つらつら椿
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「手荒なことして悪かった」
「い、いいえ・・・。私の方こそ何も言い返せなくて・・・ごめんなさい・・・」
作法室と呼ばれる場所で、文次郎さん(お仙ちゃんがそう言っていたからそういう名前なんだろう)が私に謝ってきた。
そして私を痛いくらいの眼差しで睨みつけているお仙ちゃん。
きっと私の見っとも無さに呆れているんだろうなあ。自分でも本当に不甲斐無いと思う。一言「違う」ってそう言えば済むことだったのに・・・。
「一言『違う』と言えば済むものを・・・。何でお前はそうなんだ」
「・・・・・・」
たった今自分で思ったことを言わないで欲しい。ますます惨めな気分になるから・・・。
昔から察しが良すぎるのよ。これだからお仙ちゃんは・・・。
うう・・・目が恐い。
05:夏なんて永久に来なければいい
お仙ちゃんの視線に耐え切れなくて、その視線から逃げるように作法室を見回せば、徐に部屋の隅に置いてあった生首(のフィギア)と目が合って、ひっと言ってしまう自分。何だか無性に恥ずかしい。
(何でこんなものが部屋にあるのよ・・・!)
その瞬間目の前の文次郎さんと目が合って、反射的にパッと目を逸らしてしまった。失礼だっただろうか。
恐る恐る顔をあげると、私のその一連の行動がおかしいのか文次郎さんが半分呆れたような声で言った。
「なんだ。仙蔵と似てるのは本当に顔だけなんだな」
そう言って鼻で笑われる。
似てるのは顔だけって・・・。当たり前だ。今更何言ってるのか。
中身もお仙ちゃんと一緒だったらこんなことになってない。腕だって掴まれるような事なかっただろう。
まだ何となく痛む左手首を擦る。
ちらりとお仙ちゃんを見やれば不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。
居た堪れない。
「お仙ちゃん・・・あの・・・」
「・・・お仙ちゃん?仙蔵、お前”お仙ちゃん”って呼ばれてんのか?」
「五月蝿い文次郎。・・・ほへとここではその呼び名で呼ぶな」
「ご、ごめん・・・」
笑いを堪える文次郎さんを軽く流すと、きりっとした瞳で見据えられた。
きっぱりとそんな風に言われたら、私は謝るしかできなくて。
本当に蛇に睨まれた蛙みたいにびくびくしていた。
昔からそうなんだ。
お仙ちゃんと話すとき、怒られるんじゃないか。叱られるんじゃないか。ってそんなことばっかり考えてしまう。今でもそれは変わらないのが情けない。
お仙ちゃんだっていい大人なんだから昔みたいにぞんざいに命令をたきつけたりはしないだろうけど・・・。
私とは違うその強い眼差しが、ずっと私は苦手だった。
「あの・・・お仙ちゃ、・・・仙蔵、荷物のことなんだけど・・・」
「ああ。つい先程受け取った。判を押せばいいのだろう?紙はどこだ?」
差し出した紙に(ああ良かった皺になってない)、お仙ちゃんは完璧に真っ直ぐに判を押した。
そんなところにも完璧さを求めなくてもいいのに・・・。
こういう小さなことからの積み重ねが大事なんだろうか。そうすればお仙ちゃんみたいになれるんだろうか。(苛めっ子にはなりたくないけど)
お仙ちゃんから紙を受け取り、そして母からの手紙を渡す。
この手紙のお陰で私が今回借り出されたみたいなものだ。いっそ燃やしてしまいたい。
お仙ちゃんはその憎き紙にざっと目を通すと、ややあって、ふっと笑みを浮かべて私の方を見た。
嫌な予感。
「夏休みに是非泊まりに来い。と書いてある。顔を見せろ、と」
え?
