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君は死なず、されど

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○○

某日。

不死トリオはお約束と言わんばかりに恒例の金策の任務へ来ている。
今回の目的である賞金首を見つけ、ひっそり後をつけていきながら、なにやらひそひそと話し合いをしている様子。

すると、その中の一人である飛段が、背中で光る鎌の持ち手に手をかけた。

○○、角都。
今回はオレがやる。手を出すんじゃねぇぞ!」

二人の前にゆるりと前に出た飛段は、くるりと回転させた鎌を手に収め、得意げにそう言った。

ちなみに前回の任務では○○、前々回は角都が賞金首を殺っている。

今さらだが、飛段は角都、○○に並ぶ«不死»と呼ばれる者だ。
その中でも飛段の体はある«儀式»、端的に言えば禁術とされるものにより不死の力を得ている。
そして、その力をもってして«ジャシン様»と呼ばれる神に対象の者を殺害し贄として捧げることを、己の使命とする。飛段はジャシン教の狂信者なのだ。

……つまるところ、今回の賞金首を贄にしてしまおう、ということである。

「…………勝手にしろ。ただしやり過ぎるな、誰かはわかるように殺せ」
「待ってるね」

ため息を吐き出しそう言う角都。それからその横で頷き手をひらひらさせる○○
反応こそ違えど、両者ともに納得し行動を飛段に委ねる。

「っし。その前に祈りを捧げねぇとな」

鎌を片手に、もう片方には首にさげた教徒の証を口元へやり、儀式を行うための祈りを捧げる。

一方。
飛段の戦いを眺めるべく、後方の木の幹に背中を預ける角都。○○はその横の切り株へと腰を下ろした。
数十秒間。黙って見ていたが、飛段は一向に動きを見せない。

「…………」
「おい飛段」
「あ?」
「とっとと済ませろ」

そんな光景を見かねた角都が、ややイラついた様子で声をかけた。組まれた腕から覗く人差し指が、とんとんと規則的に動く。

「っるせぇな。戒律通りにやってんだよオレは」

それに反論するように、ため息を吐き出しながら、後ろを見やる飛段。飛段曰く、面倒ではあるものの戒律を破るわけにはいかないため、毎回毎回、こうやって時間をかけて神に祈っている。

……まぁ当然、角都にとって宗教の戒律など死ぬほどどうでもいいため、早くしろと急かすのだ。
○○○○で長引くことを前提に、気を長く持つようにしている。それでもあまりにも長くなる時は寝落ちしてしまうため、その時は角都の胸を借りるようにしていた。

「…………なめやがって!!」

相対する賞金首の忍はしびれを切らしたのか、依然祈りを捧げる飛段に向かって走る。懐から取り出したクナイを振りかざし、まっすぐ投げる。

飛段の目の前に刃が迫る。
瞬間。

「!」

足を止める賞金首。
キン、と金属同士がぶつかり合う小気味のいい音が響き、クナイは地面へ落ちた。

「祈りは済んだ」

大柄な鎌の刃先を突き出すと、飛段の口が弧を描く。今度は自分の番だと言わんばかりに地面を力強く蹴る。
それを、獲物目掛けて振りかざす。

ーー今まさに、火蓋は切って落とされた。

……。

「ーーーー○○、起きろ、○○
「んえ、……」

どれだけの時間が経ったのかはわからない。
しかし案の定、と言うべきだろうか。いつの間にか眠ってしまっていた○○は、角都の腕の中で目を覚ました。

「…………ねてた?」
「ぐっすりな」
「そう……………」
「まだ眠いか?」
「……。たぶん」

しぱしぱとさせ目を擦る。瞼が開ききっていない。頬を軽く叩くも反応が薄かった。
それでも一応○○を立たせてみたものの、歩けそうにないなと判断。というのも、○○はぶっ倒れて眠ったことがあるからだ。
それならばハナっから抱えて歩いた方が楽だという、角都の実体験である。

「ならオレが抱える。起きたら教えろ、○○

軽々と○○を抱き上げる。返事が返ってこず、かわりに寝息が聴こえてくる。

「…………すぅ、」
「……、いつまでたってもガキだな。お前は」

言葉とは裏腹に、囁くように発せられた声色はどこまで行っても優しく、○○を見下ろす瞳はたった一人、○○だけに向けられるものなのだ。

角都はこうして○○を抱く。
一方。もう一人の連れである飛段の、無駄に長く且つ心底つまらない儀式を別に眺めるわけでも無し。懐に入れてあるビンゴブックを片手に、時間潰しと情報収集を兼ね眺めるのだった。

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