第一章<出会い編>
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あれから更に3日間たった。
ほへとの具合も安定し、医務室から客室の長屋に移された。
ほへとの足は変に捻挫をしているようで、長屋には伊作も付き添って連れて行った。
歩けるような状態ではないものの、運ばれてきた時よりも格段に顔色はよくなっている。
「あの、失礼します」
「はい?」
昼休みが半分ほど経過したであろう時刻。
新たに宛がわれた部屋でほへとが横になっていると、障子越しに控えめに声をかけられた。
その声に半身を起き上がらせ入室の許可を出すと、伊作より遥かに小さい3人組みがおずおずと入ってきた。
3人とも水色に井桁模様の入った装束を身につけている。
「傷の具合、どうっすか?」
3人が枕元に来て話しかける。
「ええ、随分良くなりましたが・・・ええと」
「私たちは、最初にお姉さんを見つけた者です」
眼鏡をかけた少年が言った。
「そう…。君たちが助けてくれたのね」
「いえ、助けただなんて・・・」
「俺達、お姉さんを見つけただけです」
「うん。実際にお姉さんを運んだのは七松小平太先輩だもんね」
「あ、七松小平太先輩っていうのは、6年生の先輩なんですけど」
関を切ったように話し出す3人。
傷が安定するまで面会謝絶だった1年は組の乱太郎、きり丸、しんべヱはほへとが長屋に移されるこの日を待ちに待っていたのだった。
「・・・というわけで、私たちはお姉さんを直接助けたわけじゃないんです」
「俺達にもっと力があったらお姉さんをすぐに忍術学園に運んだのに・・・」
「ごめんなさい・・・」
しょぼんとする3人にほへとは声をかける。
「謝ることなんて…。ほら、顔をあげて。君たちが見つけてくれなかったら私はあの場で死んでいたかもしれない。君たちは十分私の命の恩人よ」
「お姉さん・・・」
「本当にありがとう」
3人の頭を順に撫でる。
3人は少し恥ずかしそうな、誇らしいような顔をした。
「ところで、君たちの名前、聞かせてくれたら嬉しいわ」
その言葉に眼鏡の少年が元気よく答える。
「1年は組の忍たま!猪名寺乱太郎です!」
「同じく1年は組、摂津のきり丸です!」
「同じく1年は組の福富しんべヱです!」
元気のいい返事に思わず透に笑みがこぼれる。
村にいたときでさえこんなに元気な子に会ったことなんてあっただろうか。
「「「お姉さんの名前は?」」」
「私の名前はいろはにほへとです」
「じゃあほへとさんですね!」
「俺達のことは好きに呼んでください!」
「困ったことがあったら何でも言ってください!」
一息つく間もないくらいまた3人が話し出す。
弟を持ったらこんな感じなんだろうなあ。とほへとは思った。
「こらこらこら!病室で騒がしくするんじゃない!」
「「「土井先生!!」」」
開けっ放しになっていた障子から黒い装束の男性がやってきた。先生と3人が言ったところをみると、黒い装束は先生らしい。
見つめていると、ふと目が合った。
「いやあすいません騒がしくして・・・」
「いえ全然。子供が元気なのは良いことです」
元気すぎるくらいですけどね。と土井先生と呼ばれた男は苦笑いした。
「私は1年は組の教科担任をしてます土井半助です。すいませんうちの生徒が」
「私はいろはにほへとと申します。こちらこそ申し訳ございません。このような寝汚い格好で」
ほへとは少し困ったような笑みを浮かべた。ほへとの今の服装は白い寝着に羽織をかけている。
普通ならばとてもじゃないが若い男性に見せるような服装ではない。
「いえとんでもない。突然押しかけたのはこちらですから」
と人の良さそうな笑顔で言った。
先生!先生!と3人が足に纏わりついている状況が微笑ましい。
「あ、そうだ!」
忘れてた!と急にきり丸が懐から小さな巾着袋を取り出した。
「これ、ほへとさんのっすよね?」
見れば、見たことのある巾着袋。てっきり山の中に落としたのだと思っていた。
「拾ってくれたんだ」
