好葉ちゃん関連
触れたい、離したくない
ちょこちょことした歩幅で隣を歩く好葉の腕に、ツンと触れる。
いつからだろうか、彼女にこう触れたいと思い始めたのは。妹みたいな存在として見ていたはずなのに、いつの間にか彼女を目で追うようになっていた。無意識のうちに隣を占位して、触れる機会を伺うようになって。
「井吹くん?」
ふわふわとした深緑の髪を揺らしながら、小首を傾げる。まん丸な瞳が不思議そうにこちらを見上げ、じっと井吹の挙動を観察していた。
「あー……、その、なんだ」
もっと触れたい、なんて。はっきりと口にするのは躊躇われた。
言葉にしてしまえばきっと、止らなくなってしまうから。
「当たって悪かった」
さっと手を引っ込め、決まりが悪そうにそっぽを向く。しかし、そんな井吹の葛藤など露知らず。
好葉はぷくりと頬を膨らませると、ぴたりとその場に留まった。それにつられ、井吹もまた立ち止まる。
「どうして謝るの」
「は……」
「うち、別に嫌なんて言ってない」
紅葉みたいな小さな手が、井吹の人差し指を握る。少し汗ばんだ手のひらは、ほんのりと熱を孕んでいた。
「いいから、これくらい」
好葉の指が、井吹の指をゆっくりと絡め取る。その手のあまりの小ささに、井吹は肩を竦めた。一個下だけだといのに井吹のそれよりも一回りも二回りも小さくて、壊れてしまいそうなほどの無垢さを感じる。
握り返しても、いいのだろうか。
「っ、」
おそるおそる指先を動かす。そっと触れ、指の腹で柔く撫で上げた。小さな手のひらは井吹の手にすっぽりと収まってしまい、それが何ともいじらしい。
好葉は何も言わず、ただ繋がれた手を見つめていた。ほんのりと頬を赤らめ、少し俯くような仕草は酷く愛らしい。
もっと触れたい。
その欲が井吹の理性を蝕んでいく。
好葉の指の間に自分の指を滑り込ませる。そして、そのままぎゅっと握り締めた。細い指がぴくりと動き、それから遠慮がちに握り返される。それが嬉しくて堪らなくて、井吹は好葉の華奢な手を引いた。
「わわっ」
突然のことにバランスを崩した好葉を受け止め、そのまま抱きしめる。自分の腹辺りまでしかない小さな身体。この身体でチームを守ってくれたのかと思うと、胸の中に熱いものが広がった。
もっと近くで感じたい。その欲求がじわじわと井吹の脳内を支配し、次の瞬間には身体が動いていた。
「ふぇっ!?い、いぶきくん……!」
腰と太ももの下に腕を滑り込ませ、そのまま持ち上げる。抱き上げた身体は想像以上に軽く、片手でも十分に持ち上げられそうだ。
急展開についていけない好葉は、顔を赤くしてもぞもぞと身動いだ。
「っ、おろして」
ぎゅーっと目を閉じ、井吹に縋りつく。落ちないようにする為だろうか。ただ井吹にとっては、好葉の方からも抱きついてくれているように見えて。
「悪い。離したくない」
直球の言葉に、好葉は目を大きく見開いた。ふくふくとした頬が更に赤みを帯び、やがてその熱は顔全体へと広がっていく。伏せていた瞳がそろりと井吹を見上げ、それから恥ずかしそうに顔を背けた。
どうやら嫌ではないらしい。そんな事実だけで、自分は簡単に舞い上がってしまうのだ。
「好葉」
もう一度名前を呼んで、さらに強く抱きしめる。柔らかな香りが鼻腔をくすぐり、井吹はそっと目を閉じた。
好葉は抵抗せず、ただされるがままになっている。心臓の音は聞こえてしまうだろうか。聞こえてもいいと思えたし、聞こえないでほしいとも思ってしまう。
その矛盾した気持ちを抱えながら、ゆっくりと歩き出した。
ちょこちょことした歩幅で隣を歩く好葉の腕に、ツンと触れる。
