つらつら椿
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「ねえほへと 、アンタちょっと仙蔵くんのとこにお使い行ってきて頂戴な」
「え…」
ええええええええー!!!!!!
01:情が薄いのはどっちよ
「アンタ何て顔してんの」
「だ、だって母さん…」
今私は凄い顔をしてるんだろうなあ。自分でも分かるくらい眉間に皺寄せてるもの。
私をそんな顔にさせる悲痛な宣告をしているのは実の母で。
お使いに行ってきて。なんて…。薄情すぎる。
「…嫌だ。行きたくない」
「何我侭言ってるの。従兄でしょ?会いたくないの?」
会いたくない。全く、これっぽっちも会いたいと思わない。
そう。母の言うとおり、立花仙蔵くん。通称「お仙ちゃん」と私は従兄妹同士だ。
ちなみにお仙ちゃんのお父さんと私のお母さんが兄妹なんだけど、実は何を隠そう私は昔からこのお仙ちゃんが大の苦手なのである。
「別に、会いたくない・・・」
「何言ってんの。情が薄い子だねえ全く。仙蔵くんが忍術学園に入学してからアンタ片手で数えるほどしか会ってないじゃない。それに仙蔵くんにはもうほへとが行くって文を出したんだからね」
「え!?何それ!聞いてない!」
「だって今言ったもの。こうでもしないとアンタ絶対行かないじゃない。たまには顔見せてあげなさい。仙蔵くんだってたまにはほへとの顔見たいだろうし。・・・ってああそうだ!今日お得意さんが来るんだわ。 ちょっと店番してて頂戴。私は在庫確認してくるから」
「ちょっと母さん!」
娘の悲痛な叫びを聞かずに店の奥に引っ込んでいく我が母親。
あんまりだ。鬼!薄情者!
もしも仮に彼が私に土下座して会いたいと懇願したとしても私は会いたくない。(あの男がそんなことするわけないけど)
私はお仙ちゃん、もとい私の従兄妹にあたる立花仙蔵くんのことが苦手だ。
嫌いってわけではない。ただ、苦手なのだ。
私とお仙ちゃんは本当の兄妹じゃあないけど、家の都合で幼少期は一緒の家で育って、幼い頃はそれはもう仲のよい姉妹だと近所じゃ有名だった。
うん。兄妹じゃなくて。「姉妹」ってとこが重要。
お仙ちゃんは、小さいときはどこからどう見ても女の子で。今私が思い出してもそれはそれは可愛かった。
仲がよい。というのは今考えれば語弊があるし、お仙ちゃんは外見こそ女の子の見てくれだったけど、当然中身は全然女の子じゃないわけで。
『ほへとちょっとあの柿とって来い』
『お使いを頼まれたのだが…。もちろん暇だよな?』
『私は今忙しいから、これをやっといてくれ』
『おいほへと。頼んでおいた菓子だが…』
………。
何か今走馬灯のようにお仙ちゃんとの思い出がひしひしと…。
とにかくお仙ちゃんは私の使い方が荒くて、でもそのくせ要領はいいから怒られるなんてことされなくて。私はお仙ちゃんにこき使われるという、ある種奉公人みたいな家来みたいな位置付けで幼い頃を過ごした。
軽くトラウマだ。
まあ、それだけならまだいい(本当はよくないけど)、何故なら…。
「ごめんください。あらほへとちゃん今日も別嬪さんだねえ」
「い、いらっしゃいませこんにちは」
「頼んでおいた品物はあるかい?」
「は、はい。少しお待ちください」
私は頼まれていた紅が入った綺麗な貝殻を箱の中から取りだすと、常連のお客さんに見せた。
うちの店は「いろはに屋」というここらではちょっと評判の紅屋。
私の父の代で4代目で、一応私はここの看板娘で通っている。
「いい色だねえ。そういえば、お仙ちゃんはいつ頃帰ってくるんだい? ほへとちゃんも早くお仙ちゃんに会いたいだろう?」
「え、ええまあ…」
「そうでしょうとも。ほへとちゃんがこんだけ美人になってるんだから、お仙ちゃんもさぞかし美人になってるだろうねえ。美人双子の看板娘を早く見てみたいもんだ。お仙ちゃんは如才なかったから、嫁の貰い手も引く手数多だろうねえ。そういう話ってないのかい? ほへとちゃんもうかうかしてたら嫁に行き遅れるよ。・・・ああ、話が長くなったね。代金は先払いしてたから、これこのまま貰っていくよ。お仙ちゃんによろしくね」
「はは…。まいど・・・」
奉公人とか家来とか、そういうのはもう別にいいんだ。問題は、そう。
お仙ちゃんと私の顔がそっくりだと言うこと。
皆小さい頃から何かにつけお仙ちゃんと私を比べる。
ちなみに「お仙ちゃん」というのは仙蔵の幼少期からのあだ名。あまりにも女の子みたいで可愛いかったから、うちの母が私と対になるような感じで呼び始めたのがきっかけだった気がする。呼び始めたとうの本人はいつの間にか「仙蔵くん」て呼んでるけど。
だから私も気付いたら「お仙ちゃん」って呼ぶようになっちゃったんだ。
常連さんの中には、小さい頃のお仙ちゃんと私を知っている人も少なくない。その中でお仙ちゃんのことを本当に私の双子の姉だと思っている人は何気に多くて。
訂正しようとは思っているものの言う機会をいつも逃す。だからこんな話が出るごとに、私は毎回陰鬱な気分になる。
だってお仙ちゃんは確かに可愛かったけど、本当は男の子なのだ。
それなのに、私の方が『嫁に行き遅れる』って何よ。意味分からないわ!失礼だと思わない?思うでしょ?