ありがとう。と言って受け取ろうとするといつまで経っても手に袋の重みを感じない。
見れば必死の形相で巾着袋から手を離そうとするきり丸がいた。
「うおおおおおはなれろ俺の右手ええええ!!!!」
「きり丸は超どケチなので、本能で小銭の入った袋が手から離れないんです」
「そ、そうなんだ・・・」
乱太郎としんべヱの手を借りながらやっとの思いで手を放す頃にはきり丸の顔が半泣きになっていた。
「ううう・・・。ほへとさ~ん・・・」
「泣かないできり丸くん。お駄賃くらいあげるから」
「小銭ー!?小銭ー!?」
一転目が小銭になって輝くきり丸に土井先生の拳骨が飛ぶ。
「馬鹿者!!」
「いってえ!!」
「ほへとさんも甘やかさないでください!」
ははは・・・と力なく笑う乱太郎としんべヱ。彼らはこの状況に慣れっこらしい。
「でも土井先生。きり丸のこの超どケチのおかげでほへとさんが見つかったんですよ」
「何?そうなのか」
「うん。きり丸って凄いよね!」
乱太郎としんべヱの言葉に半助とほへとは首をかしげる
「はい。私たちが裏々山で山菜を採っていたとき・・・」
事の話はこうだ。
乱太郎、きり丸、しんべヱが食堂のおばちゃんに頼まれ裏山で山菜を採っていた。なかなかめぼしい山菜が見つからず、裏々山まで足を伸ばしたときにきり丸が小銭の音を聞いた。
いつものように駆けて行くきり丸を追って行ったらほへとが倒れていたという。
「ほへとさんが倒れた拍子に懐にいれていた巾着袋が落ちて、小銭が飛び出たみたいで。その小銭がたまたま石に当たったのが良かったんだと思います」
偶然に偶然が重なりほへとは助かったのだ。
もしも山菜採りにいった中にきり丸がいなかったら。偶然小銭が落ちなかったら。 ほへとはそのまま息絶えていたかもしれない。
「では、この小銭が私の命を救ってくれたわけね」
「そういうことに・・・なりますね」
地獄の沙汰も金次第。なんて言ったものだけれど。
まさか小銭が自分の命を救うことになるとは思っていなかった。
「じゃあ尚更お駄賃渡さないといけないわ」
そう言ってほへとが袋の紐を緩めようとすると、慌てて乱太郎が声をあげる。
「いいんですよ透さん!きり丸ったらこぼれたお金全部自分の懐に入れちゃったんだから!!」
きり丸を見れば、えへへ。とバツが悪そうな笑顔で目を逸らされた。
ほへとは思わず吹き出しそうになるが、横で聞いていた土井半助は一寸の間を置かずにきり丸をすっ叩いた。
「いってえええ!!」
「そんなときまでネコババするんじゃない!!彼女に全額お金を返しなさい!」
「ええええええ!!!!」
「『ええええええ!!!!』じゃない!!!」
驚愕の表情で嘆くきり丸と怒号を飛ばす土井半助。
乱太郎としんべヱはいつものことだ。と苦笑い。
ほへとはほへとでクスクスとその光景を見て笑っていた。
そして、地獄の底から沸き上がるような怒りに溢れた声が未だ戸が開けっ放しの廊下から飛んできた。
「静かにしてください・・・!!ここは病室なんですよ・・・!!??」
「ぜ、善法寺伊作先輩・・・!」
「ひいいいいいい!!!」
こめかみを引きつらせながら保健委員長の善法寺伊作がやってきた。
いつもの柔和な笑顔の欠片もない。
「何だか部屋が騒がしいと思ったら、土井先生まで一緒になって・・・!!」
「す、すまん!つい!!」
ペコペコと伊作と透に頭を下げる4人。
どうやら伊作を怒らせると恐いらしい。ほへとは肝に銘じた。
「そんなに怒らないで伊作くん。彼らは私の恩人なんだから」
「恩人って言ったって・・・。限度があります」
その態度の違いに呆気にとられるほへとだったが、急な身体の痛みにそのまま咽こんだ。
「ッゲホ・・・ッケホ・・・」
「ほら!言わんこっちゃない!喋るにも体力を消費するんですよ!早く横になって!」
「でも全然大丈夫・・・「問答無用です」
言われるままに促されてほへとは床につく。
枕元では申し訳なさそうな顔をする4人がいた。
「申し訳ない。私がついていながら」
