第二章<日常編>
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「ほへとさん!ほへとさんは、どういう人が好みですか?」
「やっぱり土井先生?」
「えー!個人的に土井先生よりは、野村先生の方がほへとさんに似合うと思うけどなあー」
「ここはいっそ小松田さんを推すべきでしょ」
「いや〜それはないわ。じゃあ私は戸部先生を推すわ」
「えー?」
女の子ってこういう恋愛話大好きだなあ・・・。
ほへとはみんなの話をうんうん頷きながら思った。
18
くノたま上級生が集まったほへとの長屋部屋。
数ヶ月経ち、すっかり仲良くなったくノたま達と恋の話。あーだこーだと恋愛話に花を咲かせるのを聞いているのはとても楽しい。
あのくノたまの先輩は蜂屋先輩といい雰囲気だの、実は中在家先輩には思い人がいるらしいだの、誰々には許婚がいて文を交わしているらしいだの。
本当なのか嘘なのか。およそ見当が付かない(相当脚色が入ってると思われる)紅色に染まった恋の話。
いつの間にかその話はほへとの話にすり替わり、誰がほへとに相応しいと思うか。という話になっていた。
「もう!アンタ否定ばっかりじゃないの。そういう百子は誰がほへとさんに相応しいと思うわけよ?」
百子と呼ばれくノたまは、ふふふ。と不適な笑みを浮かべたかと思うと自信満々に言った。
「もちろん!私は断然利吉さんをオススメするわ!」
手に拳を握って高らかに言った言葉に、皆目を輝かせる。
「そうよ!利吉さんだったらほへとさんとも歳が近いし」
「百子、冴えてるじゃない!私も利吉さんを断然推すわ!」
「どう思いますほへとさん?」
そう言ってみんなほへとの顔を覗き込む。
覗き込まれたほへとは「誰?」と言った表情でみんなを見た。
「りきちさん・・・って・・・」
「あれ?ほへとさん知らない?山田利吉さん。山田先生の一人息子さんでー」
「フリーのプロの忍者で、しかも火縄銃の名手!」
「おまけに顔立ちもきりっと格好良くて・・・」
「変装術の腕前だって凄くって。しかも優しくて・・・。この前も火縄銃の打ち方教えてくれたりしてー・・・」
本当、格好いいんですよ!!
きゃー。と黄色い声を咲かすくノたま上級生達。
それに思わず笑いがこみ上げてくる。本当に女の子ってこういう話が好きだなあ。
(山田利吉さん・・・か)
ほへとは話に出てきた”利吉さん”のことを思案する。
全員が全員満場一致で興奮しているところを見ると、相当色男らしい。ここまで推薦されるとさすがのほへとも興味が沸いてくる。
実は名前だけは知っていたのだ。
しかも実の親、山田伝蔵本人の口から。
それは、ほんのついさっき。一刻ほど前のこと。
『ほへとさん。アンタうちの息子と見合いする気ない?』
『はい?どうしたんですか山田先生。藪から棒に』
『いやね。実はわしの息子も結構いい年頃でね・・・』
『はあ』
くノ一教室にある自室に戻る前、中庭の掃除をしていた時に山田伝蔵に声をかけられた。
手裏剣の的を片付けておいてくれ。なんていう話かと思ったら、まさかの見合い話でびっくりしたのを覚えている。
『フリーのプロ忍者やってるんだが、いつまでもふらふらしてたんじゃなあ・・・』
『はあ。それは親御さんとしては・・・まあ、お気持ちもお察ししますけれど』
『そう!そうでしょう?この間も・・・(以下略)・・・というわけでほへとさん、アンタうちの息子の嫁になる気ない?歳も近いし』
『はあ・・・って、ええ?本気で言ってるんですか!?』
山田先生は何故かよくわからないけど、相当私を気に入ってくださっているよう。
当初は土井先生を薦められたような気がするけれど、心境の変化があったのか自分の息子の嫁にしたいと思ってくれているようだ。
たしかに悪い話ではない。山田先生も私の身を案じて言ってくれているのだろうし(半分以上は息子の身を案じているんだろうけど)、身寄りのない私なんかを嫁に推薦してくれているなんて。
逆に感謝しないといけないくらいだろう。
『で、でも・・・本人の意向も聞いてみない事には…』
『ああ見えてあいつは売れっ子でな。滅多に顔を見せん。よし、今度学園に来たときにほへとさんの話をしてみよう。何、わしが気に入ったんだ。あいつがアンタを気に入らない筈はない。・・・じゃあほへとさん楽しみにな。あ、わしはこれから会議があるんでな』
『ちょ!山田先生・・・!』
利吉が来たときは呼ぶから待ってなさいよ。とそれだけ最後に言っていなくなった。
後には私とかき集めた葉っぱだけが残された。
***
「・・・とまあ、実はさっきこんな話があったわけなんだけど。まさか皆の話にも出てくるとは・・・」
「ほへとさん、それってもしかして・・・」
「今度利吉さんが来たときお見合いするってこと?」
「それで上手くいけば利吉さんと結婚?」
「えー?おめでとうございます!!」
いやいやいやいや。おめでとうございます。じゃないでしょ。
気が早い!気が早いよみんな!目を輝かせないでください!
