好葉ちゃん関連
お前がいい
「今日のストレッチ相手は好葉か」
「あ、えと……うち小さくて井吹くんの役に立ちそうにないけど、大丈夫?他の人と組んだほうが……」
ちらちらと上目遣いに井吹を見上げ、不安そうに瞳が揺れる。色々なことを経験して成長したはずなのに、こうやって自分を卑下する癖は未だに抜けない。
「ばーか、そんなこと誰も言ってないだろ」
「んむっ」
むにっと頬をつまみ、そのまま軽く引っ張ってやった。柔らかな頬はすべすべと触り心地がよく、ついつい触っていたくなるような魅力がある。
「勝手に決められたことだしな……って言い方悪いな、これじゃあ」
嫌々組んだ、と捉えるような言い方だ。
「俺は、お前と組みたい。それじゃ駄目か?」
まっすぐ好葉の瞳を見つめ、思いの丈を吐露する。それは素直な気持ちであり、決して嘘なんかじゃない。
好葉は暫く呆然としていたものの、やがてこくりと頷いた。
「ありがと」
はにかむような笑顔につられ、井吹も頬を緩める。これ以上にないくらいの多幸感で胸を満たしながら、井吹は好葉に手を差し出した。
「ほら」
「……うん」
差し出された手に戸惑いながらも、恐る恐る手を重ねる好葉。その小さな手を壊さないように握り、ゆっくりと引っ張る。
「井吹くん?」
「ストレッチするんだろ?ここらなら空いてるぜ」
井吹から率先してグラウンドの隅へと移動し、好葉の手を離す。そしてその場に座り込み、自分の前に好葉が来るように手招く。
するとちょこちょことした動作で井吹の前に回り込み、小さく座った。ぺたんと足を地面につけ、井吹と向かい合う。
「それじゃ思いっきり身体伸ばせないだろ?足伸ばせって」
「あっ……と。これでいい?」
井吹の指示にこくりと頷き、好葉はゆっくりと足を前に出した。好葉が足を伸ばしたのを確認してから、彼女の背後に回る。
同年代の女子に比べて随分小柄で小学生、下手したら幼児と間違えられても可笑しくないその身体。だがそんな見た目とは裏腹にこのチームを支えてくれているのだから、人は見かけによらない。
「じゃあ押すぞ」
手を前に突き出し、小さな背中をゆっくりと押していく。それ程力を入れていないのに好葉の体は簡単に前に傾き、地面にぴたりとついた。
「痛くないか?」
「うん、全然っ」
背中を押す度に好葉はふわふわもふもふの髪を揺らし、少し上擦った声で返事をする。その声は心地よく鼓膜に響き、井吹の気分を高揚させた。
触れ合った箇所からじんわり熱が伝わり、その温度がどんどん上昇していくのがわかる。何だか無性に気恥ずかしい。それが悟られないようにと願いながら、井吹は黙々と手を動かし続けたのだった。
(おまけ・ストレッチ交代したら)
「井吹くん、背中押すよ」
「ああ」
小さな手の感触が、ユニフォーム越しに背中に伝わる。彼女なりに力いっぱい押しているのだろう。押してはいるものの、その強さはほぼ無いに等しい。
心の中でくすりと笑みを零し、押されているていで身体を前へと倒した。
「わっ、井吹くんすごい」
「ははっ、まぁな。これぐらい余裕だって」
「むー……じゃあもっと強く押すから」
好葉はそう言うと、再び手に力を入れた。先程よりも強い力で押されるが、それでもまだ弱い。
「んぐぐ……っ」
「はははっ!まだ弱いぞ」
「もー!じゃあ……こうだっ!」
好葉は井吹の背中にぴったりと張り付き、身体全体を前に倒す。
むぎゅっ
「うおっ……!?」
柔らかな感触が背中越しに伝わり、井吹は思わず素っ頓狂な声を上げた。
好葉の薄い身体が惜しげも無く背中に密着する。
「んしょ……っ」
ぐい、と好葉が身体を前に倒せば、押し当てられる柔らかな感触。まるで全身で抱きしめられているような体勢だ。背中に感じる好葉の体温は高く、そして熱い。じんわりと広がっていく熱は、きっと彼女のものだけではないだろう。
服越しにとくん、とくんと鼓動の音が聞こえて井吹の心臓も速まっていく。だがそれは決して不快ではなく、むしろ心地がよかった。
「どう?」
期待を込めた声色でそう尋ねる好葉に、井吹は答えない。否、答える余裕がなかった。
背中に当たる柔らかな感触、好葉の熱い体温、心地よい心臓の音。それらを意識しないわけがなく。
井吹はただただ、熱を燻らせることしか出来なかったのだった。