誰よ。私と仙蔵が双子の姉妹だって言ったの。訂正しろ!私に謝れ!莫迦莫迦莫迦!!
私は店の勘定台の上で頬杖をつきながら帳簿をぱらぱらと捲った。
そこには”忍術学園作法委員会委員長 立花仙蔵”名義で白粉やら紅やら頬紅やらの化粧品がたくさん書いてあった。何に使うのか分からないけど(もちろん化粧に使うんだろうけど)
五年前から半年毎くらいにこうやって大量に化粧品を頼んでいく。親戚価格で一割引なんだから相当特してると思う。今年から「委員長」という単語がついたのを見るにどうやら偉い役職になったらしい。
お仙ちゃんの後輩は何か彼に無理強いとかさせられてないだろうか。何となく心配になった。
何でうちは紅屋なんだろう。
紅屋じゃなかったら、お仙ちゃんと必要以上に関わりあわなくていいのに。恨みがましや我が屋号。
私は「お仙ちゃん」と同じ顔であるという自身の顔を手鏡で見やりながら溜め息を吐いた。
「え…」
ええええええええー!!!!!!
01:情が薄いのはどっちよ
「アンタ何て顔してんの」
「だ、だって母さん…」
今私は凄い顔をしてるんだろうなあ。自分でも分かるくらい眉間に皺寄せてるもの。
私をそんな顔にさせる悲痛な宣告をしているのは実の母で。
お使いに行ってきて。なんて…。薄情すぎる。
「…嫌だ。行きたくない」
「何我侭言ってるの。従兄でしょ?会いたくないの?」
会いたくない。全く、これっぽっちも会いたいと思わない。
そう。母の言うとおり、立花仙蔵くん。通称「お仙ちゃん」と私は従兄妹同士だ。
ちなみにお仙ちゃんのお父さんと私のお母さんが兄妹なんだけど、実は何を隠そう私は昔からこのお仙ちゃんが大の苦手なのである。
「別に、会いたくない・・・」
「何言ってんの。情が薄い子だねえ全く。仙蔵くんが忍術学園に入学してからアンタ片手で数えるほどしか会ってないじゃない。それに仙蔵くんにはもうほへとが行くって文を出したんだからね」
「え!?何それ!聞いてない!」
「だって今言ったもの。こうでもしないとアンタ絶対行かないじゃない。たまには顔見せてあげなさい。仙蔵くんだってたまにはほへとの顔見たいだろうし。・・・ってああそうだ!今日お得意さんが来るんだわ。 ちょっと店番してて頂戴。私は在庫確認してくるから」
「ちょっと母さん!」
娘の悲痛な叫びを聞かずに店の奥に引っ込んでいく我が母親。
あんまりだ。鬼!薄情者!
