序章〜子供時代編
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正直、俺はあいつを泣かせてばっかりいる気がする。
別にいじめている訳では、ない。
初めてあいつを見た時、泣きそうな顔をしていた。
それでも目の前にいるやつらを睨みつけていて、何だか放っておけなくて。
思わず声をかけた。
そして、一緒にバトルして。そして泣かせた。それが1度目。
俺が直接泣かせた訳ではないけれど、とにかく泣かせた。
悔しい。とそう言ってポロポロ涙をこぼすんだ。バトルで負けると悔しいよな。わかる。
俺も負けるとすげえ悔しいし。やっぱり負けるより勝つ方が、楽しいに決まっている。
正直、今まで対戦した相手を泣かしたこと、あった。
近所の女の子とか、俺よりもっと年下の園児とかな。泣かれると、すげえ面倒くさいんだ。
場合によってはギャーギャー騒いだりして、騒ぐと大人が寄ってくるだろ?どうした、何があったんだって。
バトルしてました。ってそれで分かってくれれば良いけどよ。
酷いと俺がいじめたみたいに怒られるんだぜ。
そりゃねえよなあ。まあ、ここらへんで俺にシングルバトルで勝てるやつなんてそうそういないんだけどよ。
だから、そいつが泣いた時も、本当の事を言うとすげえ面倒くせえ。って思ったんだ。
何で女ってすぐ泣くんだろうな。俺には妹も姉ちゃんもいないから、どう扱っていいかなんて全然わからなくて。
多分、またギャン泣きされるんじゃねえかって、騒がれてそれで、俺悪くねえのに怒られるんじゃないかって、そんな事思ってた。
思ってたんだけど。
ずーっと、あいつはポロポロ、ポロポロ涙だけ流すんだ。
体の中にある水が全部、目から出てるんじゃねえかってくらい。
ごめんね、ごめんね、ありがとうって本当に本当に悲しそうに、どんどん、どんどん泣くから。
俺もう切なくて切なくて、たまんなくなってさ。
どうしたら泣き止むんだろうって、すげえ困った。
泣くなよ、って。大丈夫だ、って。
頭ぽんぽん撫でて、涙で湿った頰を触ってぐりぐりってしたらすげえ柔らかい頰っぺしてんの。
何食ったらこんな柔らかい頰っぺになるんだ?それとも俺の周りの人間とは違うもんでできてんのか?
しゃくりあげながら、おーばくんおーばくん言うもんだから、しょうがねえなあって、そいつの手をとってポケモンセンターまで行って、帰りも手を引きながら家まで送ったんだ。
家まで着いたらポケモン研究所で、すげー!って思ったけど、同時にこいつの母ちゃんとか父ちゃんに怒られるんじゃないかって、結構ビクビクしてたんだ。
そうしたら、そいつの母ちゃんに「ありがとう」って言われて土産に菓子までくれてさ。
拍子抜けしてしまった。俺の近所でポフィン作るような人全然いなくて、そもそもこの菓子なんなんだ?俺が食うのか?それともポケモンが食うのか?
って感じで。
一口食ったら、あ〜これ食えるけどポケモンが食うやつだ。って感じの味だったのでヒコザルに食わせてやったら、それはもう美味しそうに食ってて、すげえ羨ましかったな。
最後には、もうお代わりはないのか?なんていうような様子で、笑っちゃうよなあ。俺のヒコザル食いしん坊なんだよなあ。
2回目に会った時、いや見かけた時は元気そうで良かった。
隣のクラスなんていうのは後から知った事で、帰ろうと思って教室を出たら隣の部屋にあいつが座っているのが見えて。
あ、かくかくだ。って思った。別に互いに自己紹介したわけでもないのに、すっかり名前覚えちゃったんだよな。
それから何となく、隣の教室に目をやるようになった。
3度目は、橋の上だ。
デンジの野郎と歩いてたら、おーばくん!!ってちょっと舌ったらずな声で駆け寄ってきて。
走るのが得意じゃないのか、顔真っ赤にさせて、はあはあ言ってて。「落ち着け」って俺よくデンジに言われるんだけど、そんな俺でも「ちょっと落ち着けお前」って言いたくなるぐらいの勢いで頭下げられて。
俺もデンジもビックリしたけど、いいぜ。って言ったら見たこともない顔でニコニコ笑ってるお前がいて。
初めて、初めてちゃんと笑った顔見たもんだからびっくりして。
泣いてるイメージしかないもんだから、面食らってしまって。こいつ、こんな風に笑うんだなあ。ってなんか、そんな事考えてしまった。
それから、俺たちはどんどん仲良くなっていって。
デンジも一緒に、3人で遊ぶのがすげえ楽しくて。
いつも近所の子供とか、周りの大人からは呼び捨てで呼ばれることばかりだから、おーばくんおーばくん、っていう呼び方が、今だに聴きなれなくてくすぐったい。嫌なわけではないけれど、どこか他人行儀な気がする。
何回も、何回も俺の名前を呼びながらくっついてきて、お前トサキントのフンかよ。って思った事もあるけど、俺が振り向くと、おーばくんなあに?って聞くもんだから、何もねえよ。ってつい言ってしまう。
そして、ついに泣かせてしまった。
俺のせいというか、俺たちのせいというか。
まさかあんな爆発が起こるとは。大事がなくてよかった、ってあれやっぱり結構すげえのかな?
