君は死なず、されど
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血しぶきが舞う。
布が切れ、中の肉と肉、本来繋がっている箇所が呆気なく切り離された。
離れた腕は行き場を失い、重力に従って落ちる。べちゃりと音がし血が飛び散る。
「この程度か?」
「…………、」
どくどく血が流れる右腕を抑え、落ちた腕から広がる血溜まりを見やり、数メートル先に飛び退いた今回のターゲットである賞金首の忍へ視線を移す。
右腕を斬られ黙る○○。
対する賞金首は余裕綽々、と言った具合に○○の腕を断ち切って赤く染まった刀を振る。血が飛び、地面に点々と飛び散った。
「暁と聞いていたから警戒していたが……所詮は烏合の衆、というわけか」
「!」
「現に後ろのお仲間は助けに入りすらしないじゃないか。それがなによりの証拠だろ」
くるりと刀を回転させた賞金首は、その刃先を数メートル後方に立つ角都と飛段に向け言う。顔は嘲笑のそれであり、心からの罵倒。
「…………」
「チッ」
それに角都が反応したのは一瞬。あとはただ、静かに○○の背中を見ていた。
飛段は舌打ちをしたものの、角都と同様、特別何か言うことも無かった。
賞金首はそれを肯定と捉えたのか、さらに笑い刀の峰でとん、と肩を叩く。
その姿は相当実力に自信を持っているような立ち振る舞いである。
「………………やめろ」
しかし。○○だけはそれに反応を示した。
唸るように声を出し、左手の手を強く握る。
「二人を悪く言うな」
○○の怒りを表すように体内のチャクラが激しく巡る。
「飛段。巻き込まれたくなければ少し下がれ」
「……。そーすっか」
今から起こることをいち早く感じ取った角都は、飛段に声をかける。流石の飛段も何かしらの予見はしているようで、大人しくそれに従った。
二人は地面を蹴り、問題無さそうな位置まで後退し、ことの結末を傍観する。
その一方。
一番近くにいる賞金首はただ怒っているだけにしか見えていないのか、馬鹿にしたような笑みを○○に向けた。
「反論する、ということは本当なんだろ?」
「…………」
○○は息を吸い血に濡れた右腕を拾い上げ、前を向く。そこにいつもの能天気な顔はどこにも無く、ただひたすら冷たい目をしていた。
「無能な人間同士、お似合いじゃねえか」
それは○○自身が弱いと揶揄されたからというわけでは決してない。
「いい加減口を閉じろ」
○○が賞金首に怒りを向けた理由は、大切な暁のメンバーを、連れの角都と飛段を馬鹿にしたからだ。
切り離された右腕を持ち振りかぶった○○は、それを賞金首目掛けて投げたのだ。
狙い通り飛んでいく右腕。
「反撃したつもりか?」
それをいとも簡単にキャッチしてみせる。
「そんなもので怯むとでもーーーー」
それが間違いだと知らずに。
「……さようなら」
○○が呟いた。
次の瞬間。
右腕が膨張したと思えば劈くような音と共に爆発し、半径数メートルの範囲がそれに巻き込まれ、暴風を生み出す。
数十秒後。静かになったそこには爆発の影響でえぐれた地面の上に、熱でところどころ焼け焦げ事切れた賞金首がひとり。特に右腕をキャッチした方の損傷が酷く、手首から先が吹き飛び骨がえぐれていた。
一方。○○は右腕以外に大した損傷は見られず、爆風で少し髪が乱れているだけで済んだ。その右腕も血は止まっており、既に傷の修復と再生が始まっていた。
「ーーーー、あっ」
我に返った○○。やっちまったと焦りながら賞金首の元に駆け寄る。
「…………(なんとか顔の形は残ってるか)」
幸いにもそれほど顔の損傷は酷くなく、なんとか賞金首だと判別は可能だった。
ホッとし、ゆっくり立ち上がる。
「ふぅ、っとと、」
「……顔の原形は残っているな」
「あ、角都さん」
安心し気が抜けてよろけた○○の体をすかさず受け止め、事切れた賞金首へ目を向ける。
