君は死なず、されど
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「ふわあ゛ぁ゛……………」
森の中。
定期的にある集会のためにアジトに向かう中、○○は木々を飛んで移動していた。
大口を開き大きなあくびをしながら、目尻には涙がじんわりと浮かんでいる上、目を引くようなくまがあったのだが。それが指し示すように、○○は約三日と数時間不眠なのだ。
そして、○○の両側にはいつものようにいるはずの連れである角都、飛段の姿が見られない。
単独行動には違いないのだが、決して好き好んでしているわけでは無い。
時は、今から数時間ほど前に遡る。
……。
いつもの如く金策のためそれなりに高額の賞金首を始末していた。
とうに事切れたそれを、角都が担いでいる。
「よいしょ、っと」
ただ、今回に至っては普段とは違い、もうひとりぶんの賞金首を始末しており、その死体を○○が持って歩いていた。
「今回の集会は遠隔じゃなくて直接集まるんだっけ?じゃあ換金してそのままアジトに行こうか」
「そうだな」
死後硬直が始まっておらずまだあたたかい死体を持ち直しつつそれを二人に伝える。そんな○○を横目に、角都は一言だけ返した。
○○の言葉通り、今回はアジトに直接赴く集会だ。今回ばかりはそれが億劫に感じてしまったが、そうも言ってはられないだろう。○○は自身に言い聞かせながら、死体を持たない方の手で前髪をかき分けた。
「んだよタイミング悪ぃな……オレら寝ずに動きっぱなしだってのによ」
換金所に向かう森を歩きながら、飛段は心底だるそうに嘆いた。
横に並ぶ○○が持つ死体をつつき、くぁ、とあくびを漏らす。
飛段の言った通り、不死トリオはおおよそ三日眠れないでいた。
……と、いうのも、ここ数日トラブルに見舞われたりしていた。今回の○○が持つ死体も、本来予定に無い賞金首なのだ。まぁ、これに関しては結果オーライとも言えなくもないのだが。
ともかく。ほとんど休めていない三人の疲れもピークに達していたため、飛段が文句をこぼすのも致し方ないのかもしれない。
「…………死体を持たない奴がグダグダ抜かすな。ブチ殺すぞ」
しかし、それを差し引いても殺戮以外に手を貸さない飛段が言ったものだからか。休めていないことと寝ていないことが相まって、それ対し角都は死ぬほど腹を立てた。
軽はずみな発言をした飛段を眉間にしわを寄せながら横目で睨む。ついでに殺気も漏れている。
だが当然、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに意に介さない飛段。
そんな二人に挟まれている○○は、空いた方の手で角都の外とうを引いた。
「まぁまぁ。今回の集まりが終わったら宿で休んで、美味しいものでも食べようよ」
にへ、といつもよりふにゃふにゃした笑みを浮かべている。その目の下にはくまが。
眠たげな○○の目尻を、角都の大きな指が撫で上げた。普段よりも幾ばくが優しいようにも思えたが、それが向けられるのは○○のみである。
「疲労より食欲が勝るなら問題無いな」
「角都さんと一緒に居るからね」
「…………そうか」
「うん。あとは換金してお金数えるだけだから、もう少しだよ飛段」
死体を持ち直しつつ、今度は反対側に居る飛段の方へ向いて笑う。
一方、それを聞いた飛段は両手を後ろ頭へやり、ぼんやりと空を見上げる。
背中の鎌が、森の木々からさし込む光を反射した。
「今回の宿ってよぉ、飯何出んだろな」
ぽつりと言う飛段。
「なんだろうね。私は美味しければなんでもいいけど」
「同感だな」
脳内に様々な料理を思い浮かべながら、喉を鳴らす○○。基本好き嫌いの無い○○は何を出されてもぺろりと平らげる。それに加えてよく食べるため、今からわくわくと胸をおどらせた。
角都も○○の言葉に同意した。彼自身も、大して好き嫌いは無いからだ。
「オレは野菜以外だな」
しかし、そんな二人とは異なり飛段は野菜全般を嫌っているためそうはいかない。
そう言って眉間にしわを寄せながら、手をひらひらと仰いだ。
「飛段。好き嫌いをするな」
「お前だって嫌いなもんくらいあんだろーが、角都」
「お前の場合は極端過ぎる。○○に食わせるのもいい加減辞めろ」
前々から思っていた言葉を、ため息と共に吐き出す。肉が健康に悪いなどとは思わないが、だからといって肉しか口にしないのもどうかと思った。
「……だからいつまでたっても馬鹿なんだよ」
そして、付け加えるようにぽつりと呟いたのだ。
「オイ、今なんつった角都」
「換金所はすぐそこだ。○○、そっちに問題は無いな?」
