第二章<日常編>
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今私は目の前にある物に、少し眩暈がしています。
確か出掛け前に長次くんには『小平太くんがあまりに甘い物を買い込みそうだったら牽制してくださいね。頼みますね』と念を押したはずなのだけど。
「ほへとちゃん、嬉しい?」
う、嬉しいといえば嬉しいですけど・・・。
ちょっと買いすぎ・・・かな?
27
「ほへとちゃん、ただいまー!」
「おかえりなさい小平太くん」
小平太の「団子買ってくるから!」の発言から一週間後。
ほへとがおばちゃんとお茶をしているときに、女装の格好そのままに小平太が食堂に飛び込んで来た。
今日は五、六年合同の女装の実習だったらしく、みんなの女装姿が見れてほへとは大層面白かった。(もちろん担当は山田先生、いや伝子さんだ)
小平太は凛々しい眉毛そのままに、女物の着物姿で大股で食堂に入ってくると、どさっと机の上に大きな包みを置いた。
「ほへとちゃん、これ先週言ってたお土産!」
「本当に…わざわざ良かったのに・・・って……量、多いですね」
「そうか?」
いやいやいや。
「そうか?」なんて小平太はあっけらかんとしているものの、おばちゃんでさえも「ちょっと買いすぎじゃないかい?」と神妙な顔をしている。
それはそうだろう。机の上にはゆうに五十本近くはありそうな団子。
餡子、みたらし、胡麻、よもぎ、などなど。
輝くばかりの団子の山に、眩暈さえ起こしそうだった。
(あれ程長次くんに念押ししておいたのに・・・・・・)
高かったのではないか。何だか申し訳ないことをした。
そんなほへとの心を知らぬ小平太はニコニコと嬉しそうである。
「それ、全部文次郎が買ったんだ」
「え?文次郎くんが?…どういうことでしょうか」
聞けば、「誰が一番男性に声をかけられるか」という賭けを六年生内でしたらしい。
そして一番に負けたのが潮江文次郎、その人間だったのだった。
(ぜ、全部・・・。全部奢らされたの・・・?文次郎くん可哀想・・・)
ほへとはしばし甘い山をしげしげと眺めた。
しかしほへとは今朝方の文次郎の女装を思い出しながら、何となく納得してしまったのだった。申し訳ないことに。いや、可愛らしいとは思ったが。
そして小平太は指折り数える。
「私と長次と、文次郎だろ?仙蔵と伊作と留三郎。六人で賭けをしたんだけど、負けた奴が一人頭十本ずつ奢るってことにしてたんだ」
「・・・・・・・・」
そのキラキラとした笑顔での言葉に、しばし固まる。
どう返したものかと困った顔をしていたら、おばちゃんが助け舟を出してくれた。
「だからってねえアンタ、限度ってもんがあるよ。他の子には了承とったのかい?」
それはそうだ。
ここにある団子は五十本ばかし。小平太を含め他の人間の取り分がないのだ。
もちろん、代金を払った文次郎の取り分も。
「ん?あいつらにほへとちゃんにあげるんだって言ったら、逆に『行ってこい』って送り出されたぞ」
文次郎には断ってないけどな!
と明らかに反対意見を有耶無耶にした小平太の言葉に、ほへとはおばちゃんと顔を見合わせる。
(どうしよう・・・。この団子の山・・・)
目の前の甘い山に首を捻っていると、戸口の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「お団子の匂いがする~」
「え?本当?・・・私にはわかんないなあ」
「無理無理、しんべヱの鼻だから出来る芸当だぜ」
その声に、丁度良い子達が来たわ。とほへとは戸口に向かって微笑んだ。
確か出掛け前に長次くんには『小平太くんがあまりに甘い物を買い込みそうだったら牽制してくださいね。頼みますね』と念を押したはずなのだけど。
「ほへとちゃん、嬉しい?」
う、嬉しいといえば嬉しいですけど・・・。
ちょっと買いすぎ・・・かな?
27
「ほへとちゃん、ただいまー!」
「おかえりなさい小平太くん」
小平太の「団子買ってくるから!」の発言から一週間後。
ほへとがおばちゃんとお茶をしているときに、女装の格好そのままに小平太が食堂に飛び込んで来た。
今日は五、六年合同の女装の実習だったらしく、みんなの女装姿が見れてほへとは大層面白かった。(もちろん担当は山田先生、いや伝子さんだ)
小平太は凛々しい眉毛そのままに、女物の着物姿で大股で食堂に入ってくると、どさっと机の上に大きな包みを置いた。
「ほへとちゃん、これ先週言ってたお土産!」
「本当に…わざわざ良かったのに・・・って……量、多いですね」
「そうか?」
いやいやいや。
「そうか?」なんて小平太はあっけらかんとしているものの、おばちゃんでさえも「ちょっと買いすぎじゃないかい?」と神妙な顔をしている。
それはそうだろう。机の上にはゆうに五十本近くはありそうな団子。
餡子、みたらし、胡麻、よもぎ、などなど。
輝くばかりの団子の山に、眩暈さえ起こしそうだった。
(あれ程長次くんに念押ししておいたのに・・・・・・)
高かったのではないか。何だか申し訳ないことをした。
そんなほへとの心を知らぬ小平太はニコニコと嬉しそうである。
「それ、全部文次郎が買ったんだ」
「え?文次郎くんが?…どういうことでしょうか」
聞けば、「誰が一番男性に声をかけられるか」という賭けを六年生内でしたらしい。
そして一番に負けたのが潮江文次郎、その人間だったのだった。
(ぜ、全部・・・。全部奢らされたの・・・?文次郎くん可哀想・・・)
ほへとはしばし甘い山をしげしげと眺めた。
しかしほへとは今朝方の文次郎の女装を思い出しながら、何となく納得してしまったのだった。申し訳ないことに。いや、可愛らしいとは思ったが。
そして小平太は指折り数える。
「私と長次と、文次郎だろ?仙蔵と伊作と留三郎。六人で賭けをしたんだけど、負けた奴が一人頭十本ずつ奢るってことにしてたんだ」
「・・・・・・・・」
そのキラキラとした笑顔での言葉に、しばし固まる。
どう返したものかと困った顔をしていたら、おばちゃんが助け舟を出してくれた。
「だからってねえアンタ、限度ってもんがあるよ。他の子には了承とったのかい?」
それはそうだ。
ここにある団子は五十本ばかし。小平太を含め他の人間の取り分がないのだ。
もちろん、代金を払った文次郎の取り分も。
「ん?あいつらにほへとちゃんにあげるんだって言ったら、逆に『行ってこい』って送り出されたぞ」
文次郎には断ってないけどな!
と明らかに反対意見を有耶無耶にした小平太の言葉に、ほへとはおばちゃんと顔を見合わせる。
(どうしよう・・・。この団子の山・・・)
目の前の甘い山に首を捻っていると、戸口の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「お団子の匂いがする~」
「え?本当?・・・私にはわかんないなあ」
「無理無理、しんべヱの鼻だから出来る芸当だぜ」
その声に、丁度良い子達が来たわ。とほへとは戸口に向かって微笑んだ。