私が何を言っても止まることのない私と利吉さんの結婚話(仮定)。
楽しげに話すみんなに苦笑いしつつ、『まあ、ただの仮定の話だし・・・』と私もつい悪ノリして、
「そんなにいい人だったら、結婚してもいいかもしれませんね」
なんて軽い気持ちで言ってしまったんだ。
それが、まさかあんなことになるとは・・・。
このときの私は知る由もなかった。
「やっぱり土井先生?」
「えー!個人的に土井先生よりは、野村先生の方がほへとさんに似合うと思うけどなあー」
「ここはいっそ小松田さんを推すべきでしょ」
「いや〜それはないわ。じゃあ私は戸部先生を推すわ」
「えー?」
女の子ってこういう恋愛話大好きだなあ・・・。
ほへとはみんなの話をうんうん頷きながら思った。
18
くノたま上級生が集まったほへとの長屋部屋。
数ヶ月経ち、すっかり仲良くなったくノたま達と恋の話。あーだこーだと恋愛話に花を咲かせるのを聞いているのはとても楽しい。
あのくノたまの先輩は蜂屋先輩といい雰囲気だの、実は中在家先輩には思い人がいるらしいだの、誰々には許婚がいて文を交わしているらしいだの。
本当なのか嘘なのか。およそ見当が付かない(相当脚色が入ってると思われる)紅色に染まった恋の話。
いつの間にかその話はほへとの話にすり替わり、誰がほへとに相応しいと思うか。という話になっていた。
「もう!アンタ否定ばっかりじゃないの。そういう百子は誰がほへとさんに相応しいと思うわけよ?」
百子と呼ばれくノたまは、ふふふ。と不適な笑みを浮かべたかと思うと自信満々に言った。
「もちろん!私は断然利吉さんをオススメするわ!」
手に拳を握って高らかに言った言葉に、皆目を輝かせる。
「そうよ!利吉さんだったらほへとさんとも歳が近いし」
「百子、冴えてるじゃない!私も利吉さんを断然推すわ!」
「どう思いますほへとさん?」
そう言ってみんなほへとの顔を覗き込む。
覗き込まれたほへとは「誰?」と言った表情でみんなを見た。
「りきちさん・・・って・・・」
「あれ?ほへとさん知らない?山田利吉さん。山田先生の一人息子さんでー」
「フリーのプロの忍者で、しかも火縄銃の名手!」
「おまけに顔立ちもきりっと格好良くて・・・」
「変装術の腕前だって凄くって。しかも優しくて・・・。この前も火縄銃の打ち方教えてくれたりしてー・・・」
本当、格好いいんですよ!!
きゃー。と黄色い声を咲かすくノたま上級生達。
それに思わず笑いがこみ上げてくる。本当に女の子ってこういう話が好きだなあ。
(山田利吉さん・・・か)
ほへとは話に出てきた”利吉さん”のことを思案する。
全員が全員満場一致で興奮しているところを見ると、相当色男らしい。ここまで推薦されるとさすがのほへとも興味が沸いてくる。
実は名前だけは知っていたのだ。
しかも実の親、山田伝蔵本人の口から。
それは、ほんのついさっき。一刻ほど前のこと。
『ほへとさん。アンタうちの息子と見合いする気ない?』
『はい?どうしたんですか山田先生。藪から棒に』
『いやね。実はわしの息子も結構いい年頃でね・・・』
『はあ』
くノ一教室にある自室に戻る前、中庭の掃除をしていた時に山田伝蔵に声をかけられた。
手裏剣の的を片付けておいてくれ。なんていう話かと思ったら、まさかの見合い話でびっくりしたのを覚えている。
『フリーのプロ忍者やってるんだが、いつまでもふらふらしてたんじゃなあ・・・』
『はあ。それは親御さんとしては・・・まあ、お気持ちもお察ししますけれど』
『そう!そうでしょう?この間も・・・(以下略)・・・というわけでほへとさん、アンタうちの息子の嫁になる気ない?歳も近いし』
『はあ・・・って、ええ?本気で言ってるんですか!?』
山田先生は何故かよくわからないけど、相当私を気に入ってくださっているよう。
当初は土井先生を薦められたような気がするけれど、心境の変化があったのか自分の息子の嫁にしたいと思ってくれているようだ。
たしかに悪い話ではない。山田先生も私の身を案じて言ってくれているのだろうし(半分以上は息子の身を案じているんだろうけど)、身寄りのない私なんかを嫁に推薦してくれているなんて。
逆に感謝しないといけないくらいだろう。
『で、でも・・・本人の意向も聞いてみない事には…』
『ああ見えてあいつは売れっ子でな。滅多に顔を見せん。よし、今度学園に来たときにほへとさんの話をしてみよう。何、わしが気に入ったんだ。あいつがアンタを気に入らない筈はない。・・・じゃあほへとさん楽しみにな。あ、わしはこれから会議があるんでな』
『ちょ!山田先生・・・!』
利吉が来たときは呼ぶから待ってなさいよ。とそれだけ最後に言っていなくなった。
後には私とかき集めた葉っぱだけが残された。
***
「・・・とまあ、実はさっきこんな話があったわけなんだけど。まさか皆の話にも出てくるとは・・・」
「ほへとさん、それってもしかして・・・」
「今度利吉さんが来たときお見合いするってこと?」
「それで上手くいけば利吉さんと結婚?」
「えー?おめでとうございます!!」
いやいやいやいや。おめでとうございます。じゃないでしょ。
気が早い!気が早いよみんな!目を輝かせないでください!
私が何を言っても止まることのない私と利吉さんの結婚話(仮定)。
楽しげに話すみんなに苦笑いしつつ、『まあ、ただの仮定の話だし・・・』と私もつい悪ノリして、
「そんなにいい人だったら、結婚してもいいかもしれませんね」
なんて軽い気持ちで言ってしまったんだ。
それが、まさかあんなことになるとは・・・。
このときの私は知る由もなかった。