明日、君の隣に誰がいても
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――成し遂げんとした志を、ただ一回の敗北によって捨ててはいけない。――
オレンジ色の太陽が海に溶けていく。目の前に広がる海の中へ。
冷たい風は通り過ぎていく。オレたちの心はとても冷静で。
制服姿で海を眺めてるのは、いつもの男子3人じゃなくて、オレとミーくんの2人だけ。
オレの左横にいるミーくんを電話で呼び出したのは、オレ。
明日は3月1日。
今日という一日の終わりと一緒に、オレたちの3年間の思い出が海に滲んでいくみたいだった。
同じように海を見つめてた、それぞれの目に映ってる景色と感情は、
一緒かどうかはわからないけどね。
「なぁ、ダーホン。
……明日、さ。もしかして、言う、つもり?」
ずっと黙って海を見てた。
ゆっくり、確かめるみたいに聞いてくるミーくん。
何を言うの?なんて、ちょっと前の何も知らないオレだったら呑気に言えたかもしれないけど、
もうそんな風に聞き返せるオレじゃない。
ミーくんは真っすぐに海の方を見たままだった。
オレはオレンジ色が顔に移るミーくんの横顔を見た。
眼鏡の隙間から見える瞳の奥で、ミーくんの心に映っているのはオレたち4人の思い出。…と思いたいけど、
その中でひと際輝いているのはきっと、"あの子"なんだろうと思う。
オレたちに最高に楽しい時間をくれた人。
…いろんな感情が、オレの中で巡る。
「…うん。言うつもりだよ。
タイミングとシチュエーションが、誰とも…被らなければね」
オレはミーくんから目をそらして、少しだけ俯いた。
砂浜も夕日色に染まってる。打ち寄せる波は同じ色に染まっては砕けて、消えて、また生まれる。
時々、キラキラと砂が光った。
明日、あの子の顔を見て、瞳を見つめて、
そこにオレがいるって確証が持てたら、きっと言える。
”オレが君の隣にいていい"って、自信が持てれば。
…でも。
卒業式の朝に見た姿で、オレの決意は揺らいじゃいそうだな、とも思う。
「おはよう!」って君の後ろ姿に声をかけて、振り返ってくれたとき、オレを見て笑っていても
瞳の動きにキラキラしたものがなかったら、オレは…きっと譲ってしまう。
君の隣にいる権利を、ミーくんかリョウくんに。
あぁ、もう、そんなこと絶対嫌だ。
本当は想像したら泣きそうなのに、それでも、思っちゃうんだよ。
二人のどちらかの方が、オレより君を幸せにできるかもしれない。
…振り返ればそう遠くないあの日。
オレから君の心が離れたのを感じた、あの瞬間。
君の隣を歩く男子の後ろ姿が、オレじゃなかった。それがおかしいって感じた苦しさの中に、
『お似合いかも』って、ちょっと羨ましくなったオレがいた。
初めて知った感情だった。
温かいはずなのに、笑顔になりきれなくて。
嬉しくて、寂しい、還元も何もできない化学変化のような、不完全な感情。
そこからわかり始めた、2人の視線の先。
「リョウくん、明日、卒業式間に合うかな」
「…どうだろ。間に合うとは思うけど」
「うーん、ギリギリかな……」
間に合って欲しいような、間に合って欲しくないような。
オレたちはそれ以上の言葉を続けない。
「…ミーくんは?言おうと思ってるんでしょ?」
ミーくんが眼鏡をかけ直すフリをする。
少しだけ咳払いして。
「………あぁ。言うつもり、だけど」
「…うん、そうだよね。……明日はミーくんに先越されないようにしなきゃなぁ」
お互いの、あの子への気持ちをちゃんと知る。
はっきり言葉にすると、なんでだろ。
わかってたはずなのにちょっとむず痒い。
言葉にすることによって認識すること。
