ○○)
(えぇ、うーん……)
「飛段」
「げっ地獄耳かよお前!!」
この三人にとっては、比較的よくやるやり取りだった。
そこにこれといった問題も無く。
「○○。
……それからデイダラにサソリ」
そんな中。
いつもはメンバーが居なくなるまでその光景を眺めているだけの暁のリーダー、ペインが三人の名を呼び止めたのだ。
「?」
「……どうかしたのか。今から向かう任務に追加事項でもあるのか?」
「それならオイラたちを呼び止めたのも頷けるな。うん」
「待て。なら何故○○も呼んだ」
「…………。確かに」
「……。
察しがいいな。サソリ」
サソリのぶつけた疑問に、ペインは小さく頷き、 肯定の意を示す。
「その任務、デイダラ、サソリ、それから○○のスリーマンセルで行ってもらう」
そして、該当する三人を見やってそう言ったのだ。
「異論は無いな?」
「…………オレは特に無ェ」
「オイラも無いぜ、うん」
ペインのその問いに、二人は意義も無く、それに頷いてみせる。
そして、○○の方を見るペイン。二人と同じく反答を持っているようだ。
ペインは暁のリーダである。そのリーダーが決めたことならば否定をする理由も無い。
そう思った○○は、二人と同じく頷くことにした。
「私も無「あるに決まってんだろーが!」もごっ!?」
のだが、肯定しようとした途中で横にいた 飛段が噛み付くような勢いで、○○の口を塞いだのだ。
「○○はオレらと同じ任務だろーが!!」
そう言って叫ぶ飛段。クッソ強めに口を塞がれているため苦しくなる。
○○は飛段の腕をとんとん叩くが、感情が高ぶっているのが気付いていない。
「~~!~~ッ」
「なぁ角都!?」
「飛段、○○の口から手を離せ」
「うおッ」
「っあ゙ぁ゙、と、とびかけた…………」
意識がぼやける寸出のところで、角都が飛段の手を引き剥がす。
「行くも行かまいも○○の勝手だろうが。オレたちがとやかく言う事ではない」
足りない酸素を取り込んでいく○○。その後ろでそう言う角都に不服そうではあるものの、飛段は静かになった。
「で、どうなんだよ○○」
そして、○○を見るのだ。
○○はリーダーに異論はさっきも言った通り無い 。
……無い、のだが。如何せん○○は少しばかり飛段に甘い節があり、頭の中でそれがせめぎ合っていた。
ふと、視界のすみに尾の先をこちらに向けなにかを伝えようとしているサソリの姿が。サソリは待たされることが何よりも嫌いであることを思い出した○○は、若干焦りながらも言葉を考え巡らせる。
(どーしよ……)
唸る○○。
見かねたペインが口を開く。
「この任務は○○、お前が居て初めて成立するものだ」
「…………私が?」
「ああ。«お前が必要»な任務だ」
。
そして現在に至る。
(も、元々行く気だったし……)
デイダラ、サソリの二人と別れ上空から飛び下りた○○は、自身にそう言い聞かせていた。
ペインにああ言われた直後、ものすごく嬉しそうに行ってきます!と高らかに角都と飛段へ告げる○○は二人から呆れた目で見られ、それを見ていたデイダラとサソリは茶番っぷりにため息をついた。
そんなこんなで民家からやや離れた場所に着地した○○。衣の砂埃を払い乱れた髪を整えながら、ゆっくりと立ち上がった。
後ろ髪を縛り直し、息を吐き出す。
(……)
……。
約数分前。
三方に分かれることを決め一足先にサソリが飛び降りていく。
「○○」
「?」
「行く前に良いか?」
間もなく、○○が飛び降りようと足を伸ばしていた時、デイダラはおもむろにそう話しかけたのだ。
不思議そうにする○○の横髪が、風にあわせてゆらゆら揺れる。
「その、なんだ。なるべくオイラも早く終わらせるようにするからよ、お前もあんま無茶すんじゃねぇぞ、うん」
デイダラはそう言いながら、ごほんと咳払いをしてみせる。
「ありがとう。デイダラの手を煩わせないように気をつけるよ」
そんなデイダラの言葉に、○○はそう笑って返してみせた。
○○の加入している暁という組織は生半可な心や実力ではやっていけない。○○もそれは十二分に理解しているし、相応しい実力も兼ね備えている。
ただ、それでも他のメンバーに比べると自分はまだまだ未熟だと思っているのである。
だからこそ、○○はデイダラの気遣いが素直に、純粋に嬉しかった。
「っ別に、オイラは、そういう意図で、」
しかし○○とは対照的に、眉をひそませ手を伸ばすデイダラ。
「?