「今日のストレッチ相手は好葉か」
「あ、えと……うち小さくて井吹くんの役に立ちそうにないけど、大丈夫?他の人と組んだほうが……」
ちらちらと上目遣いに井吹を見上げ、不安そうに瞳が揺れる。色々なことを経験して成長したはずなのに、こうやって自分を卑下する癖は未だに抜けない。
「ばーか、そんなこと誰も言ってないだろ」
「んむっ」
むにっと頬をつまみ、そのまま軽く引っ張ってやった。柔らかな頬はすべすべと触り心地がよく、ついつい触っていたくなるような魅力がある。
「勝手に決められたことだしな……って言い方悪いな、これじゃあ」
嫌々組んだ、と捉えるような言い方だ。
「俺は、お前と組みたい。それじゃ駄目か?」
まっすぐ好葉の瞳を見つめ、思いの丈を吐露する。それは素直な気持ちであり、決して嘘なんかじゃない。
好葉は暫く呆然としていたものの、やがてこくりと頷いた。
「ありがと」
はにかむような笑顔につられ、井吹も頬を緩める。これ以上にないくらいの多幸感で胸を満たしながら、井吹は好葉に手を差し出した。
「ほら」
「……うん」
差し出された手に戸惑いながらも、恐る恐る手を重ねる好葉。その小さな手を壊さないように握り、ゆっくりと引っ張る。
「井吹くん?」
「ストレッチするんだろ?ここらなら空いてるぜ」
井吹から率先してグラウンドの隅へと移動し、好葉の手を離す。そしてその場に座り込み、自分の前に好葉が来るように手招く。
するとちょこちょことした動作で井吹の前に回り込み、小さく座った。ぺたんと足を地面につけ、井吹と向かい合う。
「それじゃ思いっきり身体伸ばせないだろ?足伸ばせって」
「あっ……と。これでいい?」
井吹の指示にこくりと頷き、好葉はゆっくりと足を前に出した。好葉が足を伸ばしたのを確認してから、彼女の背後に回る。
同年代の女子に比べて随分小柄で小学生、下手したら幼児と間違えられても可笑しくないその身体。だがそんな見た目とは裏腹にこのチームを支えてくれているのだから、人は見かけによらない。
「じゃあ押すぞ」
手を前に突き出し、小さな背中をゆっくりと押していく。それ程力を入れていないのに好葉の体は簡単に前に傾き、地面にぴたりとついた。
「痛くないか?」
「うん、全然っ」
背中を押す度に好葉はふわふわもふもふの髪を揺らし、少し上擦った声で返事をする。その声は心地よく鼓膜に響き、井吹の気分を高揚させた。
触れ合った箇所からじんわり熱が伝わり、その温度がどんどん上昇していくのがわかる。何だか無性に気恥ずかしい。それが悟られないようにと願いながら、井吹は黙々と手を動かし続けたのだった。
(おまけ・ストレッチ交代したら)
「井吹くん、背中押すよ」
「ああ」
小さな手の感触が、ユニフォーム越しに背中に伝わる。彼女なりに力いっぱい押しているのだろう。押してはいるものの、その強さはほぼ無いに等しい。
心の中でくすりと笑みを零し、押されているていで身体を前へと倒した。
「わっ、井吹くんすごい」
「ははっ、まぁな。これぐらい余裕だって」
「むー……じゃあもっと強く押すから」
好葉はそう言うと、再び手に力を入れた。先程よりも強い力で押されるが、それでもまだ弱い。
「んぐぐ……っ」
「はははっ!まだ弱いぞ」
「もー!じゃあ……こうだっ!」
好葉は井吹の背中にぴったりと張り付き、身体全体を前に倒す。
むぎゅっ
「うおっ……!?」
柔らかな感触が背中越しに伝わり、井吹は思わず素っ頓狂な声を上げた。
好葉の薄い身体が惜しげも無く背中に密着する。
「んしょ……っ」
ぐい、と好葉が身体を前に倒せば、押し当てられる柔らかな感触。まるで全身で抱きしめられているような体勢だ。背中に感じる好葉の体温は高く、そして熱い。じんわりと広がっていく熱は、きっと彼女のものだけではないだろう。
服越しにとくん、とくんと鼓動の音が聞こえて井吹の心臓も速まっていく。だがそれは決して不快ではなく、むしろ心地がよかった。
「どう?」
期待を込めた声色でそう尋ねる好葉に、井吹は答えない。否、答える余裕がなかった。
背中に当たる柔らかな感触、好葉の熱い体温、心地よい心臓の音。それらを意識しないわけがなく。
井吹はただただ、熱を燻らせることしか出来なかったのだった。