好葉ちゃん関連
ヤキモチしちゃうのは
(好葉視点)
井吹くんはモテる。そりゃあもう、びっくりするくらい。
だってカッコイイし背は高いし運動もできる。ちょっとデリカシーないところもあるけど、それさえも女の子達からしたら可愛いポイントだったりするらしい。井吹くんを一目見ようと宿舎まで押しかける子も少なくはない。
うちは、ただのチームメイト。それだけのはずだから、井吹くんが誰とどうしてようが気にしなくてもいい。
そう、思ってたはずなのに。
「……」
遠目から女の子達に囲われてる井吹くん見る。すごく面倒臭そうにしてるけど、それでも邪険に扱ったりはしなかった。
女の子達はみんなキラキラした目を井吹くんに向けている。みんな可愛らしかったり美人さんだったり。ちんちくりんなうちとは全然違う。
……何だか胸がモヤモヤする。もやもやして、チクチク痛くて、息が上手くできないくらい苦しい。どうしよう。こんな気持ち、うちが持っていいものじゃないのに。
「……好葉?」
「ひゃっ!?」
いきなり声をかけられてびっくりして変な声が出てしまう。振り向けば井吹くんがきょとんとした表情で立っていた。うちがちょっと考え込んでいる間に女の子達から解放されていたらしい。
「ぼけっとしてどうしたんだよ」
「う、ううん……なんでもないの……」
どうしようどうしよう。うまく笑えない。喉がカラカラに渇いて張り付いたみたいになって、言葉が出てこない。
「……好葉、ちょっとこっち来い」
「えっ?」
そんなうちを見て井吹くんは何かを察したのかうちの手を引いて歩き出した。そしてそのまま近くの空き部屋に連れてかれる。
中に入るなり井吹くんはうちに向き直って、真剣な眼差しでうちを見た。その目に見られるとなんだか緊張してしまって、思わず俯いてしまう。
井吹くんは何も言わなくて、それが余計に不安を募らせた。嫌な汗が背中を伝っていく感覚がする。どうしよう、嫌われちゃったかな。
そう思った瞬間、ぎゅうと抱きしめられた。ふわりと漂う井吹くんの匂いに鼓動が速くなっていくのが分かる。
「い、ぶき……く」
「なんでんな顔するんだよ」
「そ、そんな顔って……?」
「不安そうな顔」
井吹くんの大きな掌がうちの頬に触れる。親指で目元を優しくなぞられると擽ったくて身を捩った。それでも井吹くんは離してくれなくて、それどころか更に強く抱き締めてくるものだからうちには為す術がない。ただされるがままに井吹くんの腕の中で大人しくするしかなかった。
優しげな手つきで頭を撫でられる。井吹くんの手、あったかいな。安心するな。……やっぱり、好きだな。自然とそんな想いが込み上げてきて泣きたくなった。
「だから、そんな顔すんなって」
「……ごめんなさい」
「謝らなくていい。ただ俺は、好葉がどうしてそんな顔してんのか知りたいんだよ」
教えてくれよ。そう耳元で囁かれて身体が跳ねた。井吹くんの吐息がかかる度にぞくぞくとした感覚が背中を走る。それが何だか恥ずかしくて身を捩ったけれど、逃さないと言うように強く抱き締められてしまった。
もう、ダメだ。これ以上隠しきれないよ。観念したうちは井吹くんの背中に腕を回してぎゅうとしがみついた。そしてそのまま井吹くんの胸元に顔を埋める。
「っ、その……井吹くんが、女の子に囲まれてるの見てたら……モヤモヤして……それで……」
あぁもう何を言ってるんだか自分でもわからない。伝えたくなんてないのに、口は勝手に動いてしまう。うちのことなんてただのチームメイトとしか思ってないあなたにこんな気持ちを伝えるのはおかしいって分かってるけど、でも。
「やだなって、思っちゃったの」
意を決したうちは顔を上げて井吹くんを見上げた。こんなこと言われてもきっと、困るだろうけど。うちはどうしようもないくらい井吹くんのこと、好きになってる。
これ以上の言葉は迷惑になるだろうから、言わない。だからこの回りくどい言葉だけ、これだけは伝えさせてほしいな。
そう思って真っ直ぐに見つめたら井吹くんの顔は真っ赤に染まっていた。
え、なんで?
