第二章<日常編>
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ほへとちゃん!ただいまー!!」
「ひゃっ!?」
26
「・・・なんだ小平太くんですか。ああ、吃驚した。・・・おかえりなさい」
食堂の裏手口で野菜の屑を処理していたほへとのところに、委員会から帰って来た格好そのままに小平太がやってきた。
「今日は終わるの早かったんですね。もっと遅いと思ってましたよ」
「戻りは全速力で駆けて来たからな!」
・・・全速力?
確か出掛けに下級生には無理はさせないでほしいと言ったような気がするのだが。
全く悪びれない様子の小平太に、困ったような呆れたような顔をして、無茶させないようにって言ったのに。と返すと、あいつらなら大丈夫だ!体育委員だからな!と見当外れな答えが返ってきた。
相変わらず話の根本的なところが噛み合ってない気がするなあとほへとは思ったものの、ここ最近の小平太はほへとの目から見ても何だかぼうっとしていたような気がしたので、何があったのかは分からないが元気になったようで良かった。と思った。
何だか小平太の笑顔を見るのでさえも久しぶりな気がする。ほんのつい二刻前にも会ったというのに、雰囲気さえも違うような気さえする。
改めて、何か用事でしょうか?と問うと、ほへとちゃんに会いに来た!と平然と答える小平太。
その一年は組の生徒のような答えに、思わずふふ。と声を出して笑ってしまった。
ふと小平太の顔についている土が目に付く。それを指摘すれば「え、どこ?」と自身の手の甲でごしごしと顔を拭う小平太。(言ってしまえば全身汚れているのだが)
その様子が余りに子供っぽく、何となしに見かねたほへとは「違います違います。…ここ」と、徐に小平太の頬にすっと手を伸ばした。
「え」
ほへとのその行動に、小平太は元々の大きな目を更に見開いた。
ほんの一瞬、沈黙が走る。
「あ、ごめんなさい。つい」
あまりにも汚れてたものだから。
一瞬の静寂に、小平太が嫌悪したものだと思ったほへとは苦笑しながら、ごめんなさいね。と手を引っ込めた。
ほへととは裏腹に小平太は内心酷く動揺してしまっていた。自分でも驚く程に鼓動が早くなる。忍者失格かもしれない。(しかし表情は普通にすぎる顔だった)
二、三度瞬きをした後、急に思い出したかのように小平太は自身の懐からある物を取り出した。
ほへとの目の前が青紫色に染まる。
「これ土産」
目の焦点に会わないほど眼前に突き出された物。
ほへとがそれを手にとってきちんとした焦点で見てみれば、それは一本の桔梗の花だった。
少し萎れているものの、まだかすかに山の凛とした空気を纏っている。
「あ、すまん。懐に入れてたから」
「ううん。ありがとうございます。大丈夫ですよこれくらいは水に差せば」
「・・・ほへとちゃん、この花好き?」
「ええ。一番好きかもしれません」
「そうか!それなら良かった!その花見たら、ほへとちゃんによく似合いそうだと思ったんだ」
その少し萎れてしまった花を目を細めて眺めるほへと。実際に桔梗のその花はほへとの雰囲気にぴったりだった。
しかしそのほへとの表情は、嬉しい。というよりも、どこかほんの少しだけ憂いを帯びたような顔だった。
そう、ほんの少しだけ。
「ほへとちゃん?」
「っううん。ごめんなさいなんでもないです。久しぶりに見た桔梗の花でしたから。・・・それにしても今日はお土産をたくさん貰う日ですね」
「え?たくさん?」
「たくさんっていうと語弊がありますけど。今日ね、きり丸くんからお土産でお饅頭貰ったんですよ。信じられる?」
楽しそうに話すどケチな後輩の話題。
元々の代金がほへとの物だったということを加味しても確かに信じられなかった。
しかし、それ以上に小平太が思ったことは、
・・・面白くない。
だった。
そして小平太の脳裏にピーンと何かが閃いた。
「ほへとちゃん!」
「はい?」
「団子好き?」
へ?
目の前で真剣に問いかける小平太の迫力に、「好き・・・ですが」と答えると、「わかった!」とやたら力の篭った声で小平太は言った。何がわかったのか。
「実は来週町で実習があるんだ。私たくさん団子買ってくるな!饅頭でもいいぞ」
「え?あ、違うんですよ小平太くん。そういう意味で言ったんじゃ・・・。別に買ってきて欲しいって言ってるわけでは」
「買ってくるから!」
「いや、ですから」
「好きなんだよね?」
「そりゃあ好きか嫌いかって言われたら好きですけど・・・」
「楽しみにしててくれ!」
「えーと・・・・・・・あー・・・・・・はい」
勢いに押し切られたほへとの言葉に満足そうな小平太。
「私は風呂入ってくる!」
そう言って笑顔のまま颯爽と消えていった。
どれくらい買ってくるのだろう。あまりにも多く買いそうだったら長次くんに牽制して貰いましょう・・・。そう考えたほへとだった。
手の中の桔梗が涼やかに揺れた。
「ひゃっ!?」
26
「・・・なんだ小平太くんですか。ああ、吃驚した。・・・おかえりなさい」
食堂の裏手口で野菜の屑を処理していたほへとのところに、委員会から帰って来た格好そのままに小平太がやってきた。
「今日は終わるの早かったんですね。もっと遅いと思ってましたよ」
「戻りは全速力で駆けて来たからな!」
・・・全速力?
