好葉ちゃん関連
キツネミミぱにっく☆
どうしてこうなってしまったのだろうか。
好葉はベッドに腰掛け、とある一点を見つめながら己の不幸を嘆いた。視線の先は、一枚の手鏡。
「ど、どーなってるの……?」
頭頂部にちょこん、と生えたその物体。それは紛れもなく動物の耳で。恐る恐る触れてみるとふわりと柔らかな毛並みが感じられて、それが現実であるということを如実に伝えてくる。
そしてその違和感は頭だけには留まらず、もっと下にも表れていた。
「しっ……尻尾まで生えて……」
尾てい骨の辺りからもふもふの尻尾が顔を覗かせていて、思わず脱力してしまう。
形状から見てキツネだろうか。淡いエメラルドグリーンの色合いからして、無意識の内にソウルの力が変な方向に働いたのかもしれない。
「うー……どーしよう……」
幸い、練習までにはまだ時間がある。それまでに隠す手段を考えなくてはならない。
帽子……で耳は隠せそうだ。だが尻尾は大分毛量があり、普通に履いた服に隠すのは不可能だろう。
思考を巡らせては駄目だと結論付けて。もうこれ以上策も思いつかず、思わずため息を吐いたその時だった。
バンッ!
「好葉!」
「ひょわっ!?」
扉が壊れんばかりの勢いで叩かれる。その衝撃に思わず肩を揺らせば、扉の向こうから「悪い」と謝罪の声が聞こえた。
「な、何……?」
「何って……そろそろ練習時間だろ?呼びに来てやったんだよ」
もうそんなに経ってしまったのだろうか。慌てて時計を見れば、確かに集合時刻まであと10分もない。
「準備出来てるか?」
「えっ……と……」
髪も結った。ユニフォームにも着替えた。
ただ耳と尻尾が残っていて。
「おい好葉、大丈夫か?」
なかなか返事がないことを不審に思ったのか、井吹が再び声を掛けてきた。正直言うと大丈夫じゃないし、それを伝える勇気もないのだが。
すると返事がないことに焦れたのか、扉がもう一度叩かれる。しかも先程よりも強い力でだ。今にも壊れてしまうのではないかと思うほどの音にいよいよ焦り始める。
「なぁ、何で反応しないんだ?何かあったのか」
心配そうな声に罪悪感を刺激されるが、だからと言ってこの姿をどう説明したらいいのか分からない。
「好葉、大丈夫か?開けるぞ」
「え……っ!」
止める間もなく扉が開く。慌てて視線を逸らすももう遅く、井吹は目を丸くして固まっていた。
「あ……えと……」
「好葉、それ」
井吹の視線が頭の天辺に注がれる。耳と尻尾を隠そうと身体を丸めるが、それは何の解決にもならなかった。むしろ逆効果だ。小動物のような可愛らしい姿に、井吹は喉をごくりと鳴らした。ぺたりと耳が伏せられ尻尾が小刻みに揺れる様に、庇護欲を掻き立てられる。
「その、朝起きたらこうなってて……それでっ」
どうにか説明しようとするも、上手く言葉が出てこない。次第に涙まで滲んできて、好葉はぐすりと鼻を鳴らした。
その音に井吹がはっとしたように目を見開き、慌てた様子で距離を詰める。ベッドの縁に膝を掛け、あやすようにそっと頭を撫でた。
「な、泣くなって」
ぽんぽんと優しく頭を撫でられて、徐々に落ち着きを取り戻していく。それでも不安は拭いきれなくて、好葉は井吹の服の裾をぎゅっと握った。
縋るような仕草に、震える声。意識するなと言う方が無理だろう。触れたい欲がむくりと鎌首をもたげる。だが、今は駄目だ。こんな状態の好葉に手を出すなど出来ない。
「大丈夫、大丈夫だから。な?」
小さな背中を摩り優しく声を掛ければ、好葉はこくりと素直に頷いた。ただ耳と尻尾は不安を表すようにぺしょんと垂れていて。あまりにも自由自在に動くそれらに、思わずじっと視線を注いでしまう。
「井吹くん……?」
「……っ、何でもねぇ」
不思議そうにこちらを見る好葉に慌てて視線を逸らし、何でもない風を装う。だが誤魔化せた自信はない。その証拠に、未だ彼の視線は頭から離れないのだから。
どうしてこうなってしまったのだろうか。
好葉はベッドに腰掛け、とある一点を見つめながら己の不幸を嘆いた。視線の先は、一枚の手鏡。
「ど、どーなってるの……?」
頭頂部にちょこん、と生えたその物体。それは紛れもなく動物の耳で。恐る恐る触れてみるとふわりと柔らかな毛並みが感じられて、それが現実であるということを如実に伝えてくる。
そしてその違和感は頭だけには留まらず、もっと下にも表れていた。
「しっ……尻尾まで生えて……」
尾てい骨の辺りからもふもふの尻尾が顔を覗かせていて、思わず脱力してしまう。
形状から見てキツネだろうか。淡いエメラルドグリーンの色合いからして、無意識の内にソウルの力が変な方向に働いたのかもしれない。
「うー……どーしよう……」
幸い、練習までにはまだ時間がある。それまでに隠す手段を考えなくてはならない。
帽子……で耳は隠せそうだ。だが尻尾は大分毛量があり、普通に履いた服に隠すのは不可能だろう。
思考を巡らせては駄目だと結論付けて。もうこれ以上策も思いつかず、思わずため息を吐いたその時だった。
バンッ!