まあ、衝撃で擦り傷とか切り傷とかいろいろ出来たけどな。まあこれくらい男ならどうってことないだろ。
デンジに一泡吹かせてやろうと思って、わざマシンをこっそり使ってヒコザルに覚えさせたってのに。
まさかデンジも同じこと考えてるなんてな。
デンジと一緒にケラケラ笑ってたら、かくかくは急に怒り出して。
あいつ滅多に怒らないんだけど、いやむしろ初めてかもしれない。
めちゃくちゃ怒って、ぼかぼか容赦なく殴ってきて、それで、
『オーバのばか!!』
泣かれた。
あの時と同じくらい、もしくはそれ以上にボロボロ涙をこぼして、しんぱいしたばかばか、って俺たちを泣きながら怒ってた。
俺たちは吹っ飛んでいたからわからなかったけど、それを見てたあいつからすると凄い怖い光景だったのかもしれない。
怖がらせて心配させて、それで泣かせてしまった。
しばらく、ポカーンとその頰に流れるいくつもの筋を見ていたんだけど、だんだんと罪悪感が募ってきて、またあの時みたいに、たまらない気持ちになった。
デンジも同じような気持ちだったのかはわからないけれど、ごめんなかくかく。ってオロオロしてて、俺も困っちゃって。
デンジと二人で顔見合わせて。
でも、オーバくん、じゃなくて、オーバって名前を呼び捨てされた事に、ちょっとだけ嬉しくて。
もっと仲良くなれたみたいな気がして、目の前で泣いて怒ってるのに、何だか心臓がギューっとなるぐらい嬉しくて。
とにかくあいつは、あれ以来、俺のことオーバって呼んでくれるようになったんだ。
デンジのことも、デンジってな。
それに引き換えて、心配性になったし、すぐ「だめーー!!」とか怒るんだけど、でも「これオーバとデンジだけに、内緒だよ」ってこっそり庭の木からとってきたクラボの実くれたりして。
くすぐったいみたいな、恥ずかしいみたいな、よくわからないけど。
あいつが笑うと、すげえ、すげえ嬉しいんだ。
やっぱり泣いてるより、笑ってた方がいい。
「オーバ私の顔に何かついてる?」
「別に?」
「だって私の顔見て笑ってるからさ〜」
別にいじめている訳では、ない。
初めてあいつを見た時、泣きそうな顔をしていた。
それでも目の前にいるやつらを睨みつけていて、何だか放っておけなくて。
思わず声をかけた。
そして、一緒にバトルして。そして泣かせた。それが1度目。
俺が直接泣かせた訳ではないけれど、とにかく泣かせた。
悔しい。とそう言ってポロポロ涙をこぼすんだ。バトルで負けると悔しいよな。わかる。
俺も負けるとすげえ悔しいし。やっぱり負けるより勝つ方が、楽しいに決まっている。
正直、今まで対戦した相手を泣かしたこと、あった。
近所の女の子とか、俺よりもっと年下の園児とかな。泣かれると、すげえ面倒くさいんだ。
場合によってはギャーギャー騒いだりして、騒ぐと大人が寄ってくるだろ?どうした、何があったんだって。
バトルしてました。ってそれで分かってくれれば良いけどよ。
酷いと俺がいじめたみたいに怒られるんだぜ。
そりゃねえよなあ。まあ、ここらへんで俺にシングルバトルで勝てるやつなんてそうそういないんだけどよ。
だから、そいつが泣いた時も、本当の事を言うとすげえ面倒くせえ。って思ったんだ。
何で女ってすぐ泣くんだろうな。俺には妹も姉ちゃんもいないから、どう扱っていいかなんて全然わからなくて。
多分、またギャン泣きされるんじゃねえかって、騒がれてそれで、俺悪くねえのに怒られるんじゃないかって、そんな事思ってた。
思ってたんだけど。
ずーっと、あいつはポロポロ、ポロポロ涙だけ流すんだ。
体の中にある水が全部、目から出てるんじゃねえかってくらい。
ごめんね、ごめんね、ありがとうって本当に本当に悲しそうに、どんどん、どんどん泣くから。
俺もう切なくて切なくて、たまんなくなってさ。
どうしたら泣き止むんだろうって、すげえ困った。
泣くなよ、って。大丈夫だ、って。
頭ぽんぽん撫でて、涙で湿った頰を触ってぐりぐりってしたらすげえ柔らかい頰っぺしてんの。
何食ったらこんな柔らかい頰っぺになるんだ?それとも俺の周りの人間とは違うもんでできてんのか?
