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 海堂は蛇が遠い先祖の獣人だ。爬虫類の血を引く獣人は寒さに弱い者が多いが日課の筋トレで鍛えた海堂のムキムキでバキバキの体は寒気には負けず、舌がやや長く先端が分かれている点を除けば普通の人間とほとんど変わらなかった。
 今までこんなものだと特に何とも思っていなかった舌だが、最近はこれも悪くないと思うようになった。それというのも交際相手である猫の獣人の桃城が、この舌を気に入っているらしいのだ。


「キスする時に舌入れるともっと凄いらしーぜ」

 先日海堂の部屋で軽い接吻を何度かした後、桃城が期待の眼差しを向けてきた。

「口は塞がってんだろ、どうやって舌を入れるんだ」

「知らねーけど、とりあえずやってみろよ」

 そう言うと返事も聞かずに桃城は柔らかい唇を押し付けてきた。それだけで海堂の興奮ゲージは瞬時に振り切れてしまう。いつもは緊張してピタリと閉じている唇が少しだけ開いていて、その隙間から舌をねじ込んだ。

 舌先が桃城の舌に触れる。熱くぬめる、ほんの少しざらりとしたその舌に触れた途端に、ビリビリとした強い刺激が海堂を襲った。もっと触れたい。味わいたい。もっと。

 じゅるじゅる。
 ぐちゅぐちゅ。
 ぬちゅぬちゅ。

 夢中になって貪る海堂の耳にそんな音は入らない。桃城の喘ぎと悲鳴の混ざった声も当然聞こえない。
 ドン、と強く胸を叩かれ、ようやく海堂は我に返った。肩を強く掴んでいた手の力が抜け、突き飛ばすように桃城が離れる。顔は赤く目は潤んでいて、海堂は走り出したいような衝動に駆られる。

「ッはぁ、っ、はぁ…ッ! すっ…すけべ!!」

「あぁ!?」

「エッチ! 変態! エロマムシ!」

「何ださっきから好き勝手言いやがって!!」

「しっ、舌が!」

「舌が何だ!?」

 さらに真っ赤になった桃城は黙り込んでしまう。その表情は腹立たしさを一瞬で消し去った。

「…すごかった…」

 普段の桃城からは考えられない程か細い声が聞こえてきた。海堂は堪らず、不意打ちのようにもう一度唇を重ねた。


 それから海堂は貪るような深いキスを桃城にするようになった。長い舌で深くまで愛してやるのも、解放した後のとろとろに蕩けた桃城を見るのも、どちらも気に入っていた。
 そして自分だけではなく桃城もそれを気に入ってるのが、何よりも海堂を満たしてくれた。わざと軽いキスで焦らすと拗ねたような表情で擦り寄ってきて、ゆらりと尻尾を揺らす。

「…海堂、舌」

「舌がどうした」

 桃城は焦れったそうに、触れてくれない唇をちろりと舐める。そこまでするなら自分から入れれば良いのに、桃城は必ず海堂からされるのを待つ。そんなところがまた海堂を煽るのだ。
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