「好葉!」
「ひょわっ!?」
扉が壊れんばかりの勢いで叩かれる。その衝撃に思わず肩を揺らせば、扉の向こうから「悪い」と謝罪の声が聞こえた。
「な、何……?」
「何って……そろそろ練習時間だろ?呼びに来てやったんだよ」
もうそんなに経ってしまったのだろうか。慌てて時計を見れば、確かに集合時刻まであと10分もない。
「準備出来てるか?」
「えっ……と……」
髪も結った。ユニフォームにも着替えた。
ただ耳と尻尾が残っていて。
「おい好葉、大丈夫か?」
なかなか返事がないことを不審に思ったのか、井吹が再び声を掛けてきた。正直言うと大丈夫じゃないし、それを伝える勇気もないのだが。
すると返事がないことに焦れたのか、扉がもう一度叩かれる。しかも先程よりも強い力でだ。今にも壊れてしまうのではないかと思うほどの音にいよいよ焦り始める。
「なぁ、何で反応しないんだ?何かあったのか」
心配そうな声に罪悪感を刺激されるが、だからと言ってこの姿をどう説明したらいいのか分からない。
「好葉、大丈夫か?開けるぞ」
「え……っ!」
止める間もなく扉が開く。慌てて視線を逸らすももう遅く、井吹は目を丸くして固まっていた。
「あ……えと……」
「好葉、それ」
井吹の視線が頭の天辺に注がれる。耳と尻尾を隠そうと身体を丸めるが、それは何の解決にもならなかった。むしろ逆効果だ。小動物のような可愛らしい姿に、井吹は喉をごくりと鳴らした。ぺたりと耳が伏せられ尻尾が小刻みに揺れる様に、庇護欲を掻き立てられる。
「その、朝起きたらこうなってて……それでっ」
どうにか説明しようとするも、上手く言葉が出てこない。次第に涙まで滲んできて、好葉はぐすりと鼻を鳴らした。
その音に井吹がはっとしたように目を見開き、慌てた様子で距離を詰める。ベッドの縁に膝を掛け、あやすようにそっと頭を撫でた。
「な、泣くなって」
ぽんぽんと優しく頭を撫でられて、徐々に落ち着きを取り戻していく。それでも不安は拭いきれなくて、好葉は井吹の服の裾をぎゅっと握った。
縋るような仕草に、震える声。意識するなと言う方が無理だろう。触れたい欲がむくりと鎌首をもたげる。だが、今は駄目だ。こんな状態の好葉に手を出すなど出来ない。
「大丈夫、大丈夫だから。な?」
小さな背中を摩り優しく声を掛ければ、好葉はこくりと素直に頷いた。ただ耳と尻尾は不安を表すようにぺしょんと垂れていて。あまりにも自由自在に動くそれらに、思わずじっと視線を注いでしまう。
「井吹くん……?」
「……っ、何でもねぇ」
不思議そうにこちらを見る好葉に慌てて視線を逸らし、何でもない風を装う。だが誤魔化せた自信はない。その証拠に、未だ彼の視線は頭から離れないのだから。