TS
「大変だ海堂!! 真田副部長と桃城と乾さんが水を被ると女になる体質になった!!」
「もっとマシな冗談考えろ」
「冗談じゃねーって!! 何か中国の不思議な水が何かアレで、ホントに真田副部長がバインバインのどいんどいんなんだよ!!」
「寝ぼけてんのか、顔洗ってこい」
「ちげーよ!! とにかく見た方がはえーな!! 桃城!!」
「は〜い、キュートでナイスバディな女子の桃ちゃんですよ〜…」
部屋に入って来た桃城の変化にすぐに気付いた。いつもより声は高く、身長は低く、輪郭が丸くなっている。ジャージはぶかぶかで肩が落ちていて、Tシャツの胸元だけは丼を二つ入れたように不自然に盛り上がっていた。
「…どういう事だ」
「何か中国の不思議な水がどーのこーのって…」
「本当に女になったのか?」
「見る?」
ぺろんとTシャツを捲り上げると、ぷるんっと大きな胸が露わになる。下着は着けていない、ノーブラだ。桃色の先端を認識した瞬間、海堂は自分を殴った。
「何やってんだよ!?」
「うるせぇ、軽々しく見せんな。それより元に戻るんだろうな」
「お湯を被ると元に戻るとか何とかで今風呂沸かしてもらってる…いやお前こそ軽々しく殴んなよ…」
「そうだ、もっと自分を大事にしろよ! 俺なんかさっき信じられなくて真田副部長のおっぱい揉んだら拳骨されたんだぞ!」
「テメーはもう三発くらい殴られとけ」
海堂達が大浴場へ行くと、乾と真田も脱衣場で湯が沸くのを待っていた。真田は切原の表現通り「バインバインのどいんどいん」で、乾は眼鏡とスレンダーな体型のせいか大きな変化がないように感じられた。
「あの水は落ちた者を『水を被ると女性になる体質』にする泉から汲んできたものらしい。小容量のボトル一本分をさらに三人に分散されたおかげで効果は大きく薄れているようで、計算では一週間毎日風呂に入れば効果が消えて元に戻れるぞ」
「何故そんな水が合宿所にあるのだ…」
「よく分からなかったけど、アニメがどうのとスタッフが話していたよ」
「…あの、ホントにそれだけで治るんスか?」
恐る恐る挙手をする切原に視線が集まる。
「赤也、何か知っているのか」
「だってTSモノエロ同人だとそんな簡単に戻らなくて大体エッチするじゃないスか」
「てぃーえすものえろどうじんとは何だ」
「性別が変わる話を描いた性行為の描写がある漫画だ」
「何故そんなものを知っている赤也!!」
「すいませんっしたァ!!」
雷のような拳骨が切原の頭に落ちた。自業自得だと海堂は呆れる。
「でも切原の意見も一理あるね、念の為もう少し調べよう」
「そうだな、それを含めてコーチへ報告をしてこよう。貞治達はその間に風呂に入っていてくれ」
了承して女体化した三人はジャージを脱ぎ、柳達は慌てて止める。今までなかったしなやかな曲線に、流石に動揺を隠せない。
「体は異性だと忘れないでくれ貞治、俺達が困ってしまう」
「男の時でも少しは遠慮しろ!!」
「デッッッ!! じゃなくて、うおっ…じゃなくて!!」
「そんな事言って、実は見たいんだろ?」
桃城はニヤニヤと笑い、Tシャツをゆっくりジワジワと捲り上げる。次の瞬間、海堂が柳と切原を脱衣場から追い出した。
「やめんか桃城、はしたないだろう」
「はーい」
「…でも俺達も異性の体で風呂に入るのを何とも思ってないわけじゃないんだけどね…」