化け猫来りて恩返す
海堂の家には猫が居る 雨の日に拾ってから一緒に暮らすようになった
人懐っこく食欲旺盛な紫色の目の猫は海堂が座るとすぐに飛んできて撫でろと膝の上に乗ってきたり、ザラついた舌で舐めたり甘噛みしてくる すりすりゴロゴロと甘えられるのは悪くない
一つ欠点があるとすれば
「…桃城」
「ん?」
「人の時に乗るな」
猫は猫でも化け猫だった
猫は自分を桃城と名乗り、長く生きたら人の姿に化けられるようになったと言った 非科学的すぎて信じられなかったが、目の前で姿が変わったのを見せられては信じるしかなかった
恩を返すまでお前から離れてやらないとカラリと笑った猫を追い出せずに共同生活を始めてから半月が過ぎた
スーパーの福引きで米が当たったり、たまに冷蔵庫に買った覚えのない魚が入っている事は何度かあるが、未だに猫は家から出ていかない
「何でだよ」
「重いって言ってんだろ、降りるか猫になれ」
人に化けた時の桃城は海堂と同い年くらいの男の姿をしているが、姿は変わっても習性はほとんど猫のままで、猫じゃらしを好んだりすりすりと寄ってきては顔を舐めたり海堂の上に乗りたがる 猫ならかわいいが自分と近い体格の男に舐められたり乗られても全く嬉しくない なのに桃城は何度言ってもどこ吹く風とすりすりゴロゴロと甘えてくる
その上桃城は海堂より力が強くて加減が下手くそで、力ずくで無理矢理降ろそうとしたら激しく抵抗されてひどい目にあった それ以来叱る際には一度冷静になるようにしているが、人の姿で頭突きをされた時はあまりの痛さに喧嘩になった
いろいろ思うところはあるが、猫と暮らせるという強すぎるメリットには勝てなかった
今日も降りようとしない様子に諦めた海堂が桃城を膝に乗せたままスマホで猫用のおもちゃを探していると、話題のペースト状おやつの広告が表示される 人間用の食事を普通に食べて簡単な料理も作れる桃城に今まで猫缶などをあげた事がなかった
「…お前こんなの食うのか?」
「あー、これな! 一回食べてみてーなって思ってたんだ」
猫が夢中になって舐める動画を興味津々と言った様子で見る桃城に、今度一袋買ってみるかと考える
「いろいろ味あるんだな」
「エビカツバーガー味あるか?」
「あるわけねぇだろ」
具体的すぎる食べ物の名前が出たのが気になり、好きなのかと聞くと桃城は頷いた
数日後、好奇心からペースト状おやつではなくエビカツバーガーを買って帰ったら、喜んだ桃城がずっと離れなくて大変な思いをするのだった
人懐っこく食欲旺盛な紫色の目の猫は海堂が座るとすぐに飛んできて撫でろと膝の上に乗ってきたり、ザラついた舌で舐めたり甘噛みしてくる すりすりゴロゴロと甘えられるのは悪くない
一つ欠点があるとすれば
「…桃城」
「ん?」
「人の時に乗るな」
猫は猫でも化け猫だった
猫は自分を桃城と名乗り、長く生きたら人の姿に化けられるようになったと言った 非科学的すぎて信じられなかったが、目の前で姿が変わったのを見せられては信じるしかなかった
恩を返すまでお前から離れてやらないとカラリと笑った猫を追い出せずに共同生活を始めてから半月が過ぎた
スーパーの福引きで米が当たったり、たまに冷蔵庫に買った覚えのない魚が入っている事は何度かあるが、未だに猫は家から出ていかない
「何でだよ」
「重いって言ってんだろ、降りるか猫になれ」
人に化けた時の桃城は海堂と同い年くらいの男の姿をしているが、姿は変わっても習性はほとんど猫のままで、猫じゃらしを好んだりすりすりと寄ってきては顔を舐めたり海堂の上に乗りたがる 猫ならかわいいが自分と近い体格の男に舐められたり乗られても全く嬉しくない なのに桃城は何度言ってもどこ吹く風とすりすりゴロゴロと甘えてくる
その上桃城は海堂より力が強くて加減が下手くそで、力ずくで無理矢理降ろそうとしたら激しく抵抗されてひどい目にあった それ以来叱る際には一度冷静になるようにしているが、人の姿で頭突きをされた時はあまりの痛さに喧嘩になった
いろいろ思うところはあるが、猫と暮らせるという強すぎるメリットには勝てなかった
今日も降りようとしない様子に諦めた海堂が桃城を膝に乗せたままスマホで猫用のおもちゃを探していると、話題のペースト状おやつの広告が表示される 人間用の食事を普通に食べて簡単な料理も作れる桃城に今まで猫缶などをあげた事がなかった
「…お前こんなの食うのか?」
「あー、これな! 一回食べてみてーなって思ってたんだ」
猫が夢中になって舐める動画を興味津々と言った様子で見る桃城に、今度一袋買ってみるかと考える
「いろいろ味あるんだな」
「エビカツバーガー味あるか?」
「あるわけねぇだろ」
具体的すぎる食べ物の名前が出たのが気になり、好きなのかと聞くと桃城は頷いた
数日後、好奇心からペースト状おやつではなくエビカツバーガーを買って帰ったら、喜んだ桃城がずっと離れなくて大変な思いをするのだった