しゃくりあげながら、おーばくんおーばくん言うもんだから、しょうがねえなあって、そいつの手をとってポケモンセンターまで行って、帰りも手を引きながら家まで送ったんだ。
家まで着いたらポケモン研究所で、すげー!って思ったけど、同時にこいつの母ちゃんとか父ちゃんに怒られるんじゃないかって、結構ビクビクしてたんだ。
そうしたら、そいつの母ちゃんに「ありがとう」って言われて土産に菓子までくれてさ。
拍子抜けしてしまった。俺の近所でポフィン作るような人全然いなくて、そもそもこの菓子なんなんだ?俺が食うのか?それともポケモンが食うのか?
って感じで。
一口食ったら、あ〜これ食えるけどポケモンが食うやつだ。って感じの味だったのでヒコザルに食わせてやったら、それはもう美味しそうに食ってて、すげえ羨ましかったな。
最後には、もうお代わりはないのか?なんていうような様子で、笑っちゃうよなあ。俺のヒコザル食いしん坊なんだよなあ。
2回目に会った時、いや見かけた時は元気そうで良かった。
隣のクラスなんていうのは後から知った事で、帰ろうと思って教室を出たら隣の部屋にあいつが座っているのが見えて。
あ、かくかくだ。って思った。別に互いに自己紹介したわけでもないのに、すっかり名前覚えちゃったんだよな。
それから何となく、隣の教室に目をやるようになった。
3度目は、橋の上だ。
デンジの野郎と歩いてたら、おーばくん!!ってちょっと舌ったらずな声で駆け寄ってきて。
走るのが得意じゃないのか、顔真っ赤にさせて、はあはあ言ってて。「落ち着け」って俺よくデンジに言われるんだけど、そんな俺でも「ちょっと落ち着けお前」って言いたくなるぐらいの勢いで頭下げられて。
俺もデンジもビックリしたけど、いいぜ。って言ったら見たこともない顔でニコニコ笑ってるお前がいて。
初めて、初めてちゃんと笑った顔見たもんだからびっくりして。
泣いてるイメージしかないもんだから、面食らってしまって。こいつ、こんな風に笑うんだなあ。ってなんか、そんな事考えてしまった。
それから、俺たちはどんどん仲良くなっていって。
デンジも一緒に、3人で遊ぶのがすげえ楽しくて。
いつも近所の子供とか、周りの大人からは呼び捨てで呼ばれることばかりだから、おーばくんおーばくん、っていう呼び方が、今だに聴きなれなくてくすぐったい。嫌なわけではないけれど、どこか他人行儀な気がする。
何回も、何回も俺の名前を呼びながらくっついてきて、お前トサキントのフンかよ。って思った事もあるけど、俺が振り向くと、おーばくんなあに?って聞くもんだから、何もねえよ。ってつい言ってしまう。
そして、ついに泣かせてしまった。
俺のせいというか、俺たちのせいというか。
まさかあんな爆発が起こるとは。大事がなくてよかった、ってあれやっぱり結構すげえのかな?
まあ、衝撃で擦り傷とか切り傷とかいろいろ出来たけどな。まあこれくらい男ならどうってことないだろ。
デンジに一泡吹かせてやろうと思って、わざマシンをこっそり使ってヒコザルに覚えさせたってのに。
まさかデンジも同じこと考えてるなんてな。
デンジと一緒にケラケラ笑ってたら、かくかくは急に怒り出して。
あいつ滅多に怒らないんだけど、いやむしろ初めてかもしれない。
めちゃくちゃ怒って、ぼかぼか容赦なく殴ってきて、それで、
『オーバのばか!!』
泣かれた。
あの時と同じくらい、もしくはそれ以上にボロボロ涙をこぼして、しんぱいしたばかばか、って俺たちを泣きながら怒ってた。
俺たちは吹っ飛んでいたからわからなかったけど、それを見てたあいつからすると凄い怖い光景だったのかもしれない。
怖がらせて心配させて、それで泣かせてしまった。
しばらく、ポカーンとその頰に流れるいくつもの筋を見ていたんだけど、だんだんと罪悪感が募ってきて、またあの時みたいに、たまらない気持ちになった。
デンジも同じような気持ちだったのかはわからないけれど、ごめんなかくかく。ってオロオロしてて、俺も困っちゃって。
デンジと二人で顔見合わせて。
でも、オーバくん、じゃなくて、オーバって名前を呼び捨てされた事に、ちょっとだけ嬉しくて。
もっと仲良くなれたみたいな気がして、目の前で泣いて怒ってるのに、何だか心臓がギューっとなるぐらい嬉しくて。
とにかくあいつは、あれ以来、俺のことオーバって呼んでくれるようになったんだ。
デンジのことも、デンジってな。
それに引き換えて、心配性になったし、すぐ「だめーー!!」とか怒るんだけど、でも「これオーバとデンジだけに、内緒だよ」ってこっそり庭の木からとってきたクラボの実くれたりして。
くすぐったいみたいな、恥ずかしいみたいな、よくわからないけど。
あいつが笑うと、すげえ、すげえ嬉しいんだ。
やっぱり泣いてるより、笑ってた方がいい。
この感情にまだ名前はない
「オーバ私の顔に何かついてる?」
「別に?」
「だって私の顔見て笑ってるからさ〜」