序章〜子供時代編
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「はい、貴女のポケモンは元気になりましたよ。…そんなに泣かないで。ポケモンは強いから、大丈夫よ。貴女は優しい子なのね」
ご利用ありがとうございました。
というジョーイさんの挨拶を受けながらポケモンセンターを出た。
ポケモンセンターに行くのも利用するのもこれが初めて。
オーバくんは受付から受け取りまで付き添ってくれて、いろいろと教えてくれた。
今日は初めてのことばかりだ。何だか頭がぼーっとしてくる。
来た道をオーバくんと並んで歩く。頭に浮かんでくるのは先ほどのマルチバトルのことばかり。
はっきり言って、何もできなかった。
オーバくんとヒコザルは本当に頑張ってくれた。見当はずれな指示を飛ばす私とルリリをサポートしようと懸命に戦った。
おそらくシングルバトルだったらあのガキ大将達にもオーバくんは余裕で勝てたろうと思う。
まともな指示もないままバトルになったルリリは集中攻撃に合って先に戦闘不能に。
ヒコザルはそれでも頑張ったけどさすがに2対1では分が悪かった。
ビッパの体当たりで吹き飛んだ小さなルリリの姿を見て、私は本当に何てことをしてしまったんだろうと後悔した。
頑張れ!なんてルリリに丸投げにしてしまった私、最低だ。
「…泣くなよ〜!さっきも散々泣いたじゃねえか〜…」
「だって…」
「しょうがねえよあれは」
「しょうがっ、しょうがなくない…っ!私が、私が全部悪い…!」
「あいつらも悪いし、俺も悪かったよ。な、だから泣くなよ。ルリリだってヒコザルだってもう元気になったんだから大丈夫だって!」
気づいたらまた泣き出してしまっていた。
止めようとすればするほど溢れてくる。
私の頭をポンポン撫でてくるオーバくんの手が暖かい。
何もできなかった自分に、どうしようもなく腹が立った。
次から次へと涙が出てくる。悔しい。
「家どっちだ?」
「…っ、みぎ…右行って真っ直ぐ…あの四角いの」
「あの浜のとこの?えー!あれお前の家なの!?ポケモン研究所じゃん!すっげーな!」
「すっす、すごく、ないい〜…うええ……」
頭の片隅で、何でそんなに子供みたいに泣いているの?って大人の私が囁く。それでも感情は心の奥底から次々に出てきて、涙は止まらない。
こうなると、もうダメだ。分かっている。
自分の意思ではコントロールできないモードだ。
いろいろな感情がない交ぜになって、私は泣きながらオーバくんに手を引かれて家まで帰った。
—————
あのガキ大将達とバトルしてから一週間。
泣いて、後悔して、怒って。ルリリにたくさん謝って。
そしていろいろ考えた。
考えすぎて若干7歳の子供の脳みそはオーバーヒートしたのか久しぶりに知恵熱が出た。
幼児の頃から熱出しっ放しだ。こちらの世界の母には心配かけまくりである。
それでも考えて、考えて、考えた末に思った。
(何で私が泣き寝入りしなきゃならんのだ)
すっかり回復する頃には、私の心はメラメラと燃えていた。
「ルーちゃん!!私、やるから!」
「リ、リルッ?」
「一緒に、頑張るわよ!」
急にどうしたんですか。とでも言いたげなルリリをボールに戻し私は決意した。
後日、授業が終わった後の下校時間。あれ以来何かといじめてくるガキ大将達を完全無視して回避しつつ隣の教室を覗く。
しまった。もう帰ったか。
「かくかくさん!学校内では走らない!」
「ごめんなさーーい!!!」
先生に謝りつつもそのまま走って学校を飛び出し、オーバくんを追いかけた。
いたいた。いました。
立体歩道橋を歩くオーバくんを発見。赤い髪色だから目立つ。
「オーバくん!」
「お、かくかくじゃん!よっす!」
いつの間にか私の名前を覚えてくれたオーバくんに息急き切って駆け寄る。
はあ、7歳にしては体力がない。これはもっと外で遊ばなければいけない気がする。
「そんなに慌ててどうしたんだよ。もしかしてまたいじめられてんのかお前」
「ち、違う…あの、あのね私、オーバくんに……お願いが…はあ、あって…はあ……ゲホ」
「おいおい大丈夫かよ」
息も絶え絶えな私に呆れた声を出すオーバくん。すまない、君にはこんな姿ばかり見せている。
呼吸を整えて改めてオーバくんに向き直った。
そして私はオーバくんに思いっきり頭を下げた。
「私にバトルを教えてください先生!」
「せ、せんせい?」
私の心はすっかり野望で満ちていた。
大人の心?余裕?