(井吹視点)
特に興味のない、好みでもない女達に取り囲まれて、俺は心の中で盛大に舌打ちをした。
こんな時までよくやるもんだと、正直呆れてる。鬱陶しいしめんどくさいし、勘弁してくれと思いながら適当に受け流していた時だった。
視線を感じてそちらを見遣れば、少し離れたところで好葉が何やらこっちを見ながら不安そうな表情をしていた。ぎゅっと拳を握って俯いているその姿に胸の奥がざわつく。
こんな女共より好葉が気になって仕方なかった。何故そんな顔をしているのか、何を思っているのか、気になって、仕方なくて。あの顔は絶対何かある。そう思うと自然と足は動き出していた。
『っ、その……井吹くんが、女の子に囲まれてるの見てたら……モヤモヤして……それで……』
『やだなって、思っちゃったの』
誰も居ない部屋まで連れて、問い質してみればとんでもない言葉が返ってきた。
真ん丸な瞳を潤ませて、耳まで真っ赤にして、唇を震わせながら。そんな反応をされて、俺がどう感じるかなんてこいつは絶対分かってない。
好葉の言葉に俺まで顔に熱が集まってきた。やばい、何だこれ。好葉が可愛すぎてどうにかなりそうだ。俺の真っ赤になった顔を見て、なんで?とでも言いたげに好葉は首を傾げるその仕草でさえ愛おしい。
「いぶきくん……?」
黙り込んだまま何も反応しない俺に不安を感じたのか、窺うように俺の名前を呼ぶ。小さな手が縋るように服をきゅ、と掴んだ。たったそれだけのことで、心拍数が跳ね上がる。
軽く触られただけで、これだ。さっき気付いたばかりのこの気持ちは、もうとっくに俺の理性を蝕んでいた。
「好葉……それってさ」
「っ、あ……」
そっと頬に手を添えてやれば好葉はぴくりと肩を跳ねさせた。その反応にまた心臓が高鳴る。ああもう、本当に勘弁してくれ。これ以上俺をどうしたいんだお前は。
「妬いたって、ことだよな?あいつらに」
そう告げれば好葉の頬が更に赤く染まる。うう、と唸りながら視線を泳がせてはまた俯いて。否定の言葉も肯定の言葉も紡がない。
……けど、多分そういうことだよな?いつも控えめで滅多に我儘なんて言わない好葉がここまで曝け出してくれたんだ。自惚れでも勘違いでもないはず。
「なぁ、こっち見ろって」
「だめっ……いま、ぜったいへんなかおしてる……」
ふるふる首を振って俯き続ける好葉。伏し目がちなその仕草が妙に艶かしい。
蚊の鳴くような声で、だめ、と繰り返す好葉。その全てが俺の欲を煽って仕方がない。
「俺はどんな好葉も見たい」
「や……っ」
「頼むよ、な?」
「……う……」
優しく言い聞かせるように言えば、やがて観念したのかおずおずと顔を上げた。むぅ、と頬を膨らましながらも素直に従うこの様子。少しは心を開いてくれてる証拠だって自惚れてもいいんだろうか。
潤んだ瞳に、染まった頬。そして極め付けは羞恥から来るであろう涙の膜が張った瞳と上目遣い。……これは、やばいな。自制が効かなくなりそうだ。
「可愛い」
「へっ……?そ、そんなこと……」
「可愛いよ、すげぇ可愛い。可愛すぎて頭おかしくなりそう」
お世辞なんかじゃなく心の底からそう思ったからそう言ったまでだ。なのに好葉はまだ信じられないとでも言うように目を丸くしている。
俺の言葉を疑ってるのか?信じられないならわからせてやる。
「え、あ……い、井吹くん……!?」
「ん?」
「ん、じゃ……なくてっ」
困惑の色を滲ませる好葉を無視して更に距離を詰めた。いきなり縮まった距離に狼狽えているのがわかる。
「な、なんで……ちかっ……」
