序章〜子供時代編
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「この子の初めてのポケモンはどの子になるかなあ」
「もうアナタったら気が早すぎるわよ」
「そんなことないだろう。なあかくかく」
誰?
ぼんやりと浮き沈みする意識の中で、確かに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
聞き馴染みがあるような、ないような朦朧としたフワフワした感覚。
遠くからカモメのような暢気な鳥の鳴き声が聞こえる。
(ここは…病院?)
私は助かったのだろうか。いや、助かったんだろう。
こうしてベッドに寝ているのが何よりの証拠。
奇跡的だ、と思った。
実際どんな現場だったかは分からないが、確実に死んでいたであろう状況だったと思う。
ありがとう神様…。私生きてた…。
どうやら私は悪運が強いらしい。それとも今までの行いが良かったかしら。
あんな事故があった後なのに、そんな事を考えられるだけの余裕がある自分の図太さに少し笑った。
痛みを少しも感じないのはきっと麻酔が効いているのだろう。
今は一体何時だろうか。そもそもどれくらい眠っていたのだろう。聞こえる声は医者と看護師だろうか。
お父さんは。お母さんは。
不安と倦怠感を胸に抱きながらゆっくりと目を開けてみる。
白い天井、白い壁。そして、
「目がクリクリして〜お母さんにそっくりですねえ〜」
(……誰ですかあなたは)
目を開いてみれば眼前には見知らぬ男性がいた。
しかもデレッデレの笑顔だ。マジで誰だよ。
顔近いな…。無駄に顔整ってる…。
お母さんにそっくり、て。仮にも成人している患者相手に何を言っているのか。
私はこの男性は知らないけれど、母の顔を知ってるということは医療関係者なのだろうか?それとも母の兄弟か?
いやいやうちの親戚にこんなシュッとした人いないし人違い、もはや人種違いレベルだ。
母は今いるんだろうか。顔が見たい。話がしたい。
(……って、いや本当に!顔近すぎるんですけど!!)
眼前約20センチ。距離感がおかしい。
なんだこの男は。目覚めて早々に無駄な体力を使わせないで欲しい。すごい、すごいストレス。思わず2回言うぐらいストレス。
睨みつけるように思いっきり怪訝な顔をしてみたのだが、目の前の男は変わらずの笑顔。
更に「まだ眠たいか?そうかそうか」と指でちょんちょん、と頬をつついてきた。
え、気持ち悪。
ちょっとアンタ、医者なのか看護師なのか不審者なのか何なのか知りませんけどね。乙女のほっぺを気軽に触るんじゃないわよ変態!!
さすがに文句を言おうと不機嫌全開で口を開けば、
「っぁ、う〜」
「おおおおわあああ!!かーーーわーーーいーーーいーーーーーー」
「ちょっとアナタいくら個室だからって大声出さないでよ」
声が、出なかった。
どういう事だよ!かーーわーーいーーいーーーじゃないよ!
どういう事?何で声が出ないの?
まさかあの時の事故で喉に傷害が?
マジかよ…おいおいこちとら企画営業してんのよ…?プレゼンするのが仕事だし、コミュニケーションだって…。
最近やっと顧客が増えてきて、上司に褒められる事も多くなってきたのに…。
そもそも、仕事休んでるよね私…。何日無断で休んでるんだろう。
もちろん家族から連絡はされていると思うけど、仕事に復帰できない程に重篤な傷が残ったりしたらどうしよう…。
っていうか、医療保険…。車は買いなおしかしら…、お金…。生活…、いやこのまま解雇か…?
ありとあらゆる事が一気に思い出されて軽く目眩がしてきた。
(とりあえず…喉の確認を)
そう思いおそるおそる喉に手を当ててみようとするも、上手く手が動かない。
(何か、ちっさ…え、何この赤ちゃんみたいな手は)
視界に映ったのは『私は産まれてまだ何も持ったことがありません』というようなぷにぷにの小さな手だった。
全然うまく動かせない。握ったりはできる。
何これ。誰の手?どこの赤ん坊?
「よーしパパが抱っこしてやろうなー!」
「首気をつけてよ。座ってないんだから」
「ママに似て可愛いでちゅね〜〜」
(・・・どういう事)
「もうアナタったら気が早すぎるわよ」
「そんなことないだろう。なあかくかく」
誰?
