第一章<出会い編>
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元気になってるといい。
あの悲しい顔が脳裏に焼きついて離れない。
あの笑顔がちくりと胸のあたりで弾ける。
優しい匂い、暖かい声、小さな肩、流れる細い黒髪、巻きついた白い包帯。
押し殺す慟哭、さざめく嗚咽、愁泣した後姿。
そこから垣間覗き見えた不安と孤独。
気になってさ。
わかんないけど。あの人が気になってしょうがない。
何でだ。
凄く、凄く胸のここんところがさ。うわーってさ。
私は何か悪いもんでも食ったか。
12
「お、いさっくんだ」
「どうしたそんな血相変えて」
七松小平太と食満留三郎は外を必死に走る伊作に問いかけた。
伊作はそれどころではないという声で2人に言った。
「ほへとさんが部屋にいないんだよ!!まだよくなってないのに!あんな体で部屋から出るなんて・・・!ああ、もう!!」
「落ち着けよ伊作。お前が言ってるほへとさんって、今朝先生の話に出た例の?」
「そうだよ!それ以外誰がいるんだよ!」
未だ落ち着かない伊作を宥めつつ、全く怪我人のこととなると・・・。と留三郎は狼狽した。
「ほへとちゃんがいないって、いつから?」
「分からない・・・気づいたらいなくて」
「そっか。じゃあ探さなきゃだな!」
「・・・って、ちょ!小平太!!」
言うが早いか小平太は廊下を飛び出し走っていった。
彼女がどこにいるのかなんて小平太も知らないが、基本は本能的な彼のこと。多分小平太の頭は何も考えてない。ややもすると無意味に塹壕掘り出すかもしれない。
「と、とにかく留もほへとさん探してくれ!見つけたら合図してくれよ!」
伊作はそれだけ言って小平太の後を追った。
留三郎は一人ぽかんとした表情でその場に取り残された。
「探せって、言ったってなあ・・・」
食満留三郎は廊下で一人そうごちた。
***
「いけいけドンドン!!」
「あ、七松先輩!」
「こんにちは~」
当てもなく走っていると、横から声が聞こえた。
小平太は急停止をかけて2人の前に止まる。
「おう乱太郎、しんべヱ。ん?きり丸はどうした?」
いつも一緒だろ?と小平太が聞けば、図書委員会の仕事に行きました!という答えが返ってきた。
「七松先輩は自主練ですか?」
「違う違う。あ、そうだ。お前らほへとちゃん見てないか。部屋にいなくてさ」
最初に見つけたのは乱太郎、きり丸、しんべヱの3人だ。それもあってか、ほへとは特にこの三人と仲が良い。
三人以外の一年は組もほへとの部屋に遊びに行っているようで、そのたびに土井半助が回収しに来るというのは伊作からも聞いていたことだった。
もしかしたらこの二人なら何か知ってるかもと小平太は思い至った。
「ほへとさんですか。今日はまだ見てないですけど・・・」
「もしかして、ほへとさんいなくなっちゃったんですか!?」
「大変だ!どうしよう!」
みんなに知らせなきゃ!!と慌てる二人に、大丈夫だ心配ない。と小平太は言った。
問題の多い一年は組のこと。このままだと話が肥大する恐れがあった。
「多分、散歩だ。ほへとちゃんが急に消えていなくなるわけないだろ?心配しなくていい」
それは二人を宥めるために言った言葉だったが、半分は自分に言った言葉だった。
そう言わないと、小平太も何故だか少し不安だった。
あの涙を見たせいだろうか。人一人にこんなにも自分の心がざわつく理由が分からなかった。
「まあ、もしほへとちゃんを見たら助けてやってくれ。まだあんまり調子よくないみたいだからな」
「「はーい」」
そうして乱太郎としんべヱと別れた小平太に伊作が追いついた。
途中伊作は穴に落ちたのか、装束にはいたるところに土が付いていた。
「また穴に落ちたのか」
「うん・・・さっきちょっとね・・・。ほへとさんも罠とかにかかってないといいけど・・・。ところで乱太郎達から何か聞けた?」
「いや、あいつらも知らないってさ。他の一年は組のやつらにも聞いたら何かわかるかもしれないな」
「そうか・・・。山田先生や土井先生にも聞いてみるよ。ありがとう小平太」
そう言って伊作はその場を後にした。
後にはほへとの部屋で嗅いだものと同じ薬品の臭いがかすかに残った。
「・・・・・・ありがとう。って、別に伊作のために探してるんじゃないぞ私は」
伊作がいなくなった後にぽつりと自身の口をついて出た言葉に、小平太ははっと口を噤む。
・・・ん?
