好葉ちゃん関連
一方通行の想い(いぶ←この)
ぎゅ、と井吹のジャージの裾を掴む。少し驚いてこちらを振り向いた彼に顔を見られたくなくて、思わず俯いてしまう。
好きになったきっかけなんて覚えていない。最初はただ時々お話するだけの関係だったはずなのに、いつの間にか隣にいることが当たり前になっていて。自覚したのは最近だけど、きっとずっと前から好きになっていたんだと思う。
「どうした?」
井吹の優しい声が聞こえてくる。その声に応えるように恐る恐る顔を上げると、柔らかく微笑む彼と目が合った。
以前の彼とは比べものにならないくらい優しい表情。前までは誰に対しても上からというか、どこか不遜な態度でどちらか言えば苦手だったはずなのに。
「あのね」
今は、その笑顔ひとつで嬉しくなって舞い上がってしまうほど、井吹のことが大好きになっていた。
「あの……あのね」
伝えたい言葉は喉につかえて出てこない。一度深呼吸をして心を落ち着かせる。緊張で震える唇を動かして言葉を紡いだ。
「……手、つなぎたい……いい?」
やっとの思いで伝えた言葉はとても小さな声で。それでも井吹の耳には届いたようで、一瞬驚いた顔をした後すぐに笑ってくれた。
「ほら」
差し出された手におずおずと自分の手を乗せると、優しく握り返される。井吹の手は大きくて温かくて安心する。嬉しくてぎゅっと力を込めると彼も同じくらいの強さで返してくれた。それが何だかくすぐったくて思わず笑みがこぼれる。
「んへっ……」
「なんだよ」
井吹の声もどこか弾んでいて、きっと同じ気持ちなんだと思うと胸が高鳴る。もっと近づきたくて、少しだけ彼の方へ身体を寄せて触れ合わせる。それだけでドキドキして体温が上がっちゃうけど嫌じゃなくて。むしろずっとこうしていたいと思うほど心地よかった。
「……ふふ」
「なに笑ってんだよ」
「ううん、なんでもない」
きっと井吹には伝わっていないのだろう。それだけがちょっとだけ悔しくて今度はこちらから手を握る力を強くした。すると少し驚いた後、同じくらいの力で握り返してくれる。
それが嬉しくて、幸せで、思わず笑みがこぼれた。
ぎゅ、と井吹のジャージの裾を掴む。少し驚いてこちらを振り向いた彼に顔を見られたくなくて、思わず俯いてしまう。
好きになったきっかけなんて覚えていない。最初はただ時々お話するだけの関係だったはずなのに、いつの間にか隣にいることが当たり前になっていて。自覚したのは最近だけど、きっとずっと前から好きになっていたんだと思う。
「どうした?」
井吹の優しい声が聞こえてくる。その声に応えるように恐る恐る顔を上げると、柔らかく微笑む彼と目が合った。
以前の彼とは比べものにならないくらい優しい表情。前までは誰に対しても上からというか、どこか不遜な態度でどちらか言えば苦手だったはずなのに。
「あのね」
今は、その笑顔ひとつで嬉しくなって舞い上がってしまうほど、井吹のことが大好きになっていた。
「あの……あのね」
伝えたい言葉は喉につかえて出てこない。一度深呼吸をして心を落ち着かせる。緊張で震える唇を動かして言葉を紡いだ。
「……手、つなぎたい……いい?」
やっとの思いで伝えた言葉はとても小さな声で。それでも井吹の耳には届いたようで、一瞬驚いた顔をした後すぐに笑ってくれた。
「ほら」
差し出された手におずおずと自分の手を乗せると、優しく握り返される。井吹の手は大きくて温かくて安心する。嬉しくてぎゅっと力を込めると彼も同じくらいの強さで返してくれた。それが何だかくすぐったくて思わず笑みがこぼれる。
「んへっ……」
「なんだよ」
井吹の声もどこか弾んでいて、きっと同じ気持ちなんだと思うと胸が高鳴る。もっと近づきたくて、少しだけ彼の方へ身体を寄せて触れ合わせる。それだけでドキドキして体温が上がっちゃうけど嫌じゃなくて。むしろずっとこうしていたいと思うほど心地よかった。
「……ふふ」
「なに笑ってんだよ」
「ううん、なんでもない」
きっと井吹には伝わっていないのだろう。それだけがちょっとだけ悔しくて今度はこちらから手を握る力を強くした。すると少し驚いた後、同じくらいの力で握り返してくれる。
それが嬉しくて、幸せで、思わず笑みがこぼれた。
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