「あ、うん。大丈夫」
「ならいい」
「無視すんなやコラ!!」
…………など、なんやかんや言い合いをしながらも歩く三人の前に見えるのは、換金所の入口である。
こうして不死トリオは、目的地へ足を踏み入れていったのだ。
……。
そして。
角都が金を数え終わり、それがたんまり入ったいつもよりおおきなケース片手に、○○と飛段が待機している場合に向かった。
「角都さん、」
「…………」
しかし。
そこで角都を目にしたのは、
「気づいたら寝ちゃってて、起きなくてさ……」
申し訳なさそうに視線を下げる○○と、そんな○○の肩にずっしりもたれかかって爆睡している飛段の姿だった。
飛段がずり落ちないように体を支えながら、しゅんとする○○。
縮こまった○○の頭に角都の大きな手が載せられ、そのままわしゃわしゃと撫でられたのだ。
「悪いのはこの馬鹿だけだがまぁ、寝たものは仕方ない。
ーー○○。お前は先にアジトに向かえ」
「ふがっ」
「アジトに?」
「あぁ」
ぐいんと飛段を壁側へと押し付ける。今度は角都が○○の座っていた位置に腰を下ろし、深い息を吐き出した。
変わらず眠りこけている連れを横目に、再度疲労が溜まっているような息を吐き、指をさす。
「……不本意だが、オレも疲れた。飛段と一緒に一時間ほど仮眠をとってからアジトに行く」
そう告げ深く座り腕を組む連れを見て、付き合いのかなり長い○○も、こんなに疲れた姿を見るのは久方ぶりだった。
そんな姿をなんだか新鮮な気持ちで見る○○。眠気のままに角都の顔へ手を伸ばして、布越しに頬をむにむにした。こんな行為、○○でなければまず許されないだろう。そもそも普段から二人はそのようなスキンシップを頻繁に行わないため、この光景は珍しいと言える。
「……いや。やはり一緒に寝るか?」
「えー。大丈夫大丈夫」
「…………」
大丈夫ではないだろう。と思う角都だったが、万が一に備えひとりはアジトに行かせておきたい。どう足掻いてもそのひとりが消去法で○○になってしまうのだ。
角都は苦虫を噛み潰したような表情をし、何度目かわからないため息を吐いた。
「ならアジトにオレと飛段が着くまで寝るのは我慢しろ。いいな」
されるがままになりながらも、○○の目を見てそう伝える。
そんな角都と視線を重ね、○○はその言葉に笑って答えるのだった。
。
森の中。
定期的にある集会のためにアジトに向かう中、○○は木々を飛んで移動していた。
大口を開き大きなあくびをしながら、目尻には涙がじんわりと浮かんでいる上、目を引くようなくまがあったのだが。それが指し示すように、○○は約三日と数時間不眠なのだ。
そして、○○の両側にはいつものようにいるはずの連れである角都、飛段の姿が見られない。
単独行動には違いないのだが、決して好き好んでしているわけでは無い。
時は、今から数時間ほど前に遡る。
……。
いつもの如く金策のためそれなりに高額の賞金首を始末していた。
とうに事切れたそれを、角都が担いでいる。
「よいしょ、っと」
ただ、今回に至っては普段とは違い、もうひとりぶんの賞金首を始末しており、その死体を○○が持って歩いていた。
「今回の集会は遠隔じゃなくて直接集まるんだっけ?じゃあ換金してそのままアジトに行こうか」
「そうだな」
死後硬直が始まっておらずまだあたたかい死体を持ち直しつつそれを二人に伝える。そんな○○を横目に、角都は一言だけ返した。
○○の言葉通り、今回はアジトに直接赴く集会だ。今回ばかりはそれが億劫に感じてしまったが、そうも言ってはられないだろう。○○は自身に言い聞かせながら、死体を持たない方の手で前髪をかき分けた。
「んだよタイミング悪ぃな……オレら寝ずに動きっぱなしだってのによ」
換金所に向かう森を歩きながら、飛段は心底だるそうに嘆いた。
横に並ぶ○○が持つ死体をつつき、くぁ、とあくびを漏らす。
飛段の言った通り、不死トリオはおおよそ三日眠れないでいた。
……と、いうのも、ここ数日トラブルに見舞われたりしていた。今回の○○が持つ死体も、本来予定に無い賞金首なのだ。まぁ、これに関しては結果オーライとも言えなくもないのだが。
ともかく。ほとんど休めていない三人の疲れもピークに達していたため、飛段が文句をこぼすのも致し方ないのかもしれない。
「…………死体を持たない奴がグダグダ抜かすな。ブチ殺すぞ」
しかし、それを差し引いても殺戮以外に手を貸さない飛段が言ったものだからか。休めていないことと寝ていないことが相まって、それ対し角都は死ぬほど腹を立てた。
軽はずみな発言をした飛段を眉間にしわを寄せながら横目で睨む。ついでに殺気も漏れている。