体はところどころぐちゃぐちゃだったが、判断材料である顔はなんとか問題も無く一安心。○○をきちっと立たせ、やや焦げ臭い目当ての死体を持ち上げた。
「とりあえず換金だけ済ませ○○の右腕の再生を待つ。リーダーに金を渡すのはその後だ」
「お、じゃあ二、三日はだらだら出来るってわけか」
「そうだな」
三人並んで歩き出す不死トリオ。どちらによろけてもいいように、○○は真ん中を歩く。
「面目ない……」
「どこぞの誰かみたいにタラタラとおかしな儀式で戦闘が長引かないだけ全然いい」
「おい角都、そりゃ誰のこと言ってやがる」
「自覚があるなら治す努力をしろ」
「うるせェ」
「まぁまぁ」
そんなやり取りをしながら、不死トリオは換金所へ向かうのだった。
。
数時間後。
換金を終えた不死トリオは知る人ぞ知る、訳ありの人間のみ泊まることを許されるという宿へ。その宿は三人にはうってつけで、現に過去にも何度か泊まったことがある。
本来は別の宿の予定だったが、右腕を損傷した○○を考慮したための結果だ。
宿屋の管理人に大部屋へと案内された不死トリオ。いつもであれば個室を頼むのだが、状況が状況であるため三人で寝られる部屋を頼んだのだ。
「ごゆっくりどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
ひと足先に入っていく二人を横目に、管理人へ丁寧にお辞儀をして、○○は部屋に入り襖をゆっくりと閉めた。
「あぁ……疲れた」
ふらふらと足取り重く、備え付けの座布団に腰を下ろす。乱れた前髪を整え息を吐く。
先の戦いでチャクラをだいぶ消費した○○。しんどそうに首を鳴らした。
「少し休んで風呂に入るか」
それを見たからか、角都が立ち上がってそう言うと、○○の身につけている破けていたり血が付いていたり焼け焦げていたりと、とにかくボロボロの外とうのボタンに手をかける。
「うん……あれ、私の外とうって替えあったっけ……」
くてんと首を傾げつつも、大人しくボタンを外され外とうを回収。
器用に畳まれていく自身のそれを眺めていると、それを横に置いた角都はおもむろに懐を探ると、中から黒いものを取り出した。
「替えならある。問題ない」
「あっ、ほんとだ。よかった」
「腕が完全に治り次第渡す」
「わかった」
替えがあることに一安心し胸を撫で下ろす。
丁寧に畳まれた外とうのその横に、新しい外とうが置かれた。
○○の体質上よく駄目にしてしまうが、それでもこの黒衣は自身を暁であると位置づける大切なもの。と同時に、○○と角都の繋がりをより濃くするものだたと、そう○○自身は考えている。
「つーかよォ」
そんな二人のやり取りを黙って見ていた飛段。
だったが、身につけているワイヤーを取り外し、それに繋がる鎌を隅に立てかける。
「なんで角都が○○の替え持ってんだよ」
そして○○を抱き寄せながら、訝しげにそう問う。
飛段の疑問ももっともだろう。角都のやることには基本的に寛容する○○はともかく、飛段はその限りではない。そもそも普通ならまずそこに疑問を抱くはずなのだが……。
その問いを聞き、腕を組む角都。
「……。○○の体質上替えは絶対必要だからな。常に一着は持ち歩いている」
「へぇ、そうなんだ」
「あぁ」
「……もういいわ。めんどくせェ」
これ以上追求するのも面倒に感じたのか、そう吐き捨ててみせる。態度から察するに、初めから大して気にはしていなかったのだろう。
「お、再生してんな」
そして飛段は、少しずつ再生している右腕の断面の肉に指を差し込む。妙な感覚だ。
もっとも、普段は触れられる部位では無いためそうなるのも無理はないのか。
当然だが誰かにそうされたことが極端に少ない○○。くすぐったそうに身をよじり口をへの字に曲げる。
「……飛段。あまり弄るな再生が遅れる」
そんな和気あいあいとした雰囲気の中、時間はゆっくり、穏やかに流れていった。
