第二章<日常編>
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「「ほへとさん!」」
「どうしたの?乱太郎くん。きり丸くん。そんなに焦らなくても夕飯は逃げませんよ?」
突如食堂にやってきた乱太郎ときり丸を目の前に、ほへとはいつものように夕飯の膳を出そうとすると、二人は「そんなことより!」と言ったような風体で人目もはばからず大声で言った。
「「利吉さんと夏の終わりに結婚して、秋には忍術学園からいなくなっちゃうって本当ですか!?」」
ガン。
鈍器で殴られたみたいな衝撃。ほへとは思わずご飯を床にばら撒きそうなほどつんのめった。
(ど、どこからその話が・・・)
まあ、話が漏れたのは別にいい。
それよりも、話が具体的に飛躍しすぎておりませんか。
19
その二人の言葉を聞いた食堂にいた人間全員がほへとの方向を見る。
おばちゃんも例に漏れず、ほへとと乱太郎ときり丸。3人の顔を順番に見て目をぱちぱちさせた。
「ほへとちゃん、アンタいつの間に利吉くんとそんな仲になったの?」
「誤解ですおばちゃん!!」
必死に声をあげるが、食堂の中はなおもざわざわと妙な雰囲気が漂っている。
何故あの長屋でのことが噂になっているのだろうか。
「え?違うんですか?だって小松田さんが中庭で山田先生とほへとさんがそんな会話してるのを聞いたって・・・」
「俺だって。トモミちゃんとユキちゃんが廊下でそんな噂してるの聞きましたよ!ほへとさんが『利吉さんとなら結婚してもいいかなあ』って言ってたって」
小松田さん・・・、トモミちゃん・・・、ユキちゃん・・・。
発端はあなた達ですか・・・・・・。
くノたまの長屋での話。
下級生のくノたまが聞いてたとしても不思議ではないけれど、まさか中庭での話を小松田さんが聞いてたとは盲点だった。
しかも話に尾ひれが付いている。なんという具体的すぎる脚色。ほへとはがっくりと肩を落とした。
「・・・それは完全な誤解ですよ二人とも。結婚だなんて・・・。私、利吉さんと会ったこともないんですから」
「えー?そうなんですか?」
「まあ小松田さんとくノたまの噂話だもんなあ・・・」
「そう言われればそうだよねえ・・・」
その言葉に食堂にいたみんなは納得してまた目の前の膳に視線を戻した。
「そうよ。そんな飛躍した話。ただ山田先生が利吉さんと見合いしないか、って言っただけ」
「「え!?利吉さんとお見合い!!??」」
ドガッッシャーン。
一旦はまたほへとに視線をやった皆だが、突然の大きな音に皆視線がそっちに引っ張られる。
「ちょ!小平太何やってんのさ」
「あら大変」
「す、すまん伊作。ちょっと手が滑った」
見れば小平太が膳ごと食器を床に落とし、伊作の足元と床がなんだか悲惨なことになっていた。
食べ終わった皿だったことが不幸中の幸いだ。ただしっかり伊作の足は醤油臭くなった。
「この上に割れた食器置いて。乱太郎くん、箒もってきてくれる?」
「あ、はい」
広げられた手ぬぐいに割れた茶碗を置いていくほへと。
その姿をしばし呆然と小平太は見つめた。
「・・・今度は気をつけてくださいね。大丈夫?」
「ああ、それは大丈夫だが。…あのさほへとちゃん。さっきの、利吉さんと見合いするって話・・・本当か?」
「え?ええ、でもまだ決まったわけじゃないですよ?」
「そっか。うん・・・そう、だよな」
うん。
と自分に言い聞かせるように言う小平太。
(ほへとちゃんと、利吉さんが・・・見合い・・・。上手くいけば・・・そのまま婚約?…結納?)
何だか分からないが頭の中がぐるぐる回る。
「利吉さんとお見合いするくらいだったら土井先生とお見合いしてくださいよ!」
「え、きり丸くん?」
見ればきり丸がほへとの背中にひっついてそんな事を言っていた。
「土井先生いい年なのに全然いい人いなくて・・・。俺、ほへとさんが土井先生のお嫁さんになってくれたらもっとバイトできるし。・・・先生、子守もおしめ換えるのも上手いですよ?」
「こらこらきり丸!!何言ってるんだ全く!・・・毎度すいませんねほへとさん・・・・・・」
調度よく食堂に入ってきた土井半助がきり丸の言葉を聞いて、慌ててきり丸をほへとから引っぺがす。
その様子にクスクスと笑うほへと。
「大丈夫ですよ。気になさらないでください土井先生。今日の煮しめ練り物ですから、残さずちゃんと食べてくださいね」
「え・・・。す、すいません練り物はちょっと・・・」
赤くなる風でもなく、慣れた様子で土井半助と会話をするほへと。
その話し方が、あまりに不自然なくかみ合う様子に、小平太は「ほへとちゃんは大人の女の人なんだ」と今更思った。
言われ慣れてるのだ。この手の話は。
そう言われればそうだ。ほへとは十九。それこそ本当にいい歳で。
行かず後家になる。なんて口さががないものはそう言い始めるだろう。
彼女が嫁に行く気がないのか。男運が悪かったのか。それともどちらもか。
話題の端にも上らない自分の年齢がいたく幼く思えた。(これでも元服までもうすぐなのに)
(なんで、こんな)
なんで私はこんな切なくなるんだろう。
なんであれしきのことで動揺したんだ。別に、里でもよくある話じゃないか。
年頃の男女が見合いをして、夫婦になって、子を成して。
よくある、話だよな?
