君と夏休み
「なぁ海堂」
「何だ」
ウォータースライダーを滑り終えた後、桃城が人の少ない場所で足を止めた
「水着の紐緩んだから結び直して欲しいんだけど」
「…は!?」
「ここ、首のヤツ」
濡れた髪を上げて首筋を晒す 首の後ろでリボン結びされていた紐は確かに結び目が緩くなっていて、海堂は咄嗟に目を閉じた
「みっ、見せようとすんな! 早く押さえろ!」
「バカ、何期待してんだよ! 首の紐が緩んだだけじゃ落ちねーよ!」
目を開けろと言われ恐る恐る海堂が薄目で桃城を見る 肌色の面積が増えていないのを確認し、安堵して目をしっかり開けた
「ワイヤー入ってるから簡単にはポロリしねーの! 残念だったな、このムッツリスケベ!」
「お…脅かすんじゃねぇ…って誰がムッツリだ!」
「お前に決まってんだろ! ほら、よろしくな!」
桃城が海堂に背を向けて緩んでいた紐を解いた 差し出された紐を受け取り、海堂は慎重にリボン結びをする
自分の靴紐を結ぶのとは勝手が違い、どのくらいの固さで結べば良いかも全く分からない
「こうか?」
「ちょっと緩いな、もっとキツくて良いよ」
「…このくらいか?」
「まだ緩い…お前外れるの狙ってないだろーな?」
「そんなわけねぇだろ!」
苦しくないように気遣っていただけなのに変な誤解をされて頭にきた 配慮を投げ捨ててグッと強く紐を引く
「いっ…! 待ってそれキツすぎ! お前器用なのか不器用なのか分かんねーな!」
「だったら人に頼まないで自分でやれ…っ!」
海堂は息を呑む 紐が強く引っ張られた事で胸が押し上げられクッキリと谷間ができ、さらに水着の端が胸に食い込んで溢れそうになっていたのが肩口からバッチリ見えてしまった
窮屈そうな胸元から慌てて目を逸らして紐に視線を集中させる これまでの評価から緩すぎずキツすぎずのポイントを見極めて結び直した
「…これならどうだ」
「あ、今度はちょうど良い! ありがとなムッツリマムシ!」
「だからムッツリじゃねぇ…」
「じゃあもう一回ウォータースライダー行こ! 海堂も前乗ってみたいだろ?」
危惧していた事態が発生してしまった
桃城の性格上絶対に何度も滑りたがるのは分かっていた、次にやるとしたら自分を前にさせようとするのも分かっていた
「…後ろで良い」
「前も楽しいって!」
「俺は後ろが良い」
「…もしかして前に乗るの怖いのかよ?」
気付け察しろオーラを出すも気付かれないどころか誤解をされた カチンときた海堂は思わず「そんなワケねぇ、乗れば良いんだろ」と言ってしまい、二周目に盛り上がる桃城の隣で激しく後悔するのだった
一年生が滑り終えるのを見届ける間に気持ちの整理をつける 自分が後ろに乗った時は隙間が空いていたから背中に当たる事はない
だから気のせいだ
背中に何か柔らかくも張りのあるものが当たってるのは気のせいだ
滑り終えた後に前も楽しいだろと聞かれるが、海堂は滑ってる最中の記憶は全くない ずっと柔らかい感触がしていた以外何も覚えていなかった
「何だ」
ウォータースライダーを滑り終えた後、桃城が人の少ない場所で足を止めた
「水着の紐緩んだから結び直して欲しいんだけど」
「…は!?」
「ここ、首のヤツ」
濡れた髪を上げて首筋を晒す 首の後ろでリボン結びされていた紐は確かに結び目が緩くなっていて、海堂は咄嗟に目を閉じた
「みっ、見せようとすんな! 早く押さえろ!」
「バカ、何期待してんだよ! 首の紐が緩んだだけじゃ落ちねーよ!」
目を開けろと言われ恐る恐る海堂が薄目で桃城を見る 肌色の面積が増えていないのを確認し、安堵して目をしっかり開けた
「ワイヤー入ってるから簡単にはポロリしねーの! 残念だったな、このムッツリスケベ!」
「お…脅かすんじゃねぇ…って誰がムッツリだ!」
「お前に決まってんだろ! ほら、よろしくな!」
桃城が海堂に背を向けて緩んでいた紐を解いた 差し出された紐を受け取り、海堂は慎重にリボン結びをする
自分の靴紐を結ぶのとは勝手が違い、どのくらいの固さで結べば良いかも全く分からない
「こうか?」
「ちょっと緩いな、もっとキツくて良いよ」
「…このくらいか?」
「まだ緩い…お前外れるの狙ってないだろーな?」
「そんなわけねぇだろ!」
苦しくないように気遣っていただけなのに変な誤解をされて頭にきた 配慮を投げ捨ててグッと強く紐を引く
「いっ…! 待ってそれキツすぎ! お前器用なのか不器用なのか分かんねーな!」
「だったら人に頼まないで自分でやれ…っ!」
海堂は息を呑む 紐が強く引っ張られた事で胸が押し上げられクッキリと谷間ができ、さらに水着の端が胸に食い込んで溢れそうになっていたのが肩口からバッチリ見えてしまった
窮屈そうな胸元から慌てて目を逸らして紐に視線を集中させる これまでの評価から緩すぎずキツすぎずのポイントを見極めて結び直した
「…これならどうだ」
「あ、今度はちょうど良い! ありがとなムッツリマムシ!」
「だからムッツリじゃねぇ…」
「じゃあもう一回ウォータースライダー行こ! 海堂も前乗ってみたいだろ?」
危惧していた事態が発生してしまった
桃城の性格上絶対に何度も滑りたがるのは分かっていた、次にやるとしたら自分を前にさせようとするのも分かっていた
「…後ろで良い」
「前も楽しいって!」
「俺は後ろが良い」
「…もしかして前に乗るの怖いのかよ?」
気付け察しろオーラを出すも気付かれないどころか誤解をされた カチンときた海堂は思わず「そんなワケねぇ、乗れば良いんだろ」と言ってしまい、二周目に盛り上がる桃城の隣で激しく後悔するのだった
一年生が滑り終えるのを見届ける間に気持ちの整理をつける 自分が後ろに乗った時は隙間が空いていたから背中に当たる事はない
だから気のせいだ
背中に何か柔らかくも張りのあるものが当たってるのは気のせいだ
滑り終えた後に前も楽しいだろと聞かれるが、海堂は滑ってる最中の記憶は全くない ずっと柔らかい感触がしていた以外何も覚えていなかった