好葉ちゃん関連
キスの意味
井吹は二人きりになると途端にべったりになる。それは付き合う前もそうだったけど、付き合ってからはもっと顕著になった気がする。
例えば今だってそうだ。膝の上に乗せ、後ろからしっかりと好葉を抱き締めている。お腹の前で組まれた腕は太くて力強い。首筋にかかる吐息がくすぐったくて身をよじると、逃さないとばかりに腕の力が強くなった。
「逃げんなって」
低く唸るような声。余裕のない声色はどこか甘く、ぞくりとしたものが背中を走る。その声に腰砕けになってへにゃりと井吹に寄りかかると、それを待っていたと言わんばかりにさらに密着してきた。
すり、と頬を寄せられて吐息が当たる。それが恥ずかしくて離れようとするが、お腹の前で組まれた腕がそれを許してくれない。それどころか逆に引き寄せられてしまい更に体が密着する形になった。
「い、井吹くん……近い、よ……」
「別に良いだろ、恋人同士なんだし」
改めて言われると気恥ずかしくて俯いてしまう。井吹はそんな好葉の反応に気を良くしたまま、耳元へ顔を寄せてきた。
「まだ慣れてねぇの?」
「だ、だって……」
「まぁ、そういうとこも可愛いと思うが」
至極当然といった風にさらっと恥ずかしいことを言うものだから頬が熱くなる。井吹はそんな好葉の反応を面白がっているようで、ちゅっと首筋に口付けてきた。
「ひゃっ!?」
突然のことに驚いて顔を上げると井吹と目が合った。その瞳には熱が籠っていてドキリとする。そのままじっと見つめられているとだんだん恥ずかしくなってきて。啄まれた首を押さえながら、ぎゅっと目瞑る。
(く、首へのキスって……)
随分前に見た少女向け雑誌で見かけたことを思い出す。確か首へのキスは『執着』を示すものだったはずだ。
その事に思い当たった瞬間、胸がぎゅーっと締め付けられるような感覚がした。井吹が自分に対してその『執着』を向けているということが嬉しかったからだ。
「なぁ」
「ひゃいっ!?」
思考に耽っていたせいで突然声をかけられたことに驚いて変な声が出てしまう。井吹はそんな好葉の様子が面白かったのか、くっと喉の奥で笑った後口を開いた。
「返事は?」
「ぇ」
「お前の気持ち、同じように返してくれよ」
「ぅ……ぁ、それは、その……」
それは井吹と同じようにキスしろということだろうか。そう考えると急に恥ずかしくなってきて身体が熱を持つ。
彼からは何度もキスされている。頬や額、手の甲など場所を問わず色んなところにたくさんされてきた。でも自分からしたことはまだ一度もない。
「早く」
「……っ……」
急かすような井吹の声。その声色には期待の色が滲んでいる。きっと好葉からキスをしてくれることを望んでいるのだろう。恥ずかしいけれど、それ以上に応えたいという気持ちが強かった。パッと顔から手を放して井吹の方を振り返る。
どこにしようか、なんて考えてる余裕もなく恐る恐る井吹の頰に口付ける。一瞬触れるだけの、控えめなものだったけどそれだけで精一杯だった。
「こ、これでいい……?」
「……ん」
じとっと熱のこもった視線。どこか不満そうな色を宿した返事に好葉は思わず息を呑んだ。
(あ、)
さっきは急なことで忘れていたた口付ける場所の意味を思い出す。頬へのキスは『親愛』の意味を持つもの。それに対して不満げだということは……
「好葉……」
「待っ、て……!」
ムスッとした様子で何か言いかけた井吹を止める。
「……あ、あの……ね……」
緊張しながら井吹の頬へ手を伸ばす。そしてそのままゆっくりと顔を近づけていって、唇に触れるだけのキスをした。ちゅっと軽いリップ音が鳴り、すぐに離れる。
「こ、これがうちからの本当の返事、です」
今までの何よりも恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。逆に井吹は見たことが無いくらい緩々と表情が蕩けていく。
「お前それ、そういう事言うの反則」
言いながら、好葉の顔中にキスの雨を降らせていく。触れてないところは無いんじゃないかと思えるくらいたっぷり口付けられて、ふわ、と力が抜けた好葉の身体を井吹は支えた。
「我慢出来なくなるだろ」
「え……?……へぁっ!?」
不穏な言葉を聞いて慌てて彼の方を見た。その時、井吹の瞳孔が開いてることに気づく。それはまさに獲物を狙う獣のような鋭さをもっていて……思わずぶるりと身体を震わせてしまう。
「いいよな、もっとして」
親指が唇に触れ、下唇をなぞられる。たったそれだけの事で腰が砕けそうになるが、井吹はしっかりと好葉を抱き締めて逃してくれそうにない。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「待たない」
ちゅ、と音を立てて口付けられる。そのまま舌を差し込まれて口内を蹂躙される頃には、もう抵抗する気力なんて無くなっていてただ彼を受け入れることしか出来なくなっていた。