食堂の喧騒の中、小平太は自分一人だけが孤立したような錯覚を覚えた。
「どうしたの?乱太郎くん。きり丸くん。そんなに焦らなくても夕飯は逃げませんよ?」
突如食堂にやってきた乱太郎ときり丸を目の前に、ほへとはいつものように夕飯の膳を出そうとすると、二人は「そんなことより!」と言ったような風体で人目もはばからず大声で言った。
「「利吉さんと夏の終わりに結婚して、秋には忍術学園からいなくなっちゃうって本当ですか!?」」
ガン。
鈍器で殴られたみたいな衝撃。ほへとは思わずご飯を床にばら撒きそうなほどつんのめった。
(ど、どこからその話が・・・)
まあ、話が漏れたのは別にいい。
それよりも、話が具体的に飛躍しすぎておりませんか。
19
その二人の言葉を聞いた食堂にいた人間全員がほへとの方向を見る。
おばちゃんも例に漏れず、ほへとと乱太郎ときり丸。3人の顔を順番に見て目をぱちぱちさせた。
「ほへとちゃん、アンタいつの間に利吉くんとそんな仲になったの?」
「誤解ですおばちゃん!!」
必死に声をあげるが、食堂の中はなおもざわざわと妙な雰囲気が漂っている。
何故あの長屋でのことが噂になっているのだろうか。
「え?違うんですか?だって小松田さんが中庭で山田先生とほへとさんがそんな会話してるのを聞いたって・・・」
「俺だって。トモミちゃんとユキちゃんが廊下でそんな噂してるの聞きましたよ!ほへとさんが『利吉さんとなら結婚してもいいかなあ』って言ってたって」
小松田さん・・・、トモミちゃん・・・、ユキちゃん・・・。
発端はあなた達ですか・・・・・・。
くノたまの長屋での話。
下級生のくノたまが聞いてたとしても不思議ではないけれど、まさか中庭での話を小松田さんが聞いてたとは盲点だった。
しかも話に尾ひれが付いている。なんという具体的すぎる脚色。ほへとはがっくりと肩を落とした。
「・・・それは完全な誤解ですよ二人とも。結婚だなんて・・・。私、利吉さんと会ったこともないんですから」
「えー?そうなんですか?」
「まあ小松田さんとくノたまの噂話だもんなあ・・・」
「そう言われればそうだよねえ・・・」
その言葉に食堂にいたみんなは納得してまた目の前の膳に視線を戻した。
「そうよ。そんな飛躍した話。ただ山田先生が利吉さんと見合いしないか、って言っただけ」
「「え!?利吉さんとお見合い!!??」」
ドガッッシャーン。
一旦はまたほへとに視線をやった皆だが、突然の大きな音に皆視線がそっちに引っ張られる。
「ちょ!小平太何やってんのさ」
「あら大変」
「す、すまん伊作。ちょっと手が滑った」
見れば小平太が膳ごと食器を床に落とし、伊作の足元と床がなんだか悲惨なことになっていた。
食べ終わった皿だったことが不幸中の幸いだ。ただしっかり伊作の足は醤油臭くなった。
「この上に割れた食器置いて。乱太郎くん、箒もってきてくれる?」
「あ、はい」
広げられた手ぬぐいに割れた茶碗を置いていくほへと。
その姿をしばし呆然と小平太は見つめた。
「・・・今度は気をつけてくださいね。大丈夫?」
「ああ、それは大丈夫だが。…あのさほへとちゃん。さっきの、利吉さんと見合いするって話・・・本当か?」
「え?ええ、でもまだ決まったわけじゃないですよ?」
「そっか。うん・・・そう、だよな」
うん。
と自分に言い聞かせるように言う小平太。
(ほへとちゃんと、利吉さんが・・・見合い・・・。上手くいけば・・・そのまま婚約?…結納?)
何だか分からないが頭の中がぐるぐる回る。
「利吉さんとお見合いするくらいだったら土井先生とお見合いしてくださいよ!」
「え、きり丸くん?」
見ればきり丸がほへとの背中にひっついてそんな事を言っていた。
「土井先生いい年なのに全然いい人いなくて・・・。俺、ほへとさんが土井先生のお嫁さんになってくれたらもっとバイトできるし。・・・先生、子守もおしめ換えるのも上手いですよ?」
「こらこらきり丸!!何言ってるんだ全く!・・・毎度すいませんねほへとさん・・・・・・」
調度よく食堂に入ってきた土井半助がきり丸の言葉を聞いて、慌ててきり丸をほへとから引っぺがす。
その様子にクスクスと笑うほへと。
「大丈夫ですよ。気になさらないでください土井先生。今日の煮しめ練り物ですから、残さずちゃんと食べてくださいね」
「え・・・。す、すいません練り物はちょっと・・・」
赤くなる風でもなく、慣れた様子で土井半助と会話をするほへと。
その話し方が、あまりに不自然なくかみ合う様子に、小平太は「ほへとちゃんは大人の女の人なんだ」と今更思った。
言われ慣れてるのだ。この手の話は。
そう言われればそうだ。ほへとは十九。それこそ本当にいい歳で。
行かず後家になる。なんて口さががないものはそう言い始めるだろう。
彼女が嫁に行く気がないのか。男運が悪かったのか。それともどちらもか。
話題の端にも上らない自分の年齢がいたく幼く思えた。(これでも元服までもうすぐなのに)
(なんで、こんな)
なんで私はこんな切なくなるんだろう。
なんであれしきのことで動揺したんだ。別に、里でもよくある話じゃないか。
年頃の男女が見合いをして、夫婦になって、子を成して。
よくある、話だよな?
食堂の喧騒の中、小平太は自分一人だけが孤立したような錯覚を覚えた。