いつからだろうか、彼女にこう触れたいと思い始めたのは。妹みたいな存在として見ていたはずなのに、いつの間にか彼女を目で追うようになっていた。無意識のうちに隣を占位して、触れる機会を伺うようになって。
「井吹くん?」
ふわふわとした深緑の髪を揺らしながら、小首を傾げる。まん丸な瞳が不思議そうにこちらを見上げ、じっと井吹の挙動を観察していた。
「あー……、その、なんだ」
もっと触れたい、なんて。はっきりと口にするのは躊躇われた。
言葉にしてしまえばきっと、止らなくなってしまうから。
「当たって悪かった」
さっと手を引っ込め、決まりが悪そうにそっぽを向く。しかし、そんな井吹の葛藤など露知らず。
好葉はぷくりと頬を膨らませると、ぴたりとその場に留まった。それにつられ、井吹もまた立ち止まる。
「どうして謝るの」
「は……」
「うち、別に嫌なんて言ってない」
紅葉みたいな小さな手が、井吹の人差し指を握る。少し汗ばんだ手のひらは、ほんのりと熱を孕んでいた。
「いいから、これくらい」
好葉の指が、井吹の指をゆっくりと絡め取る。その手のあまりの小ささに、井吹は肩を竦めた。一個下だけだといのに井吹のそれよりも一回りも二回りも小さくて、壊れてしまいそうなほどの無垢さを感じる。
握り返しても、いいのだろうか。
「っ、」
おそるおそる指先を動かす。そっと触れ、指の腹で柔く撫で上げた。小さな手のひらは井吹の手にすっぽりと収まってしまい、それが何ともいじらしい。
好葉は何も言わず、ただ繋がれた手を見つめていた。ほんのりと頬を赤らめ、少し俯くような仕草は酷く愛らしい。
もっと触れたい。
その欲が井吹の理性を蝕んでいく。
好葉の指の間に自分の指を滑り込ませる。そして、そのままぎゅっと握り締めた。細い指がぴくりと動き、それから遠慮がちに握り返される。それが嬉しくて堪らなくて、井吹は好葉の華奢な手を引いた。
「わわっ」
突然のことにバランスを崩した好葉を受け止め、そのまま抱きしめる。自分の腹辺りまでしかない小さな身体。この身体でチームを守ってくれたのかと思うと、胸の中に熱いものが広がった。
もっと近くで感じたい。その欲求がじわじわと井吹の脳内を支配し、次の瞬間には身体が動いていた。
「ふぇっ!?い、いぶきくん……!」
腰と太ももの下に腕を滑り込ませ、そのまま持ち上げる。抱き上げた身体は想像以上に軽く、片手でも十分に持ち上げられそうだ。
急展開についていけない好葉は、顔を赤くしてもぞもぞと身動いだ。
「っ、おろして」
ぎゅーっと目を閉じ、井吹に縋りつく。落ちないようにする為だろうか。ただ井吹にとっては、好葉の方からも抱きついてくれているように見えて。
「悪い。離したくない」
直球の言葉に、好葉は目を大きく見開いた。ふくふくとした頬が更に赤みを帯び、やがてその熱は顔全体へと広がっていく。伏せていた瞳がそろりと井吹を見上げ、それから恥ずかしそうに顔を背けた。
どうやら嫌ではないらしい。そんな事実だけで、自分は簡単に舞い上がってしまうのだ。
「好葉」
もう一度名前を呼んで、さらに強く抱きしめる。柔らかな香りが鼻腔をくすぐり、井吹はそっと目を閉じた。
好葉は抵抗せず、ただされるがままになっている。心臓の音は聞こえてしまうだろうか。聞こえてもいいと思えたし、聞こえないでほしいとも思ってしまう。
その矛盾した気持ちを抱えながら、ゆっくりと歩き出した。
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