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海桃と小人

『アイスが食べたくなる頃』

「ちっこいの、良いモン持ってきたぞー」

ペットボトルの蓋で麦茶を飲んでたちっこいのが俺を見上げた

「ほら、パピコ!」

袋から出して分けてると、何だそれって感じの視線をパピコに向ける そうかパピコ初心者か

「これな、冷たくてうまいんだぜ」

つまみを引っ張って開けて、ちょっとだけ中身が入ってる蓋の部分をちっこいのに渡す 小人サイズならこれだけでも十分な量のはずだ 食べにくいだろうからスプーンの代わりに短く切った爪楊枝も渡してやるけど、じっとパピコを見たまま食べようとしない

「早く食べねーと溶けちまうぞ」

変なモンじゃないって教える為に先に俺が食べる ひんやり甘くてうまい、やっぱ夏はアイスだな!
半分くらい食べた辺りでちっこいのも大丈夫って思ったのかそーっと爪楊枝で掬って口に入れる 最初はびっくりしてたけど、気に入ったらしくちまちま食べ始めた

「うまいだろ?」

悪くねぇなって感じにちっこいのが頷いた 誤魔化しても無駄だぞ、ちょっと笑ってたの見たんだからな

食べ終わって空になった容器を袋に入れて、もう一本の蓋を開ける こっちもいるかって蓋を見せたらいらねぇって首を横に振られたから、遠慮なく俺が吸わせてもらった

「今度海堂んち行く時これ持ってこうぜ、そしたら桃と二人で分けて食えるだろ」

ちっこいのは桃って聞いた途端ビクッとする 威嚇はしないけど、何回か会ってるのにまだ慣れてないんだよなぁ、このシャイボーイは

「一緒にアイス食ったら仲良くなれるって」

…あ、でもちっこいの同士で分けるって事は俺も海堂と分けんのか…まぁパピコ分けるくらいならできるだろ あいつらに仲良くしろって言ってんのに俺達が喧嘩してたらまたちっこいのに怒られるもんな
ちょっと柔らかくなったパピコを吸って、眉間に皺を寄せてるちっこいのを撫でてやる ちっこいのは俺を見上げてから、ぎこちなく頷いた
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