「「「ごめんなさい・・・」」」
急にしおらしくなった4人に横になりながら笑顔を向ける。
「全然気にしてないわ。とっても楽しかったし」
「ほへとさんは気にして下さい。自分の体なんですよ」
嗜めるように伊作はぴしゃりと言った。
そして4人をじろりと見据える。
「とりあえずここから速やかに出てください」
「「「「はい・・・!」」」」
そそくさと帰る仕草をする4人。
4人ともしょげ返っているが、特に土井半助のそれは大きかった。
自分がいながら病室で騒いでしまったことを相当気に病んでいるらしい。
大の大人のそんなしょげた態度に、図らずも可愛いと思ってしまったほへとだった。
「あの・・・ほへとおねえさん・・・」
敷居を跨ぐ前にくるりとほへとの方を向いて乱太郎が言った。
「なあに?乱太郎くん」
「私たち、またお見舞いにきてもいいですか?」
本当に邪魔じゃないですか?と八の字眉毛で言われた。きり丸としんべヱもそれぞれ同じ顔をしている。
そのいじらしさに思わず笑みがこぼれる。
(私は本当にいい子達に拾って貰えた)
「もちろん。いつでも遊びに来て」
待ってる。
そう言えば、ぱあっと3人の顔が笑顔になった。
それを見ていた土井半助も少し笑う。
「よし。じゃあお前たち、本当にそろそろお暇しよう。午後の授業も始まるしな」
「「「はい!」」」
「じゃあほへとさん、お大事に」
「「「また来ます!!」」」
土井半助が如何にも先生らしい声で促すと3人は素直に部屋を出た。
最後にきり丸が障子を閉める直前にほへとは声をかけた。
「きり丸くん」
「はい?」
「お金・・・そのまま持ってて」
「え・・・いいんすか?」
うん。と頷くと、にかっとしたきり丸の笑い顔が返ってきた。
そしてそのまま障子が閉められた。
「いい子達ね」
「まあ、そうですね・・・」
少々元気すぎますけど。と土井半助と同じことを言って苦笑する伊作。
伊作とほへとは顔を見合わせて笑った。
***
その夜。
思った以上に体力を消耗したほへとがまた熱を出したことで、保健委員長よりまたこっ酷く叱られる4人がいた。
ほへとの具合も安定し、医務室から客室の長屋に移された。
ほへとの足は変に捻挫をしているようで、長屋には伊作も付き添って連れて行った。
歩けるような状態ではないものの、運ばれてきた時よりも格段に顔色はよくなっている。
「あの、失礼します」
「はい?」
昼休みが半分ほど経過したであろう時刻。
新たに宛がわれた部屋でほへとが横になっていると、障子越しに控えめに声をかけられた。
その声に半身を起き上がらせ入室の許可を出すと、伊作より遥かに小さい3人組みがおずおずと入ってきた。
3人とも水色に井桁模様の入った装束を身につけている。
「傷の具合、どうっすか?」
3人が枕元に来て話しかける。
「ええ、随分良くなりましたが・・・ええと」
「私たちは、最初にお姉さんを見つけた者です」
眼鏡をかけた少年が言った。
「そう…。君たちが助けてくれたのね」
「いえ、助けただなんて・・・」
「俺達、お姉さんを見つけただけです」
「うん。実際にお姉さんを運んだのは七松小平太先輩だもんね」
「あ、七松小平太先輩っていうのは、6年生の先輩なんですけど」
関を切ったように話し出す3人。
傷が安定するまで面会謝絶だった1年は組の乱太郎、きり丸、しんべヱはほへとが長屋に移されるこの日を待ちに待っていたのだった。
「・・・というわけで、私たちはお姉さんを直接助けたわけじゃないんです」
「俺達にもっと力があったらお姉さんをすぐに忍術学園に運んだのに・・・」
「ごめんなさい・・・」
しょぼんとする3人にほへとは声をかける。
「謝ることなんて…。ほら、顔をあげて。君たちが見つけてくれなかったら私はあの場で死んでいたかもしれない。君たちは十分私の命の恩人よ」
「お姉さん・・・」
「本当にありがとう」
3人の頭を順に撫でる。
3人は少し恥ずかしそうな、誇らしいような顔をした。
「ところで、君たちの名前、聞かせてくれたら嬉しいわ」