ゆっくりと顔を傾けて好葉の顔に寄せれば、ついにはぎゅ、と目を瞑り縮こまってしまった。瞑った隙間からぽろりと雫が溢れる。
瞑ったその顔が、強ばった口唇が、震える瞼が。どうしようもなく、口付けを強請られているように思えて。きっと好葉にはそんなつもり微塵もないんだろうけど、でも。
抗えない衝動に駆られた俺はそのまま好葉の唇に自分の唇を重ね合わせた。柔らかくてほんのり温かくて気持ちいい。もっと触れていたくて角度を変えて何度も口付ける。柔らかな唇を食むように弄んでやれば、好葉が声を漏らした。
「んっ……い、ぶきくん……」
俺の名前を呼ぶ好葉の声はいつもより甘ったるくて、熱がこもっていて。
やばい、止まれない。
「だめ、ぁ、んんぅ……」
制止の言葉を吐く好葉。そんなことはお構い無しに俺は何度となく好葉の唇を貪った。
触れて、離れて、また触れて。
そうしてどれくらい経っただろう。好葉が苦しそうに俺の胸を押し返したところで、名残を惜しみながらそっと解放してやる。落ち着くまで背中を優しく撫でてやると好葉は小さく肩を揺らした。
「ふぁ……」
「これでわかっただろ」
「へ……?」
「俺、好葉のことしか見えてねぇから。だからもう、妬く必要なんてねぇよ」
そう言ってやれば好葉はぱちぱちと瞬きを繰り返した後、ふにゃりと顔を緩ませた。
「うん……」
嬉しそうに微笑むその姿があまりにも可愛くて思わず抱き締めてやった。すると今度はおずおずと背中に腕が回される。その反応にまた愛おしさが募るのを感じた。
ああもう、本当にこいつは……俺をどうしたいんだよ……!
(好葉視点)
井吹くんはモテる。そりゃあもう、びっくりするくらい。
だってカッコイイし背は高いし運動もできる。ちょっとデリカシーないところもあるけど、それさえも女の子達からしたら可愛いポイントだったりするらしい。井吹くんを一目見ようと宿舎まで押しかける子も少なくはない。
うちは、ただのチームメイト。それだけのはずだから、井吹くんが誰とどうしてようが気にしなくてもいい。
そう、思ってたはずなのに。
「……」
遠目から女の子達に囲われてる井吹くん見る。すごく面倒臭そうにしてるけど、それでも邪険に扱ったりはしなかった。
女の子達はみんなキラキラした目を井吹くんに向けている。みんな可愛らしかったり美人さんだったり。ちんちくりんなうちとは全然違う。
……何だか胸がモヤモヤする。もやもやして、チクチク痛くて、息が上手くできないくらい苦しい。どうしよう。こんな気持ち、うちが持っていいものじゃないのに。
「……好葉?」
「ひゃっ!?」
いきなり声をかけられてびっくりして変な声が出てしまう。振り向けば井吹くんがきょとんとした表情で立っていた。うちがちょっと考え込んでいる間に女の子達から解放されていたらしい。
「ぼけっとしてどうしたんだよ」
「う、ううん……なんでもないの……」
どうしようどうしよう。うまく笑えない。喉がカラカラに渇いて張り付いたみたいになって、言葉が出てこない。
「……好葉、ちょっとこっち来い」
「えっ?」
そんなうちを見て井吹くんは何かを察したのかうちの手を引いて歩き出した。そしてそのまま近くの空き部屋に連れてかれる。
中に入るなり井吹くんはうちに向き直って、真剣な眼差しでうちを見た。その目に見られるとなんだか緊張してしまって、思わず俯いてしまう。
井吹くんは何も言わなくて、それが余計に不安を募らせた。嫌な汗が背中を伝っていく感覚がする。どうしよう、嫌われちゃったかな。
そう思った瞬間、ぎゅうと抱きしめられた。ふわりと漂う井吹くんの匂いに鼓動が速くなっていくのが分かる。
「い、ぶき……く」