もしも仮に彼が私に土下座して会いたいと懇願したとしても私は会いたくない。(あの男がそんなことするわけないけど)
私はお仙ちゃん、もとい私の従兄妹にあたる立花仙蔵くんのことが苦手だ。
嫌いってわけではない。ただ、苦手なのだ。
私とお仙ちゃんは本当の兄妹じゃあないけど、家の都合で幼少期は一緒の家で育って、幼い頃はそれはもう仲のよい姉妹だと近所じゃ有名だった。
うん。兄妹じゃなくて。「姉妹」ってとこが重要。
お仙ちゃんは、小さいときはどこからどう見ても女の子で。今私が思い出してもそれはそれは可愛かった。
仲がよい。というのは今考えれば語弊があるし、お仙ちゃんは外見こそ女の子の見てくれだったけど、当然中身は全然女の子じゃないわけで。
『ほへとちょっとあの柿とって来い』
『お使いを頼まれたのだが…。もちろん暇だよな?』
『私は今忙しいから、これをやっといてくれ』
『おいほへと。頼んでおいた菓子だが…』
………。
何か今走馬灯のようにお仙ちゃんとの思い出がひしひしと…。
とにかくお仙ちゃんは私の使い方が荒くて、でもそのくせ要領はいいから怒られるなんてことされなくて。私はお仙ちゃんにこき使われるという、ある種奉公人みたいな家来みたいな位置付けで幼い頃を過ごした。
軽くトラウマだ。
まあ、それだけならまだいい(本当はよくないけど)、何故なら…。
「ごめんください。あらほへとちゃん今日も別嬪さんだねえ」
「い、いらっしゃいませこんにちは」
「頼んでおいた品物はあるかい?」
「は、はい。少しお待ちください」
私は頼まれていた紅が入った綺麗な貝殻を箱の中から取りだすと、常連のお客さんに見せた。
うちの店は「いろはに屋」というここらではちょっと評判の紅屋。
私の父の代で4代目で、一応私はここの看板娘で通っている。
「いい色だねえ。そういえば、お仙ちゃんはいつ頃帰ってくるんだい? ほへとちゃんも早くお仙ちゃんに会いたいだろう?」
「え、ええまあ…」
「そうでしょうとも。ほへとちゃんがこんだけ美人になってるんだから、お仙ちゃんもさぞかし美人になってるだろうねえ。美人双子の看板娘を早く見てみたいもんだ。お仙ちゃんは如才なかったから、嫁の貰い手も引く手数多だろうねえ。そういう話ってないのかい? ほへとちゃんもうかうかしてたら嫁に行き遅れるよ。・・・ああ、話が長くなったね。代金は先払いしてたから、これこのまま貰っていくよ。お仙ちゃんによろしくね」
「はは…。まいど・・・」
奉公人とか家来とか、そういうのはもう別にいいんだ。問題は、そう。
お仙ちゃんと私の顔がそっくりだと言うこと。
皆小さい頃から何かにつけお仙ちゃんと私を比べる。
ちなみに「お仙ちゃん」というのは仙蔵の幼少期からのあだ名。あまりにも女の子みたいで可愛いかったから、うちの母が私と対になるような感じで呼び始めたのがきっかけだった気がする。呼び始めたとうの本人はいつの間にか「仙蔵くん」て呼んでるけど。
だから私も気付いたら「お仙ちゃん」って呼ぶようになっちゃったんだ。
常連さんの中には、小さい頃のお仙ちゃんと私を知っている人も少なくない。その中でお仙ちゃんのことを本当に私の双子の姉だと思っている人は何気に多くて。
訂正しようとは思っているものの言う機会をいつも逃す。だからこんな話が出るごとに、私は毎回陰鬱な気分になる。
だってお仙ちゃんは確かに可愛かったけど、本当は男の子なのだ。
それなのに、私の方が『嫁に行き遅れる』って何よ。意味分からないわ!失礼だと思わない?思うでしょ?
誰よ。私と仙蔵が双子の姉妹だって言ったの。訂正しろ!私に謝れ!莫迦莫迦莫迦!!
私は店の勘定台の上で頬杖をつきながら帳簿をぱらぱらと捲った。
そこには”忍術学園作法委員会委員長 立花仙蔵”名義で白粉やら紅やら頬紅やらの化粧品がたくさん書いてあった。何に使うのか分からないけど(もちろん化粧に使うんだろうけど)
五年前から半年毎くらいにこうやって大量に化粧品を頼んでいく。親戚価格で一割引なんだから相当特してると思う。今年から「委員長」という単語がついたのを見るにどうやら偉い役職になったらしい。
お仙ちゃんの後輩は何か彼に無理強いとかさせられてないだろうか。何となく心配になった。
何でうちは紅屋なんだろう。
紅屋じゃなかったら、お仙ちゃんと必要以上に関わりあわなくていいのに。恨みがましや我が屋号。
私は「お仙ちゃん」と同じ顔であるという自身の顔を手鏡で見やりながら溜め息を吐いた。