その言葉に眼鏡の少年が元気よく答える。
「1年は組の忍たま!猪名寺乱太郎です!」
「同じく1年は組、摂津のきり丸です!」
「同じく1年は組の福富しんべヱです!」
元気のいい返事に思わず透に笑みがこぼれる。
村にいたときでさえこんなに元気な子に会ったことなんてあっただろうか。
「「「お姉さんの名前は?」」」
「私の名前はいろはにほへとです」
「じゃあほへとさんですね!」
「俺達のことは好きに呼んでください!」
「困ったことがあったら何でも言ってください!」
一息つく間もないくらいまた3人が話し出す。
弟を持ったらこんな感じなんだろうなあ。とほへとは思った。
「こらこらこら!病室で騒がしくするんじゃない!」
「「「土井先生!!」」」
開けっ放しになっていた障子から黒い装束の男性がやってきた。先生と3人が言ったところをみると、黒い装束は先生らしい。
見つめていると、ふと目が合った。
「いやあすいません騒がしくして・・・」
「いえ全然。子供が元気なのは良いことです」
元気すぎるくらいですけどね。と土井先生と呼ばれた男は苦笑いした。
「私は1年は組の教科担任をしてます土井半助です。すいませんうちの生徒が」
「私はいろはにほへとと申します。こちらこそ申し訳ございません。このような寝汚い格好で」
ほへとは少し困ったような笑みを浮かべた。ほへとの今の服装は白い寝着に羽織をかけている。
普通ならばとてもじゃないが若い男性に見せるような服装ではない。
「いえとんでもない。突然押しかけたのはこちらですから」
と人の良さそうな笑顔で言った。
先生!先生!と3人が足に纏わりついている状況が微笑ましい。
「あ、そうだ!」
忘れてた!と急にきり丸が懐から小さな巾着袋を取り出した。
「これ、ほへとさんのっすよね?」
見れば、見たことのある巾着袋。てっきり山の中に落としたのだと思っていた。
「拾ってくれたんだ」
ありがとう。と言って受け取ろうとするといつまで経っても手に袋の重みを感じない。
見れば必死の形相で巾着袋から手を離そうとするきり丸がいた。
「うおおおおおはなれろ俺の右手ええええ!!!!」
「きり丸は超どケチなので、本能で小銭の入った袋が手から離れないんです」
「そ、そうなんだ・・・」
乱太郎としんべヱの手を借りながらやっとの思いで手を放す頃にはきり丸の顔が半泣きになっていた。
「ううう・・・。ほへとさ~ん・・・」
「泣かないできり丸くん。お駄賃くらいあげるから」
「小銭ー!?小銭ー!?」
一転目が小銭になって輝くきり丸に土井先生の拳骨が飛ぶ。
「馬鹿者!!」
「いってえ!!」
「ほへとさんも甘やかさないでください!」
ははは・・・と力なく笑う乱太郎としんべヱ。彼らはこの状況に慣れっこらしい。
「でも土井先生。きり丸のこの超どケチのおかげでほへとさんが見つかったんですよ」
「何?そうなのか」
「うん。きり丸って凄いよね!」
乱太郎としんべヱの言葉に半助とほへとは首をかしげる
「はい。私たちが裏々山で山菜を採っていたとき・・・」
事の話はこうだ。
乱太郎、きり丸、しんべヱが食堂のおばちゃんに頼まれ裏山で山菜を採っていた。なかなかめぼしい山菜が見つからず、裏々山まで足を伸ばしたときにきり丸が小銭の音を聞いた。
いつものように駆けて行くきり丸を追って行ったらほへとが倒れていたという。
「ほへとさんが倒れた拍子に懐にいれていた巾着袋が落ちて、小銭が飛び出たみたいで。その小銭がたまたま石に当たったのが良かったんだと思います」
偶然に偶然が重なりほへとは助かったのだ。
もしも山菜採りにいった中にきり丸がいなかったら。偶然小銭が落ちなかったら。 ほへとはそのまま息絶えていたかもしれない。
「では、この小銭が私の命を救ってくれたわけね」
「そういうことに・・・なりますね」
地獄の沙汰も金次第。なんて言ったものだけれど。
まさか小銭が自分の命を救うことになるとは思っていなかった。
「じゃあ尚更お駄賃渡さないといけないわ」