。
布が切れ、中の肉と肉、本来繋がっている箇所が呆気なく切り離された。
離れた腕は行き場を失い、重力に従って落ちる。べちゃりと音がし血が飛び散る。
「この程度か?」
「…………、」
どくどく血が流れる右腕を抑え、落ちた腕から広がる血溜まりを見やり、数メートル先に飛び退いた今回のターゲットである賞金首の忍へ視線を移す。
右腕を斬られ黙る○○。
対する賞金首は余裕綽々、と言った具合に○○の腕を断ち切って赤く染まった刀を振る。血が飛び、地面に点々と飛び散った。
「暁と聞いていたから警戒していたが……所詮は烏合の衆、というわけか」
「!」
「現に後ろのお仲間は助けに入りすらしないじゃないか。それがなによりの証拠だろ」
くるりと刀を回転させた賞金首は、その刃先を数メートル後方に立つ角都と飛段に向け言う。顔は嘲笑のそれであり、心からの罵倒。
「…………」
「チッ」
それに角都が反応したのは一瞬。あとはただ、静かに○○の背中を見ていた。
飛段は舌打ちをしたものの、角都と同様、特別何か言うことも無かった。
賞金首はそれを肯定と捉えたのか、さらに笑い刀の峰でとん、と肩を叩く。
その姿は相当実力に自信を持っているような立ち振る舞いである。
「………………やめろ」
しかし。○○だけはそれに反応を示した。
唸るように声を出し、左手の手を強く握る。
「二人を悪く言うな」
○○の怒りを表すように体内のチャクラが激しく巡る。
「飛段。巻き込まれたくなければ少し下がれ」
「……。そーすっか」
今から起こることをいち早く感じ取った角都は、飛段に声をかける。流石の飛段も何かしらの予見はしているようで、大人しくそれに従った。
二人は地面を蹴り、問題無さそうな位置まで後退し、ことの結末を傍観する。
その一方。
一番近くにいる賞金首はただ怒っているだけにしか見えていないのか、馬鹿にしたような笑みを○○に向けた。
「反論する、ということは本当なんだろ?」
「…………」
○○は息を吸い血に濡れた右腕を拾い上げ、前を向く。そこにいつもの能天気な顔はどこにも無く、ただひたすら冷たい目をしていた。
「無能な人間同士、お似合いじゃねえか」
それは○○自身が弱いと揶揄されたからというわけでは決してない。
「いい加減口を閉じろ」
○○が賞金首に怒りを向けた理由は、大切な暁のメンバーを、連れの角都と飛段を馬鹿にしたからだ。
切り離された右腕を持ち振りかぶった○○は、それを賞金首目掛けて投げたのだ。
狙い通り飛んでいく右腕。
「反撃したつもりか?」
それをいとも簡単にキャッチしてみせる。
「そんなもので怯むとでもーーーー」
それが間違いだと知らずに。
「……さようなら」
○○が呟いた。
次の瞬間。
右腕が膨張したと思えば劈くような音と共に爆発し、半径数メートルの範囲がそれに巻き込まれ、暴風を生み出す。
数十秒後。静かになったそこには爆発の影響でえぐれた地面の上に、熱でところどころ焼け焦げ事切れた賞金首がひとり。特に右腕をキャッチした方の損傷が酷く、手首から先が吹き飛び骨がえぐれていた。
一方。○○は右腕以外に大した損傷は見られず、爆風で少し髪が乱れているだけで済んだ。その右腕も血は止まっており、既に傷の修復と再生が始まっていた。
「ーーーー、あっ」
我に返った○○。やっちまったと焦りながら賞金首の元に駆け寄る。
「…………(なんとか顔の形は残ってるか)」
幸いにもそれほど顔の損傷は酷くなく、なんとか賞金首だと判別は可能だった。
ホッとし、ゆっくり立ち上がる。
「ふぅ、っとと、」
「……顔の原形は残っているな」
「あ、角都さん」
安心し気が抜けてよろけた○○の体をすかさず受け止め、事切れた賞金首へ目を向ける。
体はところどころぐちゃぐちゃだったが、判断材料である顔はなんとか問題も無く一安心。○○をきちっと立たせ、やや焦げ臭い目当ての死体を持ち上げた。