だが当然、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに意に介さない飛段。
そんな二人に挟まれている○○は、空いた方の手で角都の外とうを引いた。
「まぁまぁ。今回の集まりが終わったら宿で休んで、美味しいものでも食べようよ」
にへ、といつもよりふにゃふにゃした笑みを浮かべている。その目の下にはくまが。
眠たげな○○の目尻を、角都の大きな指が撫で上げた。普段よりも幾ばくが優しいようにも思えたが、それが向けられるのは○○のみである。
「疲労より食欲が勝るなら問題無いな」
「角都さんと一緒に居るからね」
「…………そうか」
「うん。あとは換金してお金数えるだけだから、もう少しだよ飛段」
死体を持ち直しつつ、今度は反対側に居る飛段の方へ向いて笑う。
一方、それを聞いた飛段は両手を後ろ頭へやり、ぼんやりと空を見上げる。
背中の鎌が、森の木々からさし込む光を反射した。
「今回の宿ってよぉ、飯何出んだろな」
ぽつりと言う飛段。
「なんだろうね。私は美味しければなんでもいいけど」
「同感だな」
脳内に様々な料理を思い浮かべながら、喉を鳴らす○○。基本好き嫌いの無い○○は何を出されてもぺろりと平らげる。それに加えてよく食べるため、今からわくわくと胸をおどらせた。
角都も○○の言葉に同意した。彼自身も、大して好き嫌いは無いからだ。
「オレは野菜以外だな」
しかし、そんな二人とは異なり飛段は野菜全般を嫌っているためそうはいかない。
そう言って眉間にしわを寄せながら、手をひらひらと仰いだ。
「飛段。好き嫌いをするな」
「お前だって嫌いなもんくらいあんだろーが、角都」
「お前の場合は極端過ぎる。○○に食わせるのもいい加減辞めろ」
前々から思っていた言葉を、ため息と共に吐き出す。肉が健康に悪いなどとは思わないが、だからといって肉しか口にしないのもどうかと思った。
「……だからいつまでたっても馬鹿なんだよ」
そして、付け加えるようにぽつりと呟いたのだ。
「オイ、今なんつった角都」
「換金所はすぐそこだ。○○、そっちに問題は無いな?」
「あ、うん。大丈夫」
「ならいい」
「無視すんなやコラ!!」
…………など、なんやかんや言い合いをしながらも歩く三人の前に見えるのは、換金所の入口である。
こうして不死トリオは、目的地へ足を踏み入れていったのだ。
……。
そして。
角都が金を数え終わり、それがたんまり入ったいつもよりおおきなケース片手に、○○と飛段が待機している場合に向かった。
「角都さん、」
「…………」
しかし。
そこで角都を目にしたのは、
「気づいたら寝ちゃってて、起きなくてさ……」
申し訳なさそうに視線を下げる○○と、そんな○○の肩にずっしりもたれかかって爆睡している飛段の姿だった。
飛段がずり落ちないように体を支えながら、しゅんとする○○。
縮こまった○○の頭に角都の大きな手が載せられ、そのままわしゃわしゃと撫でられたのだ。
「悪いのはこの馬鹿だけだがまぁ、寝たものは仕方ない。
ーー○○。お前は先にアジトに向かえ」
「ふがっ」
「アジトに?」
「あぁ」
ぐいんと飛段を壁側へと押し付ける。今度は角都が○○の座っていた位置に腰を下ろし、深い息を吐き出した。
変わらず眠りこけている連れを横目に、再度疲労が溜まっているような息を吐き、指をさす。
「……不本意だが、オレも疲れた。飛段と一緒に一時間ほど仮眠をとってからアジトに行く」
そう告げ深く座り腕を組む連れを見て、付き合いのかなり長い○○も、こんなに疲れた姿を見るのは久方ぶりだった。
そんな姿をなんだか新鮮な気持ちで見る○○。眠気のままに角都の顔へ手を伸ばして、布越しに頬をむにむにした。こんな行為、○○でなければまず許されないだろう。そもそも普段から二人はそのようなスキンシップを頻繁に行わないため、この光景は珍しいと言える。
「……いや。やはり一緒に寝るか?」
「えー。大丈夫大丈夫」
「…………」
大丈夫ではないだろう。と思う角都だったが、万が一に備えひとりはアジトに行かせておきたい。どう足掻いてもそのひとりが消去法で○○になってしまうのだ。
角都は苦虫を噛み潰したような表情をし、何度目かわからないため息を吐いた。
「ならアジトにオレと飛段が着くまで寝るのは我慢しろ。いいな」
されるがままになりながらも、○○の目を見てそう伝える。
そんな角都と視線を重ね、○○はその言葉に笑って答えるのだった。
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