そう言ってほへとが袋の紐を緩めようとすると、慌てて乱太郎が声をあげる。
「いいんですよ透さん!きり丸ったらこぼれたお金全部自分の懐に入れちゃったんだから!!」
きり丸を見れば、えへへ。とバツが悪そうな笑顔で目を逸らされた。
ほへとは思わず吹き出しそうになるが、横で聞いていた土井半助は一寸の間を置かずにきり丸をすっ叩いた。
「いってえええ!!」
「そんなときまでネコババするんじゃない!!彼女に全額お金を返しなさい!」
「ええええええ!!!!」
「『ええええええ!!!!』じゃない!!!」
驚愕の表情で嘆くきり丸と怒号を飛ばす土井半助。
乱太郎としんべヱはいつものことだ。と苦笑い。
ほへとはほへとでクスクスとその光景を見て笑っていた。
そして、地獄の底から沸き上がるような怒りに溢れた声が未だ戸が開けっ放しの廊下から飛んできた。
「静かにしてください・・・!!ここは病室なんですよ・・・!!??」
「ぜ、善法寺伊作先輩・・・!」
「ひいいいいいい!!!」
こめかみを引きつらせながら保健委員長の善法寺伊作がやってきた。
いつもの柔和な笑顔の欠片もない。
「何だか部屋が騒がしいと思ったら、土井先生まで一緒になって・・・!!」
「す、すまん!つい!!」
ペコペコと伊作と透に頭を下げる4人。
どうやら伊作を怒らせると恐いらしい。ほへとは肝に銘じた。
「そんなに怒らないで伊作くん。彼らは私の恩人なんだから」
「恩人って言ったって・・・。限度があります」
その態度の違いに呆気にとられるほへとだったが、急な身体の痛みにそのまま咽こんだ。
「ッゲホ・・・ッケホ・・・」
「ほら!言わんこっちゃない!喋るにも体力を消費するんですよ!早く横になって!」
「でも全然大丈夫・・・「問答無用です」
言われるままに促されてほへとは床につく。
枕元では申し訳なさそうな顔をする4人がいた。
「申し訳ない。私がついていながら」
「「「ごめんなさい・・・」」」
急にしおらしくなった4人に横になりながら笑顔を向ける。
「全然気にしてないわ。とっても楽しかったし」
「ほへとさんは気にして下さい。自分の体なんですよ」
嗜めるように伊作はぴしゃりと言った。
そして4人をじろりと見据える。
「とりあえずここから速やかに出てください」
「「「「はい・・・!」」」」
そそくさと帰る仕草をする4人。
4人ともしょげ返っているが、特に土井半助のそれは大きかった。
自分がいながら病室で騒いでしまったことを相当気に病んでいるらしい。
大の大人のそんなしょげた態度に、図らずも可愛いと思ってしまったほへとだった。
「あの・・・ほへとおねえさん・・・」
敷居を跨ぐ前にくるりとほへとの方を向いて乱太郎が言った。
「なあに?乱太郎くん」
「私たち、またお見舞いにきてもいいですか?」
本当に邪魔じゃないですか?と八の字眉毛で言われた。きり丸としんべヱもそれぞれ同じ顔をしている。
そのいじらしさに思わず笑みがこぼれる。
(私は本当にいい子達に拾って貰えた)
「もちろん。いつでも遊びに来て」
待ってる。
そう言えば、ぱあっと3人の顔が笑顔になった。
それを見ていた土井半助も少し笑う。
「よし。じゃあお前たち、本当にそろそろお暇しよう。午後の授業も始まるしな」
「「「はい!」」」
「じゃあほへとさん、お大事に」
「「「また来ます!!」」」
土井半助が如何にも先生らしい声で促すと3人は素直に部屋を出た。
最後にきり丸が障子を閉める直前にほへとは声をかけた。
「きり丸くん」
「はい?」
「お金・・・そのまま持ってて」
「え・・・いいんすか?」
うん。と頷くと、にかっとしたきり丸の笑い顔が返ってきた。
そしてそのまま障子が閉められた。
「いい子達ね」
「まあ、そうですね・・・」
少々元気すぎますけど。と土井半助と同じことを言って苦笑する伊作。
伊作とほへとは顔を見合わせて笑った。
***
その夜。
思った以上に体力を消耗したほへとがまた熱を出したことで、保健委員長よりまたこっ酷く叱られる4人がいた。