無理でしたね。
目を丸くしたオーバくんに断固たる決意で頷く私。
変な生き物を見るような目つきのオーバくんと目線がかち合う。
「私ポケモンバトル上手になりたいの」
「おう。あのバトル酷かったもんな」
「私あの時何もできなくて悔しかったの。せっかくオーバくんが一緒に戦ってくれたのに。…だから、一緒に練習して欲しいの」
オーバくんは私の現段階の知り合いの中でおそらくバトルが1番上手だ。
上手になるには上手な人から教えて貰うのが手っ取り早い。
私は元運動部特有のノリで、「お願いします!」とポケモンバトルの先輩に再度頭を下げた。
我ながら結構ぶっ飛んでいる。
頼むよオーバくん!私はあのガキ大将達に一泡吹かせてやりたいんだーー!!!
負けて悔しいから見返してやるために強くなりたい、あわよくばボコボコにしたい。というのは道徳的に何か間違っている気もするが。
「…こいつが先生だって?なあアンタ、考え直した方がいいぜ」
「ん?」
どなた様のお声でしょうか?
パッと顔を上げると、オーバくんの真横に金髪の男の子が立っていた。背格好は私たちと同じくらい。
オーバくんの同級生かな?なんと…他に人がいたのか。
全然気がつかなかった。オーバくんしか見えてなかったわ。
子供の視野が狭いって本当なのね。猪突猛進にも程がある。
「うっせえなデンジ!どういう意味だよ!」
「どうもこうも、お前アホだから先生とか無理だろ」
「そんなことねえよ!お前よりマシだわ」
「どうだかな」
私そっちのけで言い合いを始めたオーバくんと金髪くん。どうやら名前はデンジくんというらしい。
ふうん。デンジくんね。一緒に帰ってるってことは仲良いんだなあ。家が近所とか?
オーバとデンジかあ。オーバとデンジね…。
…なんか聞いたことある気がするな。
大変に重要な事を思い出しそうな気がするのに、出てこない。
どこで聞いたっけ……オーバとデンジ……?
おーば………でんじ…
…………
「だーかーら!こいつは俺に先生やってくれって言ってんの!」
「俺とのバトルどうするんだ」
「お前とのバトルはいつでもできんじゃん!」
「一緒に鉄くず拾うって約束もしたろ」
「それはお前一人で拾ってろよ!」
「ああーー!もう二人共うるさい!」
何の話してんだよ!こっちは重要な事思い出しそうになってんのに!
ピタリ。
一瞬の静寂があって、しまった…。と思った。
何の話って、私の先生してくれるって話だよ。
飛んでんじゃないよ私。老人か。
「…ごめん、大きい声出しちゃった」
「いや、こっちこそ話を遮って悪かった」
別に悪くないのに謝るデンジくん。なんて律儀なお子さんだ。さすがオーバくんの友達。
どう考えても悪いのは私だから。大丈夫だ少年。
「で?どうすんだオーバ」
「あー……休みの日だったら別にいいぜ。もうすぐ夏休みだしさ」
「え、いいの!?」
「おう!いいぜ!このオーバ様に任せな!」
微妙な空気から、一転。オーバくんが胸を張ってニカッと笑った。
や〜さ〜し〜い〜。
オーバくん、優しすぎ……。
めっちゃいい子じゃん…え、えー…。
菓子折りとか持って行ったほうがいい…?
どうしよう、ちょっとお姉さん感動しちゃった。
あまりにも普段接しているガキ大将達との温度差が激しすぎてオーバくんの背景に後光が差して見えた。(実際、丁度よく太陽が逆光になってて眩しいわけだが)
「わかった!夏休みだね!楽しみ!ありがとうオーバ先生!よろしくお願いします!」
「先生はやめろ!」
「え、じゃあ…コーチ!」
「普通にオーバでいい!!やめろ恥ずかしい!」
すっごい微妙な顔で叫ばれたけど、今の私は天にも上る気持ちだ。
君の力があれば百人力だよオーバくん。
金髪くんはというと、私たちのやり取りを冷めた目で見ていた。
夏休み楽しみだなあ。血湧き肉躍るとはこの事ね。
待ってろよー!勝って見返してやるんだから!!