「なんでんな顔するんだよ」
「そ、そんな顔って……?」
「不安そうな顔」
井吹くんの大きな掌がうちの頬に触れる。親指で目元を優しくなぞられると擽ったくて身を捩った。それでも井吹くんは離してくれなくて、それどころか更に強く抱き締めてくるものだからうちには為す術がない。ただされるがままに井吹くんの腕の中で大人しくするしかなかった。
優しげな手つきで頭を撫でられる。井吹くんの手、あったかいな。安心するな。……やっぱり、好きだな。自然とそんな想いが込み上げてきて泣きたくなった。
「だから、そんな顔すんなって」
「……ごめんなさい」
「謝らなくていい。ただ俺は、好葉がどうしてそんな顔してんのか知りたいんだよ」
教えてくれよ。そう耳元で囁かれて身体が跳ねた。井吹くんの吐息がかかる度にぞくぞくとした感覚が背中を走る。それが何だか恥ずかしくて身を捩ったけれど、逃さないと言うように強く抱き締められてしまった。
もう、ダメだ。これ以上隠しきれないよ。観念したうちは井吹くんの背中に腕を回してぎゅうとしがみついた。そしてそのまま井吹くんの胸元に顔を埋める。
「っ、その……井吹くんが、女の子に囲まれてるの見てたら……モヤモヤして……それで……」
あぁもう何を言ってるんだか自分でもわからない。伝えたくなんてないのに、口は勝手に動いてしまう。うちのことなんてただのチームメイトとしか思ってないあなたにこんな気持ちを伝えるのはおかしいって分かってるけど、でも。
「やだなって、思っちゃったの」
意を決したうちは顔を上げて井吹くんを見上げた。こんなこと言われてもきっと、困るだろうけど。うちはどうしようもないくらい井吹くんのこと、好きになってる。
これ以上の言葉は迷惑になるだろうから、言わない。だからこの回りくどい言葉だけ、これだけは伝えさせてほしいな。
そう思って真っ直ぐに見つめたら井吹くんの顔は真っ赤に染まっていた。
え、なんで?
(井吹視点)
特に興味のない、好みでもない女達に取り囲まれて、俺は心の中で盛大に舌打ちをした。
こんな時までよくやるもんだと、正直呆れてる。鬱陶しいしめんどくさいし、勘弁してくれと思いながら適当に受け流していた時だった。
視線を感じてそちらを見遣れば、少し離れたところで好葉が何やらこっちを見ながら不安そうな表情をしていた。ぎゅっと拳を握って俯いているその姿に胸の奥がざわつく。
こんな女共より好葉が気になって仕方なかった。何故そんな顔をしているのか、何を思っているのか、気になって、仕方なくて。あの顔は絶対何かある。そう思うと自然と足は動き出していた。
『っ、その……井吹くんが、女の子に囲まれてるの見てたら……モヤモヤして……それで……』
『やだなって、思っちゃったの』
誰も居ない部屋まで連れて、問い質してみればとんでもない言葉が返ってきた。
真ん丸な瞳を潤ませて、耳まで真っ赤にして、唇を震わせながら。そんな反応をされて、俺がどう感じるかなんてこいつは絶対分かってない。
好葉の言葉に俺まで顔に熱が集まってきた。やばい、何だこれ。好葉が可愛すぎてどうにかなりそうだ。俺の真っ赤になった顔を見て、なんで?とでも言いたげに好葉は首を傾げるその仕草でさえ愛おしい。
「いぶきくん……?」
黙り込んだまま何も反応しない俺に不安を感じたのか、窺うように俺の名前を呼ぶ。小さな手が縋るように服をきゅ、と掴んだ。たったそれだけのことで、心拍数が跳ね上がる。
軽く触られただけで、これだ。さっき気付いたばかりのこの気持ちは、もうとっくに俺の理性を蝕んでいた。
「好葉……それってさ」
「っ、あ……」
