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君と夏休み

桃城は肩を引き寄せられる感覚で目を覚ました 涼しくて静かに揺れる電車の中は心地よく、いつの間にか寝入ってしまっていたらしい 隣を見ると一年生達も寄りかかり合って眠っている
ぼんやりしていると反対側に座る人に寄りかかっていた事に気付いた

「…かいどう」

「起こしたか」

「ごめん、寝てた…今どこ?」

「あと半分くらいだ」

電車の中だからか聞き慣れた低い声はいつもより静かで、また夢の中に戻りそうだ

「…楽しかったな 来年も行こうな、また後輩誘ってさ」

「…ああ」

「テスト頑張ったら新しい水着買ってもらえるかな…そしたらお前、選ぶの付き合ってよ」

「今日着たのがあるだろ」

「小さくなるかもしれないだろ、成長期なんだし…」

言葉の途中でふあ、と欠伸が出た 腕に当たる温かさが眠気を誘う 起きていないとと思うのに瞼は閉じていく

「寝てろ、近くなったら起こす」

「良い…次の駅で起こして」

言い終えてすぐ眠りに落ち、桃城の体がふらりと一年生達の方に倒れそうになった 海堂は今度は起こさないようにそっと引き寄せ、自分の肩に寄りかからせる 腕から伝わる熱が少し熱かったが、一年生が潰されるよりは良い

がたんと電車が揺れる音と、寝息だけが聞こえる
すぐ近くからいつもの制汗剤の匂いがするのにやけに静かで、心臓の音が大きく聞こえるのはきっとそのせいだと思った
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