その言葉は、私にとって死刑宣告と等しかった。
にやりと笑ったその顔。冷や汗がさあっと背中を走った気がした。
何でそんな楽しそうな顔をするんだろう。何でうちの母は手紙を私に預けたんだろう。
ぐるぐると脳内をいろいろな思考が巡る。急に目の前が真っ暗になった。
夏なんて永久に来なければいい。
私はやっぱり手紙は燃やしておくべきだったと後悔した。
「い、いいえ・・・。私の方こそ何も言い返せなくて・・・ごめんなさい・・・」
作法室と呼ばれる場所で、文次郎さん(お仙ちゃんがそう言っていたからそういう名前なんだろう)が私に謝ってきた。
そして私を痛いくらいの眼差しで睨みつけているお仙ちゃん。
きっと私の見っとも無さに呆れているんだろうなあ。自分でも本当に不甲斐無いと思う。一言「違う」ってそう言えば済むことだったのに・・・。
「一言『違う』と言えば済むものを・・・。何でお前はそうなんだ」
「・・・・・・」
たった今自分で思ったことを言わないで欲しい。ますます惨めな気分になるから・・・。
昔から察しが良すぎるのよ。これだからお仙ちゃんは・・・。
うう・・・目が恐い。
05:夏なんて永久に来なければいい
お仙ちゃんの視線に耐え切れなくて、その視線から逃げるように作法室を見回せば、徐に部屋の隅に置いてあった生首(のフィギア)と目が合って、ひっと言ってしまう自分。何だか無性に恥ずかしい。
(何でこんなものが部屋にあるのよ・・・!)
その瞬間目の前の文次郎さんと目が合って、反射的にパッと目を逸らしてしまった。失礼だっただろうか。
恐る恐る顔をあげると、私のその一連の行動がおかしいのか文次郎さんが半分呆れたような声で言った。
「なんだ。仙蔵と似てるのは本当に顔だけなんだな」
そう言って鼻で笑われる。
似てるのは顔だけって・・・。当たり前だ。今更何言ってるのか。
中身もお仙ちゃんと一緒だったらこんなことになってない。腕だって掴まれるような事なかっただろう。
まだ何となく痛む左手首を擦る。
ちらりとお仙ちゃんを見やれば不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。
居た堪れない。
「お仙ちゃん・・・あの・・・」
「・・・お仙ちゃん?仙蔵、お前”お仙ちゃん”って呼ばれてんのか?」
「五月蝿い文次郎。・・・ほへとここではその呼び名で呼ぶな」
「ご、ごめん・・・」
笑いを堪える文次郎さんを軽く流すと、きりっとした瞳で見据えられた。
きっぱりとそんな風に言われたら、私は謝るしかできなくて。
本当に蛇に睨まれた蛙みたいにびくびくしていた。
昔からそうなんだ。
お仙ちゃんと話すとき、怒られるんじゃないか。叱られるんじゃないか。ってそんなことばっかり考えてしまう。今でもそれは変わらないのが情けない。
お仙ちゃんだっていい大人なんだから昔みたいにぞんざいに命令をたきつけたりはしないだろうけど・・・。
私とは違うその強い眼差しが、ずっと私は苦手だった。
「あの・・・お仙ちゃ、・・・仙蔵、荷物のことなんだけど・・・」
「ああ。つい先程受け取った。判を押せばいいのだろう?紙はどこだ?」
差し出した紙に(ああ良かった皺になってない)、お仙ちゃんは完璧に真っ直ぐに判を押した。
そんなところにも完璧さを求めなくてもいいのに・・・。
こういう小さなことからの積み重ねが大事なんだろうか。そうすればお仙ちゃんみたいになれるんだろうか。(苛めっ子にはなりたくないけど)
お仙ちゃんから紙を受け取り、そして母からの手紙を渡す。
この手紙のお陰で私が今回借り出されたみたいなものだ。いっそ燃やしてしまいたい。
お仙ちゃんはその憎き紙にざっと目を通すと、ややあって、ふっと笑みを浮かべて私の方を見た。
嫌な予感。
「夏休みに是非泊まりに来い。と書いてある。顔を見せろ、と」
え?
その言葉は、私にとって死刑宣告と等しかった。
にやりと笑ったその顔。冷や汗がさあっと背中を走った気がした。
何でそんな楽しそうな顔をするんだろう。何でうちの母は手紙を私に預けたんだろう。
ぐるぐると脳内をいろいろな思考が巡る。急に目の前が真っ暗になった。
夏なんて永久に来なければいい。
私はやっぱり手紙は燃やしておくべきだったと後悔した。