それが並べられて行くことで、色んなことが前に進んでいく。
オレたちの意に反して、現実が動いて行く違和感。
「ねえ。…もし、リョウくんもオレもはば学にいなかったら…」
相対的に関係を考える要素がなかったら
「ミーくんはもっと早くに、告白してる?」
少し大きな波が立つ。
オレたちの足元まで届きそうなくらい、
波が寄せて、すぐに引いていった。
「…………た、ぶん」
溜め息吐くみたいに、ミーくんは呟いた。
オレがいなければ、と思ってしまった一抹の後悔。
ごめん。聞いちゃったからこその責任を感じる。
あの子を、幸せにしなくちゃ。
「…じゃあ、明日、誰がどのタイミングであの子に会えても、恨みっこなしだね」
「よし!宣戦布告終了!」…って言おうとして、オレはミーくんを見た。
穏やかな風がミーくんの髪を揺らした。
ミーくんはまだ、海を見ていた。
「……けど。
もしカザマもダーホンもいなかったら、俺はきっとこんなキモチにならなかったと思うし、キモチを伝えようとも思わなかったと思う。
こんな風に出会わなければよかったって苦しむ俺もいるのに、それ以上にみんなといる時間が最高でさ。
なんか…可笑しいけど。ありがとうって、心の底から思う俺もいる」
ミーくんは微笑んでた。
わかるよ、なんて一言では言えないけど
オレもこんな顔になっちゃう感情を知ってる。
人生で苦しい思いをするのは、それに似た感情を味わった人と共鳴するため。
人の心の痛みを自分事として自分の心に落とし込むために、人はその痛みを知る。
だから心が痛くても耐えられる。一緒に笑える。同じ視界で、近い世界を見られる。
その笑顔が、オレたちの間にまた絆という見えない信頼を作ってる。
「ねぇミーくん。
オレたちが同じ人を好きになって、一緒に笑って、時々、それぞれいろんな時間を過ごして、
みんながそれぞれ、違う表情のあの子を知ってる。
時々それを羨ましく思ったり、独り占めしたくなったりしたけど、
でもいつか…いつの日か、
好きな人のいろんな表情が、オレたちの過ごした一回だけの高校生活の証なんだって、
そんな風に……思える。
そうなれたらいいなって、オレ、思ってるんだよ」
"誰があの子の隣にいることになっても、
この思い出はオレたちを、これからもずっと結びつける"
「あぁ、俺もそうありたいって、そんな風に思いたいって……思ってるよ」
……夕陽が海に溶けてなくなった。
オレとミーくんは顔を合わせて、
少しだけ距離を開けたまま、海に背を向けた。
「…じゃ、帰りますか」
「うん、帰ろ」
一度感じた世界の終わりをもう二度と味わいたくないと思いながら
それでもオレたちは、好きな人が一番好きな人と幸せになってほしいと願う。
青い蛍の光と一緒に光って散った、悔しい思いの数々も
その痛みすら、今は奇跡だったんだと思う。
『妬ましさ』の向こう側に見えた、新しい景色。
それはオレにまた豊かな感情をくれた。
この夕日のあとに訪れる夜が、決して絶望という暗闇ではないように。
「ミーくん、今日は、ありがとう」
「…こちらこそ。どーも」
「オレ、きっとこの夕陽は一生忘れない」
"あまりにも綺麗だったから。"
もちろんそれもあるんだけど
「オレにとっては"知らないことを知った日"、だから」
目の前の景色が少し歪んだ。
あぁ、オレ、泣きそうなんだ。
感動してる。ただ苦しくて。
「苦しいのに、幸せって、オレ…初めてだよ」
…ミーくんは少しだけ頷いて
そしてちょっとだけ、優しく笑っていた。
明日君の隣に誰がいても、オレたちは笑っていよう。
だから君も、どんな未来が来たとしても、
いつもと同じように、笑って?