ご利用ありがとうございました。
というジョーイさんの挨拶を受けながらポケモンセンターを出た。
ポケモンセンターに行くのも利用するのもこれが初めて。
オーバくんは受付から受け取りまで付き添ってくれて、いろいろと教えてくれた。
今日は初めてのことばかりだ。何だか頭がぼーっとしてくる。
来た道をオーバくんと並んで歩く。頭に浮かんでくるのは先ほどのマルチバトルのことばかり。
はっきり言って、何もできなかった。
オーバくんとヒコザルは本当に頑張ってくれた。見当はずれな指示を飛ばす私とルリリをサポートしようと懸命に戦った。
おそらくシングルバトルだったらあのガキ大将達にもオーバくんは余裕で勝てたろうと思う。
まともな指示もないままバトルになったルリリは集中攻撃に合って先に戦闘不能に。
ヒコザルはそれでも頑張ったけどさすがに2対1では分が悪かった。
ビッパの体当たりで吹き飛んだ小さなルリリの姿を見て、私は本当に何てことをしてしまったんだろうと後悔した。
頑張れ!なんてルリリに丸投げにしてしまった私、最低だ。
「…泣くなよ〜!さっきも散々泣いたじゃねえか〜…」
「だって…」
「しょうがねえよあれは」
「しょうがっ、しょうがなくない…っ!私が、私が全部悪い…!」
「あいつらも悪いし、俺も悪かったよ。な、だから泣くなよ。ルリリだってヒコザルだってもう元気になったんだから大丈夫だって!」
気づいたらまた泣き出してしまっていた。
止めようとすればするほど溢れてくる。
私の頭をポンポン撫でてくるオーバくんの手が暖かい。
何もできなかった自分に、どうしようもなく腹が立った。
次から次へと涙が出てくる。悔しい。
「家どっちだ?」
「…っ、みぎ…右行って真っ直ぐ…あの四角いの」
「あの浜のとこの?えー!あれお前の家なの!?ポケモン研究所じゃん!すっげーな!」
「すっす、すごく、ないい〜…うええ……」
頭の片隅で、何でそんなに子供みたいに泣いているの?って大人の私が囁く。それでも感情は心の奥底から次々に出てきて、涙は止まらない。
こうなると、もうダメだ。分かっている。
自分の意思ではコントロールできないモードだ。
いろいろな感情がない交ぜになって、私は泣きながらオーバくんに手を引かれて家まで帰った。
—————
あのガキ大将達とバトルしてから一週間。
泣いて、後悔して、怒って。ルリリにたくさん謝って。
そしていろいろ考えた。
考えすぎて若干7歳の子供の脳みそはオーバーヒートしたのか久しぶりに知恵熱が出た。
幼児の頃から熱出しっ放しだ。こちらの世界の母には心配かけまくりである。
それでも考えて、考えて、考えた末に思った。
(何で私が泣き寝入りしなきゃならんのだ)
すっかり回復する頃には、私の心はメラメラと燃えていた。
「ルーちゃん!!私、やるから!」
「リ、リルッ?」
「一緒に、頑張るわよ!」
急にどうしたんですか。とでも言いたげなルリリをボールに戻し私は決意した。
後日、授業が終わった後の下校時間。あれ以来何かといじめてくるガキ大将達を完全無視して回避しつつ隣の教室を覗く。
しまった。もう帰ったか。
「かくかくさん!学校内では走らない!」
「ごめんなさーーい!!!」
先生に謝りつつもそのまま走って学校を飛び出し、オーバくんを追いかけた。
いたいた。いました。
立体歩道橋を歩くオーバくんを発見。赤い髪色だから目立つ。
「オーバくん!」
「お、かくかくじゃん!よっす!」
いつの間にか私の名前を覚えてくれたオーバくんに息急き切って駆け寄る。
はあ、7歳にしては体力がない。これはもっと外で遊ばなければいけない気がする。
「そんなに慌ててどうしたんだよ。もしかしてまたいじめられてんのかお前」
「ち、違う…あの、あのね私、オーバくんに……お願いが…はあ、あって…はあ……ゲホ」
「おいおい大丈夫かよ」
息も絶え絶えな私に呆れた声を出すオーバくん。すまない、君にはこんな姿ばかり見せている。
呼吸を整えて改めてオーバくんに向き直った。
そして私はオーバくんに思いっきり頭を下げた。
「私にバトルを教えてください先生!」
「せ、せんせい?」
私の心はすっかり野望で満ちていた。
大人の心?余裕?