井吹は二人きりになると途端にべったりになる。それは付き合う前もそうだったけど、付き合ってからはもっと顕著になった気がする。
例えば今だってそうだ。膝の上に乗せ、後ろからしっかりと好葉を抱き締めている。お腹の前で組まれた腕は太くて力強い。首筋にかかる吐息がくすぐったくて身をよじると、逃さないとばかりに腕の力が強くなった。
「逃げんなって」
低く唸るような声。余裕のない声色はどこか甘く、ぞくりとしたものが背中を走る。その声に腰砕けになってへにゃりと井吹に寄りかかると、それを待っていたと言わんばかりにさらに密着してきた。
すり、と頬を寄せられて吐息が当たる。それが恥ずかしくて離れようとするが、お腹の前で組まれた腕がそれを許してくれない。それどころか逆に引き寄せられてしまい更に体が密着する形になった。
「い、井吹くん……近い、よ……」
「別に良いだろ、恋人同士なんだし」
改めて言われると気恥ずかしくて俯いてしまう。井吹はそんな好葉の反応に気を良くしたまま、耳元へ顔を寄せてきた。
「まだ慣れてねぇの?」
「だ、だって……」
「まぁ、そういうとこも可愛いと思うが」
至極当然といった風にさらっと恥ずかしいことを言うものだから頬が熱くなる。井吹はそんな好葉の反応を面白がっているようで、ちゅっと首筋に口付けてきた。
「ひゃっ!?」
突然のことに驚いて顔を上げると井吹と目が合った。その瞳には熱が籠っていてドキリとする。そのままじっと見つめられているとだんだん恥ずかしくなってきて。啄まれた首を押さえながら、ぎゅっと目瞑る。
(く、首へのキスって……)
随分前に見た少女向け雑誌で見かけたことを思い出す。確か首へのキスは『執着』を示すものだったはずだ。
その事に思い当たった瞬間、胸がぎゅーっと締め付けられるような感覚がした。井吹が自分に対してその『執着』を向けているということが嬉しかったからだ。
「なぁ」
「ひゃいっ!?」
思考に耽っていたせいで突然声をかけられたことに驚いて変な声が出てしまう。井吹はそんな好葉の様子が面白かったのか、くっと喉の奥で笑った後口を開いた。
「返事は?」
「ぇ」
「お前の気持ち、同じように返してくれよ」
「ぅ……ぁ、それは、その……」
それは井吹と同じようにキスしろということだろうか。そう考えると急に恥ずかしくなってきて身体が熱を持つ。
彼からは何度もキスされている。頬や額、手の甲など場所を問わず色んなところにたくさんされてきた。でも自分からしたことはまだ一度もない。
「早く」
「……っ……」
急かすような井吹の声。その声色には期待の色が滲んでいる。きっと好葉からキスをしてくれることを望んでいるのだろう。恥ずかしいけれど、それ以上に応えたいという気持ちが強かった。パッと顔から手を放して井吹の方を振り返る。
どこにしようか、なんて考えてる余裕もなく恐る恐る井吹の頰に口付ける。一瞬触れるだけの、控えめなものだったけどそれだけで精一杯だった。
「こ、これでいい……?」
「……ん」
じとっと熱のこもった視線。どこか不満そうな色を宿した返事に好葉は思わず息を呑んだ。
(あ、)
さっきは急なことで忘れていたた口付ける場所の意味を思い出す。頬へのキスは『親愛』の意味を持つもの。それに対して不満げだということは……
「好葉……」
「待っ、て……!」
ムスッとした様子で何か言いかけた井吹を止める。
「……あ、あの……ね……」
緊張しながら井吹の頬へ手を伸ばす。そしてそのままゆっくりと顔を近づけていって、唇に触れるだけのキスをした。ちゅっと軽いリップ音が鳴り、すぐに離れる。
「こ、これがうちからの本当の返事、です」
今までの何よりも恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。逆に井吹は見たことが無いくらい緩々と表情が蕩けていく。
「お前それ、そういう事言うの反則」
言いながら、好葉の顔中にキスの雨を降らせていく。触れてないところは無いんじゃないかと思えるくらいたっぷり口付けられて、ふわ、と力が抜けた好葉の身体を井吹は支えた。
「我慢出来なくなるだろ」
「え……?……へぁっ!?」
不穏な言葉を聞いて慌てて彼の方を見た。その時、井吹の瞳孔が開いてることに気づく。それはまさに獲物を狙う獣のような鋭さをもっていて……思わずぶるりと身体を震わせてしまう。
「いいよな、もっとして」
親指が唇に触れ、下唇をなぞられる。たったそれだけの事で腰が砕けそうになるが、井吹はしっかりと好葉を抱き締めて逃してくれそうにない。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「待たない」
ちゅ、と音を立てて口付けられる。そのまま舌を差し込まれて口内を蹂躙される頃には、もう抵抗する気力なんて無くなっていてただ彼を受け入れることしか出来なくなっていた。