そっと頬に手を添えてやれば好葉はぴくりと肩を跳ねさせた。その反応にまた心臓が高鳴る。ああもう、本当に勘弁してくれ。これ以上俺をどうしたいんだお前は。
「妬いたって、ことだよな?あいつらに」
そう告げれば好葉の頬が更に赤く染まる。うう、と唸りながら視線を泳がせてはまた俯いて。否定の言葉も肯定の言葉も紡がない。
……けど、多分そういうことだよな?いつも控えめで滅多に我儘なんて言わない好葉がここまで曝け出してくれたんだ。自惚れでも勘違いでもないはず。
「なぁ、こっち見ろって」
「だめっ……いま、ぜったいへんなかおしてる……」
ふるふる首を振って俯き続ける好葉。伏し目がちなその仕草が妙に艶かしい。
蚊の鳴くような声で、だめ、と繰り返す好葉。その全てが俺の欲を煽って仕方がない。
「俺はどんな好葉も見たい」
「や……っ」
「頼むよ、な?」
「……う……」
優しく言い聞かせるように言えば、やがて観念したのかおずおずと顔を上げた。むぅ、と頬を膨らましながらも素直に従うこの様子。少しは心を開いてくれてる証拠だって自惚れてもいいんだろうか。
潤んだ瞳に、染まった頬。そして極め付けは羞恥から来るであろう涙の膜が張った瞳と上目遣い。……これは、やばいな。自制が効かなくなりそうだ。
「可愛い」
「へっ……?そ、そんなこと……」
「可愛いよ、すげぇ可愛い。可愛すぎて頭おかしくなりそう」
お世辞なんかじゃなく心の底からそう思ったからそう言ったまでだ。なのに好葉はまだ信じられないとでも言うように目を丸くしている。
俺の言葉を疑ってるのか?信じられないならわからせてやる。
「え、あ……い、井吹くん……!?」
「ん?」
「ん、じゃ……なくてっ」
困惑の色を滲ませる好葉を無視して更に距離を詰めた。いきなり縮まった距離に狼狽えているのがわかる。
「な、なんで……ちかっ……」
ゆっくりと顔を傾けて好葉の顔に寄せれば、ついにはぎゅ、と目を瞑り縮こまってしまった。瞑った隙間からぽろりと雫が溢れる。
瞑ったその顔が、強ばった口唇が、震える瞼が。どうしようもなく、口付けを強請られているように思えて。きっと好葉にはそんなつもり微塵もないんだろうけど、でも。
抗えない衝動に駆られた俺はそのまま好葉の唇に自分の唇を重ね合わせた。柔らかくてほんのり温かくて気持ちいい。もっと触れていたくて角度を変えて何度も口付ける。柔らかな唇を食むように弄んでやれば、好葉が声を漏らした。
「んっ……い、ぶきくん……」
俺の名前を呼ぶ好葉の声はいつもより甘ったるくて、熱がこもっていて。
やばい、止まれない。
「だめ、ぁ、んんぅ……」
制止の言葉を吐く好葉。そんなことはお構い無しに俺は何度となく好葉の唇を貪った。
触れて、離れて、また触れて。
そうしてどれくらい経っただろう。好葉が苦しそうに俺の胸を押し返したところで、名残を惜しみながらそっと解放してやる。落ち着くまで背中を優しく撫でてやると好葉は小さく肩を揺らした。
「ふぁ……」
「これでわかっただろ」
「へ……?」
「俺、好葉のことしか見えてねぇから。だからもう、妬く必要なんてねぇよ」
そう言ってやれば好葉はぱちぱちと瞬きを繰り返した後、ふにゃりと顔を緩ませた。
「うん……」
嬉しそうに微笑むその姿があまりにも可愛くて思わず抱き締めてやった。すると今度はおずおずと背中に腕が回される。その反応にまた愛おしさが募るのを感じた。
ああもう、本当にこいつは……俺をどうしたいんだよ……!
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