ともかく私は降りるよ。じゃあまた後で!」
そんなデイダラをよそに、ぴょんと軽快に飛び降りていった○○。伸ばした手は届かず宙を舞う。
重力に従い舞う○○の髪が、視界の隅にほんの一瞬映り込む。
「オイ○○!ーー……ハァ、」
最後に残ったデイダラは一人、もどかしさに後ろ髪をかいた。
……当然、あの言葉は○○を哀れんでのものではなかったのだが、それがきちんと伝わることはなかった。それはきっと、相互理解が乏しかったからであり、どちらが悪いとも言えないだろう。
それでも強いて言うなら、○○の察しの悪さ、だろうか。
。
とある小国の上空。
「喝!!」
デイダラの掛け声とともに、下方から爆発音が響く。
「どうだ○○!オイラの芸術は」
「久しぶりに見たけど、相変わらずすごいね」
誇らしげに胸を張るデイダラに、○○は惜しみなく賞賛を贈る。
こうやって○○のように純粋に褒めてくる状況に慣れていないのだろうか。デイダラは瞳を輝かせ「当然」と呟いた。その顔だけを見るなら年相応の青年に見えたとか。
「○○、あんまり甘やかすな。
それからデイダラ、今回の任務はあくまで制圧だ。忘れんじゃねぇぞ」
「抵抗する意思のないやつは放置。殺すのは上役、その周囲の人間。
……わかってるよサソリの旦那。うん」
傀儡であるヒルコの中へ身を潜めるサソリは、長い尾をゆらゆらとデイダラに突きつけ、そう窘めた。本体とは違った低く唸るよう声は横にいる○○の耳にもしっかり通り抜けていく。
「……まぁいい。とにかく、小国と言えどこの国はちと広い。
こっからは三方に別れて制圧していく」
「ちょっと待ってくれよ旦那。少々広がろうとオイラにかかれば大したことないぜ。うん」
「お前一人に任せちまうとやらなくていい場所まで爆破しちまうだろうが!
余分な修繕費がかかると角都がうるせぇし、なにより任務後には後始末もしなきゃならねぇ……。そのしわ寄せを味わうオレらの身にもなりやがれ」
さっきよりも強めに、サソリの尾がデイダラへと向けられた。
五本の指に収まる数にすらならないくらいに二人と任務に行った経験がない○○は、これがこの二人のいつものやり取りなのだろうか。
……などと思いながら、あの二人を思い浮かべたとか。
さて。
なぜ○○がデイダラ、サソリと一緒の任務をやっているのか。
なぜ角都、飛段と行動を共にしていないのか。
ーー時は今から数時間前に遡る。
……。
暁一同、定期的に集まり話などをする日が設けられていて、今日がその日だった。
「ーーーー次の集まりはーー日後。
それまで各々の役割を全うしろ」
暁のリーダー、ペインのその言葉が解散の合図。
各々が各々散って行く。
角都、飛段、そして○○、この三人も例に漏れず、アジトを出ようとしていた。
「まーたオレらは金策か……たまにはパーっと暴れたいもんだぜ」
「……任務内容に関わらずお前は暴れてるだろうが」
「あんなんじゃ足りねーっての。
なぁ、○○?」
「え、」
「○○に同意を求めるな。
……とっとと行くぞ」
(で、実際どうなんだよ○○)
(えぇ、うーん……)
「飛段」
「げっ地獄耳かよお前!!」
この三人にとっては、比較的よくやるやり取りだった。
そこにこれといった問題も無く。
「○○。
……それからデイダラにサソリ」
そんな中。
いつもはメンバーが居なくなるまでその光景を眺めているだけの暁のリーダー、ペインが三人の名を呼び止めたのだ。
「?」
「……どうかしたのか。今から向かう任務に追加事項でもあるのか?」
「それならオイラたちを呼び止めたのも頷けるな。うん」
「待て。なら何故○○も呼んだ」
「…………。確かに」
「……。
察しがいいな。サソリ」
サソリのぶつけた疑問に、ペインは小さく頷き、 肯定の意を示す。
「その任務、デイダラ、サソリ、それから○○のスリーマンセルで行ってもらう」
そして、該当する三人を見やってそう言ったのだ。
「異論は無いな?」
「…………オレは特に無ェ」
「オイラも無いぜ、うん」
ペインのその問いに、二人は意義も無く、それに頷いてみせる。