一度経験した挫折なんかじゃ諦められないくらいに、
みんな、君のことが大好きだから。
これからも、ずっとずっと一緒にいるよ。
たとえ君が明日、どんな世界を迎えたとしても。
***
By my side
RAD/WIMPS &ONE/OK/ROCK
オレンジ色の太陽が海に溶けていく。目の前に広がる海の中へ。
冷たい風は通り過ぎていく。オレたちの心はとても冷静で。
制服姿で海を眺めてるのは、いつもの男子3人じゃなくて、オレとミーくんの2人だけ。
オレの左横にいるミーくんを電話で呼び出したのは、オレ。
明日は3月1日。
今日という一日の終わりと一緒に、オレたちの3年間の思い出が海に滲んでいくみたいだった。
同じように海を見つめてた、それぞれの目に映ってる景色と感情は、
一緒かどうかはわからないけどね。
「なぁ、ダーホン。
……明日、さ。もしかして、言う、つもり?」
ずっと黙って海を見てた。
ゆっくり、確かめるみたいに聞いてくるミーくん。
何を言うの?なんて、ちょっと前の何も知らないオレだったら呑気に言えたかもしれないけど、
もうそんな風に聞き返せるオレじゃない。
ミーくんは真っすぐに海の方を見たままだった。
オレはオレンジ色が顔に移るミーくんの横顔を見た。
眼鏡の隙間から見える瞳の奥で、ミーくんの心に映っているのはオレたち4人の思い出。…と思いたいけど、
その中でひと際輝いているのはきっと、"あの子"なんだろうと思う。
オレたちに最高に楽しい時間をくれた人。
…いろんな感情が、オレの中で巡る。
「…うん。言うつもりだよ。
タイミングとシチュエーションが、誰とも…被らなければね」
オレはミーくんから目をそらして、少しだけ俯いた。
砂浜も夕日色に染まってる。打ち寄せる波は同じ色に染まっては砕けて、消えて、また生まれる。
時々、キラキラと砂が光った。
明日、あの子の顔を見て、瞳を見つめて、
そこにオレがいるって確証が持てたら、きっと言える。
”オレが君の隣にいていい"って、自信が持てれば。
…でも。
卒業式の朝に見た姿で、オレの決意は揺らいじゃいそうだな、とも思う。
「おはよう!」って君の後ろ姿に声をかけて、振り返ってくれたとき、オレを見て笑っていても
瞳の動きにキラキラしたものがなかったら、オレは…きっと譲ってしまう。
君の隣にいる権利を、ミーくんかリョウくんに。
あぁ、もう、そんなこと絶対嫌だ。
本当は想像したら泣きそうなのに、それでも、思っちゃうんだよ。
二人のどちらかの方が、オレより君を幸せにできるかもしれない。
…振り返ればそう遠くないあの日。
オレから君の心が離れたのを感じた、あの瞬間。
君の隣を歩く男子の後ろ姿が、オレじゃなかった。それがおかしいって感じた苦しさの中に、
『お似合いかも』って、ちょっと羨ましくなったオレがいた。
初めて知った感情だった。
温かいはずなのに、笑顔になりきれなくて。
嬉しくて、寂しい、還元も何もできない化学変化のような、不完全な感情。
そこからわかり始めた、2人の視線の先。
「リョウくん、明日、卒業式間に合うかな」
「…どうだろ。間に合うとは思うけど」
「うーん、ギリギリかな……」
間に合って欲しいような、間に合って欲しくないような。
オレたちはそれ以上の言葉を続けない。
「…ミーくんは?言おうと思ってるんでしょ?」
ミーくんが眼鏡をかけ直すフリをする。
少しだけ咳払いして。
「………あぁ。言うつもり、だけど」
「…うん、そうだよね。……明日はミーくんに先越されないようにしなきゃなぁ」
お互いの、あの子への気持ちをちゃんと知る。
はっきり言葉にすると、なんでだろ。
わかってたはずなのにちょっとむず痒い。
言葉にすることによって認識すること。
それが並べられて行くことで、色んなことが前に進んでいく。
オレたちの意に反して、現実が動いて行く違和感。
「ねえ。…もし、リョウくんもオレもはば学にいなかったら…」