「とりあえず換金だけ済ませ○○の右腕の再生を待つ。リーダーに金を渡すのはその後だ」
「お、じゃあ二、三日はだらだら出来るってわけか」
「そうだな」
三人並んで歩き出す不死トリオ。どちらによろけてもいいように、○○は真ん中を歩く。
「面目ない……」
「どこぞの誰かみたいにタラタラとおかしな儀式で戦闘が長引かないだけ全然いい」
「おい角都、そりゃ誰のこと言ってやがる」
「自覚があるなら治す努力をしろ」
「うるせェ」
「まぁまぁ」
そんなやり取りをしながら、不死トリオは換金所へ向かうのだった。
。
数時間後。
換金を終えた不死トリオは知る人ぞ知る、訳ありの人間のみ泊まることを許されるという宿へ。その宿は三人にはうってつけで、現に過去にも何度か泊まったことがある。
本来は別の宿の予定だったが、右腕を損傷した○○を考慮したための結果だ。
宿屋の管理人に大部屋へと案内された不死トリオ。いつもであれば個室を頼むのだが、状況が状況であるため三人で寝られる部屋を頼んだのだ。
「ごゆっくりどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
ひと足先に入っていく二人を横目に、管理人へ丁寧にお辞儀をして、○○は部屋に入り襖をゆっくりと閉めた。
「あぁ……疲れた」
ふらふらと足取り重く、備え付けの座布団に腰を下ろす。乱れた前髪を整え息を吐く。
先の戦いでチャクラをだいぶ消費した○○。しんどそうに首を鳴らした。
「少し休んで風呂に入るか」
それを見たからか、角都が立ち上がってそう言うと、○○の身につけている破けていたり血が付いていたり焼け焦げていたりと、とにかくボロボロの外とうのボタンに手をかける。
「うん……あれ、私の外とうって替えあったっけ……」
くてんと首を傾げつつも、大人しくボタンを外され外とうを回収。
器用に畳まれていく自身のそれを眺めていると、それを横に置いた角都はおもむろに懐を探ると、中から黒いものを取り出した。
「替えならある。問題ない」
「あっ、ほんとだ。よかった」
「腕が完全に治り次第渡す」
「わかった」
替えがあることに一安心し胸を撫で下ろす。
丁寧に畳まれた外とうのその横に、新しい外とうが置かれた。
○○の体質上よく駄目にしてしまうが、それでもこの黒衣は自身を暁であると位置づける大切なもの。と同時に、○○と角都の繋がりをより濃くするものだたと、そう○○自身は考えている。
「つーかよォ」
そんな二人のやり取りを黙って見ていた飛段。
だったが、身につけているワイヤーを取り外し、それに繋がる鎌を隅に立てかける。
「なんで角都が○○の替え持ってんだよ」
そして○○を抱き寄せながら、訝しげにそう問う。
飛段の疑問ももっともだろう。角都のやることには基本的に寛容する○○はともかく、飛段はその限りではない。そもそも普通ならまずそこに疑問を抱くはずなのだが……。
その問いを聞き、腕を組む角都。
「……。○○の体質上替えは絶対必要だからな。常に一着は持ち歩いている」
「へぇ、そうなんだ」
「あぁ」
「……もういいわ。めんどくせェ」
これ以上追求するのも面倒に感じたのか、そう吐き捨ててみせる。態度から察するに、初めから大して気にはしていなかったのだろう。
「お、再生してんな」
そして飛段は、少しずつ再生している右腕の断面の肉に指を差し込む。妙な感覚だ。
もっとも、普段は触れられる部位では無いためそうなるのも無理はないのか。
当然だが誰かにそうされたことが極端に少ない○○。くすぐったそうに身をよじり口をへの字に曲げる。
「……飛段。あまり弄るな再生が遅れる」
そんな和気あいあいとした雰囲気の中、時間はゆっくり、穏やかに流れていった。
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