そして、○○の方を見るペイン。二人と同じく反答を持っているようだ。
ペインは暁のリーダである。そのリーダーが決めたことならば否定をする理由も無い。
そう思った○○は、二人と同じく頷くことにした。
「私も無「あるに決まってんだろーが!」もごっ!?」
のだが、肯定しようとした途中で横にいた 飛段が噛み付くような勢いで、○○の口を塞いだのだ。
「○○はオレらと同じ任務だろーが!!」
そう言って叫ぶ飛段。クッソ強めに口を塞がれているため苦しくなる。
○○は飛段の腕をとんとん叩くが、感情が高ぶっているのが気付いていない。
「~~!~~ッ」
「なぁ角都!?」
「飛段、○○の口から手を離せ」
「うおッ」
「っあ゙ぁ゙、と、とびかけた…………」
意識がぼやける寸出のところで、角都が飛段の手を引き剥がす。
「行くも行かまいも○○の勝手だろうが。オレたちがとやかく言う事ではない」
足りない酸素を取り込んでいく○○。その後ろでそう言う角都に不服そうではあるものの、飛段は静かになった。
「で、どうなんだよ○○」
そして、○○を見るのだ。
○○はリーダーに異論はさっきも言った通り無い 。
……無い、のだが。如何せん○○は少しばかり飛段に甘い節があり、頭の中でそれがせめぎ合っていた。
ふと、視界のすみに尾の先をこちらに向けなにかを伝えようとしているサソリの姿が。サソリは待たされることが何よりも嫌いであることを思い出した○○は、若干焦りながらも言葉を考え巡らせる。
(どーしよ……)
唸る○○。
見かねたペインが口を開く。
「この任務は○○、お前が居て初めて成立するものだ」
「…………私が?」
「ああ。«お前が必要»な任務だ」
。
そして現在に至る。
(も、元々行く気だったし……)
デイダラ、サソリの二人と別れ上空から飛び下りた○○は、自身にそう言い聞かせていた。
ペインにああ言われた直後、ものすごく嬉しそうに行ってきます!と高らかに角都と飛段へ告げる○○は二人から呆れた目で見られ、それを見ていたデイダラとサソリは茶番っぷりにため息をついた。
そんなこんなで民家からやや離れた場所に着地した○○。衣の砂埃を払い乱れた髪を整えながら、ゆっくりと立ち上がった。
後ろ髪を縛り直し、息を吐き出す。
(……)
……。
約数分前。
三方に分かれることを決め一足先にサソリが飛び降りていく。
「○○」
「?」
「行く前に良いか?」
間もなく、○○が飛び降りようと足を伸ばしていた時、デイダラはおもむろにそう話しかけたのだ。
不思議そうにする○○の横髪が、風にあわせてゆらゆら揺れる。
「その、なんだ。なるべくオイラも早く終わらせるようにするからよ、お前もあんま無茶すんじゃねぇぞ、うん」
デイダラはそう言いながら、ごほんと咳払いをしてみせる。
「ありがとう。デイダラの手を煩わせないように気をつけるよ」
そんなデイダラの言葉に、○○はそう笑って返してみせた。
○○の加入している暁という組織は生半可な心や実力ではやっていけない。○○もそれは十二分に理解しているし、相応しい実力も兼ね備えている。
ただ、それでも他のメンバーに比べると自分はまだまだ未熟だと思っているのである。
だからこそ、○○はデイダラの気遣いが素直に、純粋に嬉しかった。
「っ別に、オイラは、そういう意図で、」
しかし○○とは対照的に、眉をひそませ手を伸ばすデイダラ。
「?
ともかく私は降りるよ。じゃあまた後で!」
そんなデイダラをよそに、ぴょんと軽快に飛び降りていった○○。伸ばした手は届かず宙を舞う。
重力に従い舞う○○の髪が、視界の隅にほんの一瞬映り込む。
「オイ○○!ーー……ハァ、」
最後に残ったデイダラは一人、もどかしさに後ろ髪をかいた。
……当然、あの言葉は○○を哀れんでのものではなかったのだが、それがきちんと伝わることはなかった。それはきっと、相互理解が乏しかったからであり、どちらが悪いとも言えないだろう。
それでも強いて言うなら、○○の察しの悪さ、だろうか。
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