相対的に関係を考える要素がなかったら
「ミーくんはもっと早くに、告白してる?」
少し大きな波が立つ。
オレたちの足元まで届きそうなくらい、
波が寄せて、すぐに引いていった。
「…………た、ぶん」
溜め息吐くみたいに、ミーくんは呟いた。
オレがいなければ、と思ってしまった一抹の後悔。
ごめん。聞いちゃったからこその責任を感じる。
あの子を、幸せにしなくちゃ。
「…じゃあ、明日、誰がどのタイミングであの子に会えても、恨みっこなしだね」
「よし!宣戦布告終了!」…って言おうとして、オレはミーくんを見た。
穏やかな風がミーくんの髪を揺らした。
ミーくんはまだ、海を見ていた。
「……けど。
もしカザマもダーホンもいなかったら、俺はきっとこんなキモチにならなかったと思うし、キモチを伝えようとも思わなかったと思う。
こんな風に出会わなければよかったって苦しむ俺もいるのに、それ以上にみんなといる時間が最高でさ。
なんか…可笑しいけど。ありがとうって、心の底から思う俺もいる」
ミーくんは微笑んでた。
わかるよ、なんて一言では言えないけど
オレもこんな顔になっちゃう感情を知ってる。
人生で苦しい思いをするのは、それに似た感情を味わった人と共鳴するため。
人の心の痛みを自分事として自分の心に落とし込むために、人はその痛みを知る。
だから心が痛くても耐えられる。一緒に笑える。同じ視界で、近い世界を見られる。
その笑顔が、オレたちの間にまた絆という見えない信頼を作ってる。
「ねぇミーくん。
オレたちが同じ人を好きになって、一緒に笑って、時々、それぞれいろんな時間を過ごして、
みんながそれぞれ、違う表情のあの子を知ってる。
時々それを羨ましく思ったり、独り占めしたくなったりしたけど、
でもいつか…いつの日か、
好きな人のいろんな表情が、オレたちの過ごした一回だけの高校生活の証なんだって、
そんな風に……思える。
そうなれたらいいなって、オレ、思ってるんだよ」
"誰があの子の隣にいることになっても、
この思い出はオレたちを、これからもずっと結びつける"
「あぁ、俺もそうありたいって、そんな風に思いたいって……思ってるよ」
……夕陽が海に溶けてなくなった。
オレとミーくんは顔を合わせて、
少しだけ距離を開けたまま、海に背を向けた。
「…じゃ、帰りますか」
「うん、帰ろ」
一度感じた世界の終わりをもう二度と味わいたくないと思いながら
それでもオレたちは、好きな人が一番好きな人と幸せになってほしいと願う。
青い蛍の光と一緒に光って散った、悔しい思いの数々も
その痛みすら、今は奇跡だったんだと思う。
『妬ましさ』の向こう側に見えた、新しい景色。
それはオレにまた豊かな感情をくれた。
この夕日のあとに訪れる夜が、決して絶望という暗闇ではないように。
「ミーくん、今日は、ありがとう」
「…こちらこそ。どーも」
「オレ、きっとこの夕陽は一生忘れない」
"あまりにも綺麗だったから。"
もちろんそれもあるんだけど
「オレにとっては"知らないことを知った日"、だから」
目の前の景色が少し歪んだ。
あぁ、オレ、泣きそうなんだ。
感動してる。ただ苦しくて。
「苦しいのに、幸せって、オレ…初めてだよ」
…ミーくんは少しだけ頷いて
そしてちょっとだけ、優しく笑っていた。
明日君の隣に誰がいても、オレたちは笑っていよう。
だから君も、どんな未来が来たとしても、
いつもと同じように、笑って?
一度経験した挫折なんかじゃ諦められないくらいに、
みんな、君のことが大好きだから。
これからも、ずっとずっと一緒にいるよ。
たとえ君が明日、どんな世界を迎えたとしても。
***
By my side
RAD/WIMPS &ONE/OK/ROCK
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