第二章<日常編>
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(やっぱり言わなきゃよかったなあ・・・)
目の前で心底面白いことを思いついたと言わんばかりの顔をしている鉢屋三郎。
頼むから僕の顔でそんな悪そうな笑い方やめてくれ・・・・・・。
30
「夏休みにどうするかにかかってるよな。七松先輩どうするんだろうな。学園に残るのかな。ほへとさん、きっとここに残るだろうし。面白そうだから私も鍛錬がてら残ろうか・・・」
他人の恋愛話についてあーだこーだとぶつぶつ言っている三郎。
雷蔵が知っているこの男は基本噂好きの上にからかい癖があるのだ。
だから少し考えてから発言すれば良かったと思ったが、後悔先に立たず。
『ほへとが学園に残るだろう』という三郎の言葉を聞いて、ついうっかり口を滑らせてしまった。
「え?ほへとさん学園に残らないみたいだよ。夏休みの間は土井先生のお宅でお世話になるってきり丸が・・・」
「何だその面白い情報!!」
「あ」
(・・・しまったー・・・)
魚に水を与えてしまった。しかし時既に遅し。
三郎は雷蔵が与えた水で殊更に愉快そうな顔をした。
完全に新しい玩具を見つけた子供のそれである。
「三郎、先に言っておくけど」
「ん?何だ雷蔵」
「程々にしろよ・・・」
「分かってるって。さすが雷蔵。私のこと良く分かってるなあ。・・・『私、雷蔵くんのそういうところ好きですよ』」
「ほへとさんの顔でそういうことするのやめてくれないかな・・・・・・。凄い違和感があるんだけど・・・」
目の前で笑うほへとの顔。次の瞬間には小平太の顔に変わっていた。
(嗚呼、やっぱり無駄だと分かってても止めておくべきだったろうか・・・)
いざとなったら僕は三郎を先輩に売ろう・・・。
雷蔵の良心がズキズキと痛んだ。
***
「いやあ、ご馳走様ですほへとさん」
三郎が自室でほへとの顔をして笑っていた頃。
医務室では新野洋一先生と善法寺伊作、そして今日の医務室の当番だった保健員の鶴町伏木蔵が団子を頬張っていた。
「いつもは不運な僕達ですけど、今日はいい日ですね伊作先輩」
「そうだねえ」
伏木蔵と伊作が団子に舌鼓を打ちながら和やかに言った。
「そういえばほへとさん。小平太が何か言ってませんでした?」
「何かって、何でしょう…ああ、文次郎くんがお団子買ったんだっていう話は聞きました。本当にご馳走になってしまって悪いわ」
「え?あ、ああー。はい、そうなんですよー。いやー、文次郎には悪いことしたかなー、なんて・・・」
あはは。
と伊作はパッパッと手を振る。
(いや、だって気になるじゃないか・・・)
伊作は、『行ってこい』と他の三人と共に爽やかに送り出したものの、やはり小平太の動向が気になっていた。
あくまで見守っている。ということを貫いている伊作ではあったが、多少の好奇心が疼くのはしょうがない。
しかしあの量の団子をお土産にしたのは確実に失敗だったんじゃないかと伊作自身は思っている。
「・・・このお団子、潮江先輩が買ってきたんですか?凄いスリル~」
「うん。賭けで負けたんですって。文次郎くんには後で何かお礼しないとねえ・・・」
ほわほわと伏木蔵と会話している空気の中、ほへとから不穏な言葉が出てきた。
伊作はやんわりと質問する。
「も、文次郎にお礼・・・ですか?小平太じゃあ・・・なくて?」
「それはそうでしょう?代金払ったのは文次郎くんなんだし。もちろん小平太くんにもお礼はしたいとは思うけれど」
「潮江くん、いい店の趣味してますねえ。本当美味しいですよ」
「本当ですよね。今度連れて行って貰いたいくらいです」
「それはいいですね。ほへとさんもたまには町に行って羽を伸ばすのもいいですよ」
なんてニコニコ笑って新野先生と談笑しているほへと。
伊作は口元が引き攣るのを頑張って耐えた。
「ねえ伊作くん。文次郎くんって甘い物とかお好きかしら?ああ、でもお煎餅とかの方がいいかしら」
「そう、ですねえ……。文次郎なら何でも食べると思いますよ……」
「でも折角だから文次郎くんが喜ぶものあげたいじゃないですか」
頭を捻っているほへとは何だかどこか楽しそうな様子だった。
(そうか…そう来たか…。うん。そうだよね…普通はそうなるよね)
どんどんほへとの中で文次郎の株が急上昇している反面、小平太の株はそこまで上がっていないようだと察した伊作は、『どうしたもんかな…』と思う反面、ほへとの律儀さに苦笑いした。
「ほへとさん…。あのね、僕ビスコイトが食べたいです」
「ビスコイト?ってなあに?」
「南蛮のお菓子なんだって…。前しんべヱから聞いたの…」
「南蛮の?へえ。そんなお菓子があるんですね。どんなお菓子なのかしら。どんなものかわからないけど、それにしてみましょうか。上手く完成したら是非、伏木蔵くんも味見してね」
「わあい…すごいスリル〜…」
「作り方を調べないとね」
和やかに指きりしているほへとと伏木蔵。それを微笑ましそうに見ている新野先生。
そして一人どういう表情を作っていいのか分からない伊作。
(文次郎のために焼くビスコイト・・・ね・・・)
