茜ちゃん関連

あなたのほうが



色とりどりの光が空へと打ち上げられる。夏の夜空を彩るそれらは確かに綺麗だが、それよりも剣城の視線は隣の人物へと注がれていた。

「わぁ、綺麗……」

空を見上げる彼女の横顔は光に照らされているせいかいつもより輝いて見える。まるで宝石のように煌めく瞳に釘付けになっているとその視線に気付いたのか茜がこちらを向いて首を傾げる。慌てて視線を逸らすも遅かったようで不思議そうに見つめられてしまった。

「京介くん、どうしたの?」

二人きりの時だけ呼ばれる下の名前。その声にすら愛しさが募るのだから不思議だ。

「なんでもありませんよ」

平静を装って答えるが、心臓はどきどきと脈打っていた。悟られないように深呼吸をすると改めて彼女を見る。花火に照らされた茜の顔はいつもより柔らかく見えて胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。可愛い、愛しいと思う気持ちは留まることを知らないようでどんどん膨れ上がっていって苦しくなるほどだ。
そんな剣城の様子に気付くことなく茜はまた視線を空へと移す。その横顔を眺めているだけで心が満たされていくような気がして、剣城は知らず頬を緩めていた。

「花火、綺麗だね」
「……俺は、花火より貴女の方が綺麗だと思いますけど」

思ったままを口にすれば驚いたように見開かれた瞳と目が合う。その後すぐに真っ赤に染まった頬を隠すように逸らされるものだから思わず笑ってしまった。

「もう、何言ってるの……」

小さく呟きながらも満更ではない様子なのは明らかで、それが余計に剣城を喜ばせた。そろりと手を伸ばして彼女の手を取るとその指先に軽く口付けを落とすと耳元で囁いた。

「……来年もまた、一緒に見ましょう」

その言葉に茜は小さく微笑んで頷く。その笑顔はやはり何よりも綺麗に見えて、剣城は再び見惚れそうになるのを堪えつつ笑い返したのだった。
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