別におかしくないよな。だって伊作は保健委員会だし。怪我人は放っておけない奴だし。いつものことじゃんか。
「変なの」
自分の不可思議さに真面目に首をかしげながら、そのことを大して深く考えずにきり丸がいるであろう図書室に向かうことにした。
最初にほへとを見つけたのはきり丸だ。なんとなくきり丸のところにいるんじゃないかと思えた。
全くの勘だったが、そうと決めたら行ってみるより他はない。
小平太は自身のお決まりの台詞を言いながら大地を蹴った。
「よーし!いけいけドンドン!!!」
あの悲しい顔が脳裏に焼きついて離れない。
あの笑顔がちくりと胸のあたりで弾ける。
優しい匂い、暖かい声、小さな肩、流れる細い黒髪、巻きついた白い包帯。
押し殺す慟哭、さざめく嗚咽、愁泣した後姿。
そこから垣間覗き見えた不安と孤独。
気になってさ。
わかんないけど。あの人が気になってしょうがない。
何でだ。
凄く、凄く胸のここんところがさ。うわーってさ。
私は何か悪いもんでも食ったか。
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「お、いさっくんだ」
「どうしたそんな血相変えて」
七松小平太と食満留三郎は外を必死に走る伊作に問いかけた。
伊作はそれどころではないという声で2人に言った。
「ほへとさんが部屋にいないんだよ!!まだよくなってないのに!あんな体で部屋から出るなんて・・・!ああ、もう!!」
「落ち着けよ伊作。お前が言ってるほへとさんって、今朝先生の話に出た例の?」
「そうだよ!それ以外誰がいるんだよ!」
未だ落ち着かない伊作を宥めつつ、全く怪我人のこととなると・・・。と留三郎は狼狽した。
「ほへとちゃんがいないって、いつから?」
「分からない・・・気づいたらいなくて」
「そっか。じゃあ探さなきゃだな!」
「・・・って、ちょ!小平太!!」
言うが早いか小平太は廊下を飛び出し走っていった。
彼女がどこにいるのかなんて小平太も知らないが、基本は本能的な彼のこと。多分小平太の頭は何も考えてない。ややもすると無意味に塹壕掘り出すかもしれない。
「と、とにかく留もほへとさん探してくれ!見つけたら合図してくれよ!」
伊作はそれだけ言って小平太の後を追った。
留三郎は一人ぽかんとした表情でその場に取り残された。
「探せって、言ったってなあ・・・」
食満留三郎は廊下で一人そうごちた。
***
「いけいけドンドン!!」
「あ、七松先輩!」
「こんにちは~」
当てもなく走っていると、横から声が聞こえた。
小平太は急停止をかけて2人の前に止まる。
「おう乱太郎、しんべヱ。ん?きり丸はどうした?」
いつも一緒だろ?と小平太が聞けば、図書委員会の仕事に行きました!という答えが返ってきた。
「七松先輩は自主練ですか?」
「違う違う。あ、そうだ。お前らほへとちゃん見てないか。部屋にいなくてさ」
最初に見つけたのは乱太郎、きり丸、しんべヱの3人だ。それもあってか、ほへとは特にこの三人と仲が良い。
三人以外の一年は組もほへとの部屋に遊びに行っているようで、そのたびに土井半助が回収しに来るというのは伊作からも聞いていたことだった。
もしかしたらこの二人なら何か知ってるかもと小平太は思い至った。
「ほへとさんですか。今日はまだ見てないですけど・・・」
「もしかして、ほへとさんいなくなっちゃったんですか!?」
「大変だ!どうしよう!」
みんなに知らせなきゃ!!と慌てる二人に、大丈夫だ心配ない。と小平太は言った。
問題の多い一年は組のこと。このままだと話が肥大する恐れがあった。
「多分、散歩だ。ほへとちゃんが急に消えていなくなるわけないだろ?心配しなくていい」
それは二人を宥めるために言った言葉だったが、半分は自分に言った言葉だった。
そう言わないと、小平太も何故だか少し不安だった。
あの涙を見たせいだろうか。人一人にこんなにも自分の心がざわつく理由が分からなかった。
「まあ、もしほへとちゃんを見たら助けてやってくれ。まだあんまり調子よくないみたいだからな」
「「はーい」」
そうして乱太郎としんべヱと別れた小平太に伊作が追いついた。
途中伊作は穴に落ちたのか、装束にはいたるところに土が付いていた。
「また穴に落ちたのか」
「うん・・・さっきちょっとね・・・。ほへとさんも罠とかにかかってないといいけど・・・。ところで乱太郎達から何か聞けた?」
「いや、あいつらも知らないってさ。他の一年は組のやつらにも聞いたら何かわかるかもしれないな」
「そうか・・・。山田先生や土井先生にも聞いてみるよ。ありがとう小平太」
そう言って伊作はその場を後にした。
後にはほへとの部屋で嗅いだものと同じ薬品の臭いがかすかに残った。
「・・・・・・ありがとう。って、別に伊作のために探してるんじゃないぞ私は」
伊作がいなくなった後にぽつりと自身の口をついて出た言葉に、小平太ははっと口を噤む。
・・・ん?
別におかしくないよな。だって伊作は保健委員会だし。怪我人は放っておけない奴だし。いつものことじゃんか。
「変なの」
自分の不可思議さに真面目に首をかしげながら、そのことを大して深く考えずにきり丸がいるであろう図書室に向かうことにした。
最初にほへとを見つけたのはきり丸だ。なんとなくきり丸のところにいるんじゃないかと思えた。
全くの勘だったが、そうと決めたら行ってみるより他はない。
小平太は自身のお決まりの台詞を言いながら大地を蹴った。
「よーし!いけいけドンドン!!!」