これ僕の勘だけど、
何かまた面倒くさいことになるんじゃないかな・・・。
目の前で心底面白いことを思いついたと言わんばかりの顔をしている鉢屋三郎。
頼むから僕の顔でそんな悪そうな笑い方やめてくれ・・・・・・。
30
「夏休みにどうするかにかかってるよな。七松先輩どうするんだろうな。学園に残るのかな。ほへとさん、きっとここに残るだろうし。面白そうだから私も鍛錬がてら残ろうか・・・」
他人の恋愛話についてあーだこーだとぶつぶつ言っている三郎。
雷蔵が知っているこの男は基本噂好きの上にからかい癖があるのだ。
だから少し考えてから発言すれば良かったと思ったが、後悔先に立たず。
『ほへとが学園に残るだろう』という三郎の言葉を聞いて、ついうっかり口を滑らせてしまった。
「え?ほへとさん学園に残らないみたいだよ。夏休みの間は土井先生のお宅でお世話になるってきり丸が・・・」
「何だその面白い情報!!」
「あ」
(・・・しまったー・・・)
魚に水を与えてしまった。しかし時既に遅し。
三郎は雷蔵が与えた水で殊更に愉快そうな顔をした。
完全に新しい玩具を見つけた子供のそれである。
「三郎、先に言っておくけど」
「ん?何だ雷蔵」
「程々にしろよ・・・」
「分かってるって。さすが雷蔵。私のこと良く分かってるなあ。・・・『私、雷蔵くんのそういうところ好きですよ』」
「ほへとさんの顔でそういうことするのやめてくれないかな・・・・・・。凄い違和感があるんだけど・・・」
目の前で笑うほへとの顔。次の瞬間には小平太の顔に変わっていた。
(嗚呼、やっぱり無駄だと分かってても止めておくべきだったろうか・・・)
いざとなったら僕は三郎を先輩に売ろう・・・。
雷蔵の良心がズキズキと痛んだ。
***
「いやあ、ご馳走様ですほへとさん」
三郎が自室でほへとの顔をして笑っていた頃。
医務室では新野洋一先生と善法寺伊作、そして今日の医務室の当番だった保健員の鶴町伏木蔵が団子を頬張っていた。
「いつもは不運な僕達ですけど、今日はいい日ですね伊作先輩」
「そうだねえ」
伏木蔵と伊作が団子に舌鼓を打ちながら和やかに言った。
「そういえばほへとさん。小平太が何か言ってませんでした?」
「何かって、何でしょう…ああ、文次郎くんがお団子買ったんだっていう話は聞きました。本当にご馳走になってしまって悪いわ」
「え?あ、ああー。はい、そうなんですよー。いやー、文次郎には悪いことしたかなー、なんて・・・」
あはは。
と伊作はパッパッと手を振る。
(いや、だって気になるじゃないか・・・)
伊作は、『行ってこい』と他の三人と共に爽やかに送り出したものの、やはり小平太の動向が気になっていた。
あくまで見守っている。ということを貫いている伊作ではあったが、多少の好奇心が疼くのはしょうがない。
しかしあの量の団子をお土産にしたのは確実に失敗だったんじゃないかと伊作自身は思っている。
「・・・このお団子、潮江先輩が買ってきたんですか?凄いスリル~」
「うん。賭けで負けたんですって。文次郎くんには後で何かお礼しないとねえ・・・」
ほわほわと伏木蔵と会話している空気の中、ほへとから不穏な言葉が出てきた。
伊作はやんわりと質問する。
「も、文次郎にお礼・・・ですか?小平太じゃあ・・・なくて?」
「それはそうでしょう?代金払ったのは文次郎くんなんだし。もちろん小平太くんにもお礼はしたいとは思うけれど」
「潮江くん、いい店の趣味してますねえ。本当美味しいですよ」
「本当ですよね。今度連れて行って貰いたいくらいです」
「それはいいですね。ほへとさんもたまには町に行って羽を伸ばすのもいいですよ」
なんてニコニコ笑って新野先生と談笑しているほへと。
伊作は口元が引き攣るのを頑張って耐えた。
「ねえ伊作くん。文次郎くんって甘い物とかお好きかしら?ああ、でもお煎餅とかの方がいいかしら」
「そう、ですねえ……。文次郎なら何でも食べると思いますよ……」
「でも折角だから文次郎くんが喜ぶものあげたいじゃないですか」
頭を捻っているほへとは何だかどこか楽しそうな様子だった。
(そうか…そう来たか…。うん。そうだよね…普通はそうなるよね)
どんどんほへとの中で文次郎の株が急上昇している反面、小平太の株はそこまで上がっていないようだと察した伊作は、『どうしたもんかな…』と思う反面、ほへとの律儀さに苦笑いした。
「ほへとさん…。あのね、僕ビスコイトが食べたいです」
「ビスコイト?ってなあに?」
「南蛮のお菓子なんだって…。前しんべヱから聞いたの…」
「南蛮の?へえ。そんなお菓子があるんですね。どんなお菓子なのかしら。どんなものかわからないけど、それにしてみましょうか。上手く完成したら是非、伏木蔵くんも味見してね」
「わあい…すごいスリル〜…」
「作り方を調べないとね」
和やかに指きりしているほへとと伏木蔵。それを微笑ましそうに見ている新野先生。
そして一人どういう表情を作っていいのか分からない伊作。
(文次郎のために焼くビスコイト・・・ね・・・)
これ僕の勘だけど、
何かまた面倒くさいことになるんじゃないかな・・・。