第二章<日常編>
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あの小平太の何ともいえない顔と来たら・・・。
「遅かったな仙蔵。・・・って何ニヤニヤしてんだ」
「おや。いたのか文次郎。てっきりまだ鍛錬しているものだと」
無遠慮に障子を開けると文次郎が布団から体を半分起き上がらせてこちらを見る。
「何言ってんだ。今何の刻だと思ってる。何かあったのか?」
「いや。特に何も。・・・ただの世間話だ」
「ただの世間話で長次の部屋にはいかねえだろ。何企んでんだ?」
鍛錬の帰り道にろ組の長屋の前でも通ったのだろう。
さすが学園一ギンギンに忍者していると言われるだけの男である。存外に目敏い。
「だから特に何も無い。長話になっただけだ。まあ、珍しいことではあるがな」
「今度の予算委員会で徒党を組んで何かやるとかの相談じゃあねえよな?」
文次郎のその言葉に、思わずクッと笑いが漏れた。
「なんだよ?」
「それはいいな。今度話を持ちかけてみるか」
「お前な・・・」
軽く狼狽する文次郎をそのままに布団に潜り込む。明日の朝も早い。
「おい、話の途中だろうが」
「うるさい文次郎。私は眠いんだ。寝かせろ」
「・・・ああそうかい」
不貞腐れるような、諦めたような声で文次郎はまた布団に横になった。
この手の話は長引かせないに限る。大体小平太の話を文次郎にしたら忍の三禁がどうのこうの。と長い話になるに違いない。
(それにしても・・・あの小平太がな・・・)
思い出すだに笑いがこみ上げてくる。
似合わない。というと失礼だが、あんな風に迷っている友人を見るのは初めてで、その様が本当に珍しく面白く感じてしまう。他人の不幸は蜜の味というが、心境はそれに近い。
あのいろいろな意味で真っ直ぐな男が煮え切らない態度をとるなんて。
文次郎も恋をすれば少しは変わるんだろうか。
衝立を隔てた場所にいる頭の固い男が迷う様子を思い浮かべたらまた笑いが込み上げて来た。
右往左往する文次郎なぞ見てるだけで面白すぎる。
まあ、文次郎の相手になる娘は、よほどの物好きか、よほどの強情じゃなければ務まらないだろうがな。
「・・・クッ」
「うるせえ仙蔵!一人で笑ってんじゃねえ気色悪ぃ」
おっと。
衝立の向こうで文次郎が怒鳴った。
(卒業するまでに文次郎の懸想話は聞けそうにないな・・・)
小平太はこれからどうするだろうか。どう動くのかが見ものだ。
聞けば噂ではほへとさんと利吉さんのお見合い話まで持ち上がっているらしい。
なんとも面白そうな話ではないか。
(しばらくは高みの見物といこうか)
長い長い夜はそうして瞼を閉じた。
「遅かったな仙蔵。・・・って何ニヤニヤしてんだ」
「おや。いたのか文次郎。てっきりまだ鍛錬しているものだと」
無遠慮に障子を開けると文次郎が布団から体を半分起き上がらせてこちらを見る。
「何言ってんだ。今何の刻だと思ってる。何かあったのか?」
「いや。特に何も。・・・ただの世間話だ」
「ただの世間話で長次の部屋にはいかねえだろ。何企んでんだ?」
鍛錬の帰り道にろ組の長屋の前でも通ったのだろう。
さすが学園一ギンギンに忍者していると言われるだけの男である。存外に目敏い。
「だから特に何も無い。長話になっただけだ。まあ、珍しいことではあるがな」
「今度の予算委員会で徒党を組んで何かやるとかの相談じゃあねえよな?」
文次郎のその言葉に、思わずクッと笑いが漏れた。
「なんだよ?」
「それはいいな。今度話を持ちかけてみるか」
「お前な・・・」
軽く狼狽する文次郎をそのままに布団に潜り込む。明日の朝も早い。
「おい、話の途中だろうが」
「うるさい文次郎。私は眠いんだ。寝かせろ」
「・・・ああそうかい」
不貞腐れるような、諦めたような声で文次郎はまた布団に横になった。
この手の話は長引かせないに限る。大体小平太の話を文次郎にしたら忍の三禁がどうのこうの。と長い話になるに違いない。
(それにしても・・・あの小平太がな・・・)
思い出すだに笑いがこみ上げてくる。
似合わない。というと失礼だが、あんな風に迷っている友人を見るのは初めてで、その様が本当に珍しく面白く感じてしまう。他人の不幸は蜜の味というが、心境はそれに近い。
あのいろいろな意味で真っ直ぐな男が煮え切らない態度をとるなんて。
文次郎も恋をすれば少しは変わるんだろうか。
衝立を隔てた場所にいる頭の固い男が迷う様子を思い浮かべたらまた笑いが込み上げて来た。
右往左往する文次郎なぞ見てるだけで面白すぎる。
まあ、文次郎の相手になる娘は、よほどの物好きか、よほどの強情じゃなければ務まらないだろうがな。
「・・・クッ」
「うるせえ仙蔵!一人で笑ってんじゃねえ気色悪ぃ」
おっと。
衝立の向こうで文次郎が怒鳴った。
(卒業するまでに文次郎の懸想話は聞けそうにないな・・・)
小平太はこれからどうするだろうか。どう動くのかが見ものだ。
聞けば噂ではほへとさんと利吉さんのお見合い話まで持ち上がっているらしい。
なんとも面白そうな話ではないか。
(しばらくは高みの見物といこうか)
長い長い夜はそうして瞼を閉じた。