確か出掛けに下級生には無理はさせないでほしいと言ったような気がするのだが。
全く悪びれない様子の小平太に、困ったような呆れたような顔をして、無茶させないようにって言ったのに。と返すと、あいつらなら大丈夫だ!体育委員だからな!と見当外れな答えが返ってきた。
相変わらず話の根本的なところが噛み合ってない気がするなあとほへとは思ったものの、ここ最近の小平太はほへとの目から見ても何だかぼうっとしていたような気がしたので、何があったのかは分からないが元気になったようで良かった。と思った。
何だか小平太の笑顔を見るのでさえも久しぶりな気がする。ほんのつい二刻前にも会ったというのに、雰囲気さえも違うような気さえする。
改めて、何か用事でしょうか?と問うと、ほへとちゃんに会いに来た!と平然と答える小平太。
その一年は組の生徒のような答えに、思わずふふ。と声を出して笑ってしまった。
ふと小平太の顔についている土が目に付く。それを指摘すれば「え、どこ?」と自身の手の甲でごしごしと顔を拭う小平太。(言ってしまえば全身汚れているのだが)
その様子が余りに子供っぽく、何となしに見かねたほへとは「違います違います。…ここ」と、徐に小平太の頬にすっと手を伸ばした。
「え」
ほへとのその行動に、小平太は元々の大きな目を更に見開いた。
ほんの一瞬、沈黙が走る。
「あ、ごめんなさい。つい」
あまりにも汚れてたものだから。
一瞬の静寂に、小平太が嫌悪したものだと思ったほへとは苦笑しながら、ごめんなさいね。と手を引っ込めた。
ほへととは裏腹に小平太は内心酷く動揺してしまっていた。自分でも驚く程に鼓動が早くなる。忍者失格かもしれない。(しかし表情は普通にすぎる顔だった)
二、三度瞬きをした後、急に思い出したかのように小平太は自身の懐からある物を取り出した。
ほへとの目の前が青紫色に染まる。
「これ土産」
目の焦点に会わないほど眼前に突き出された物。
ほへとがそれを手にとってきちんとした焦点で見てみれば、それは一本の桔梗の花だった。
少し萎れているものの、まだかすかに山の凛とした空気を纏っている。
「あ、すまん。懐に入れてたから」
「ううん。ありがとうございます。大丈夫ですよこれくらいは水に差せば」
「・・・ほへとちゃん、この花好き?」
「ええ。一番好きかもしれません」
「そうか!それなら良かった!その花見たら、ほへとちゃんによく似合いそうだと思ったんだ」
その少し萎れてしまった花を目を細めて眺めるほへと。実際に桔梗のその花はほへとの雰囲気にぴったりだった。
しかしそのほへとの表情は、嬉しい。というよりも、どこかほんの少しだけ憂いを帯びたような顔だった。
そう、ほんの少しだけ。
「ほへとちゃん?」
「っううん。ごめんなさいなんでもないです。久しぶりに見た桔梗の花でしたから。・・・それにしても今日はお土産をたくさん貰う日ですね」
「え?たくさん?」
「たくさんっていうと語弊がありますけど。今日ね、きり丸くんからお土産でお饅頭貰ったんですよ。信じられる?」
楽しそうに話すどケチな後輩の話題。
元々の代金がほへとの物だったということを加味しても確かに信じられなかった。
しかし、それ以上に小平太が思ったことは、
・・・面白くない。
だった。
そして小平太の脳裏にピーンと何かが閃いた。
「ほへとちゃん!」
「はい?」
「団子好き?」
へ?
目の前で真剣に問いかける小平太の迫力に、「好き・・・ですが」と答えると、「わかった!」とやたら力の篭った声で小平太は言った。何がわかったのか。
「実は来週町で実習があるんだ。私たくさん団子買ってくるな!饅頭でもいいぞ」
「え?あ、違うんですよ小平太くん。そういう意味で言ったんじゃ・・・。別に買ってきて欲しいって言ってるわけでは」
「買ってくるから!」
「いや、ですから」
「好きなんだよね?」
「そりゃあ好きか嫌いかって言われたら好きですけど・・・」
「楽しみにしててくれ!」
「えーと・・・・・・・あー・・・・・・はい」
勢いに押し切られたほへとの言葉に満足そうな小平太。
「私は風呂入ってくる!」
そう言って笑顔のまま颯爽と消えていった。
どれくらい買ってくるのだろう。あまりにも多く買いそうだったら長次くんに牽制して貰いましょう・・・。そう考えたほへとだった。
手の中の桔梗が涼やかに揺れた。