ぼんやりと浮き沈みする意識の中で、確かに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
聞き馴染みがあるような、ないような朦朧としたフワフワした感覚。
遠くからカモメのような暢気な鳥の鳴き声が聞こえる。
(ここは…病院?)
私は助かったのだろうか。いや、助かったんだろう。
こうしてベッドに寝ているのが何よりの証拠。
奇跡的だ、と思った。
実際どんな現場だったかは分からないが、確実に死んでいたであろう状況だったと思う。
ありがとう神様…。私生きてた…。
どうやら私は悪運が強いらしい。それとも今までの行いが良かったかしら。
あんな事故があった後なのに、そんな事を考えられるだけの余裕がある自分の図太さに少し笑った。
痛みを少しも感じないのはきっと麻酔が効いているのだろう。
今は一体何時だろうか。そもそもどれくらい眠っていたのだろう。聞こえる声は医者と看護師だろうか。
お父さんは。お母さんは。
不安と倦怠感を胸に抱きながらゆっくりと目を開けてみる。
白い天井、白い壁。そして、
「目がクリクリして〜お母さんにそっくりですねえ〜」
(……誰ですかあなたは)
目を開いてみれば眼前には見知らぬ男性がいた。
しかもデレッデレの笑顔だ。マジで誰だよ。
顔近いな…。無駄に顔整ってる…。
お母さんにそっくり、て。仮にも成人している患者相手に何を言っているのか。
私はこの男性は知らないけれど、母の顔を知ってるということは医療関係者なのだろうか?それとも母の兄弟か?
いやいやうちの親戚にこんなシュッとした人いないし人違い、もはや人種違いレベルだ。
母は今いるんだろうか。顔が見たい。話がしたい。
(……って、いや本当に!顔近すぎるんですけど!!)
眼前約20センチ。距離感がおかしい。
なんだこの男は。目覚めて早々に無駄な体力を使わせないで欲しい。すごい、すごいストレス。思わず2回言うぐらいストレス。
睨みつけるように思いっきり怪訝な顔をしてみたのだが、目の前の男は変わらずの笑顔。
更に「まだ眠たいか?そうかそうか」と指でちょんちょん、と頬をつついてきた。
え、気持ち悪。
ちょっとアンタ、医者なのか看護師なのか不審者なのか何なのか知りませんけどね。乙女のほっぺを気軽に触るんじゃないわよ変態!!
さすがに文句を言おうと不機嫌全開で口を開けば、
「っぁ、う〜」
「おおおおわあああ!!かーーーわーーーいーーーいーーーーーー」
「ちょっとアナタいくら個室だからって大声出さないでよ」
声が、出なかった。
どういう事だよ!かーーわーーいーーいーーーじゃないよ!
どういう事?何で声が出ないの?
まさかあの時の事故で喉に傷害が?
マジかよ…おいおいこちとら企画営業してんのよ…?プレゼンするのが仕事だし、コミュニケーションだって…。
最近やっと顧客が増えてきて、上司に褒められる事も多くなってきたのに…。
そもそも、仕事休んでるよね私…。何日無断で休んでるんだろう。
もちろん家族から連絡はされていると思うけど、仕事に復帰できない程に重篤な傷が残ったりしたらどうしよう…。
っていうか、医療保険…。車は買いなおしかしら…、お金…。生活…、いやこのまま解雇か…?
ありとあらゆる事が一気に思い出されて軽く目眩がしてきた。
(とりあえず…喉の確認を)
そう思いおそるおそる喉に手を当ててみようとするも、上手く手が動かない。
(何か、ちっさ…え、何この赤ちゃんみたいな手は)
視界に映ったのは『私は産まれてまだ何も持ったことがありません』というようなぷにぷにの小さな手だった。
全然うまく動かせない。握ったりはできる。
何これ。誰の手?どこの赤ん坊?
「よーしパパが抱っこしてやろうなー!」
「首気をつけてよ。座ってないんだから」
「ママに似て可愛いでちゅね〜〜」
(・・・どういう事)
さようなら、そしてはじめまして