無理でしたね。
目を丸くしたオーバくんに断固たる決意で頷く私。
変な生き物を見るような目つきのオーバくんと目線がかち合う。
「私ポケモンバトル上手になりたいの」
「おう。あのバトル酷かったもんな」
「私あの時何もできなくて悔しかったの。せっかくオーバくんが一緒に戦ってくれたのに。…だから、一緒に練習して欲しいの」
オーバくんは私の現段階の知り合いの中でおそらくバトルが1番上手だ。
上手になるには上手な人から教えて貰うのが手っ取り早い。
私は元運動部特有のノリで、「お願いします!」とポケモンバトルの先輩に再度頭を下げた。
我ながら結構ぶっ飛んでいる。
頼むよオーバくん!私はあのガキ大将達に一泡吹かせてやりたいんだーー!!!
負けて悔しいから見返してやるために強くなりたい、あわよくばボコボコにしたい。というのは道徳的に何か間違っている気もするが。
「…こいつが先生だって?なあアンタ、考え直した方がいいぜ」
「ん?」
どなた様のお声でしょうか?
パッと顔を上げると、オーバくんの真横に金髪の男の子が立っていた。背格好は私たちと同じくらい。
オーバくんの同級生かな?なんと…他に人がいたのか。
全然気がつかなかった。オーバくんしか見えてなかったわ。
子供の視野が狭いって本当なのね。猪突猛進にも程がある。
「うっせえなデンジ!どういう意味だよ!」
「どうもこうも、お前アホだから先生とか無理だろ」
「そんなことねえよ!お前よりマシだわ」
「どうだかな」
私そっちのけで言い合いを始めたオーバくんと金髪くん。どうやら名前はデンジくんというらしい。
ふうん。デンジくんね。一緒に帰ってるってことは仲良いんだなあ。家が近所とか?
オーバとデンジかあ。オーバとデンジね…。
…なんか聞いたことある気がするな。
大変に重要な事を思い出しそうな気がするのに、出てこない。
どこで聞いたっけ……オーバとデンジ……?
おーば………でんじ…
…………
「だーかーら!こいつは俺に先生やってくれって言ってんの!」
「俺とのバトルどうするんだ」
「お前とのバトルはいつでもできんじゃん!」
「一緒に鉄くず拾うって約束もしたろ」
「それはお前一人で拾ってろよ!」
「ああーー!もう二人共うるさい!」
何の話してんだよ!こっちは重要な事思い出しそうになってんのに!
ピタリ。
一瞬の静寂があって、しまった…。と思った。
何の話って、私の先生してくれるって話だよ。
飛んでんじゃないよ私。老人か。
「…ごめん、大きい声出しちゃった」
「いや、こっちこそ話を遮って悪かった」
別に悪くないのに謝るデンジくん。なんて律儀なお子さんだ。さすがオーバくんの友達。
どう考えても悪いのは私だから。大丈夫だ少年。
「で?どうすんだオーバ」
「あー……休みの日だったら別にいいぜ。もうすぐ夏休みだしさ」
「え、いいの!?」
「おう!いいぜ!このオーバ様に任せな!」
微妙な空気から、一転。オーバくんが胸を張ってニカッと笑った。
や〜さ〜し〜い〜。
オーバくん、優しすぎ……。
めっちゃいい子じゃん…え、えー…。
菓子折りとか持って行ったほうがいい…?
どうしよう、ちょっとお姉さん感動しちゃった。
あまりにも普段接しているガキ大将達との温度差が激しすぎてオーバくんの背景に後光が差して見えた。(実際、丁度よく太陽が逆光になってて眩しいわけだが)
「わかった!夏休みだね!楽しみ!ありがとうオーバ先生!よろしくお願いします!」
「先生はやめろ!」
「え、じゃあ…コーチ!」
「普通にオーバでいい!!やめろ恥ずかしい!」
すっごい微妙な顔で叫ばれたけど、今の私は天にも上る気持ちだ。
君の力があれば百人力だよオーバくん。
金髪くんはというと、私たちのやり取りを冷めた目で見ていた。
夏休み楽しみだなあ。血湧き肉躍るとはこの事ね。
待ってろよー!勝って見返してやるんだから!!
お願いします先生!