海桃と小人
『複雑な頃』
部活が終わってから俺はちっこい海堂を連れて海堂の家に行った まさか他にも小人を拾ってる奴がいるなんて思わなかった
「いつ拾ったんだ?」
「2週間くらい前ランニングの帰りに見つけた」
「あー、俺も同じくらいだ 忍足さんと打った帰りに拾った」
「…何で忍足さんと打ってんだ」
「何でって、休みだったし」
下の方からふしゅーって聞こえてきた ちっこいのは海堂の家に来てからずっと俺の前に立って海堂を睨んでる こないだ乾先輩に見せた時はそんなに威嚇しなかったのに、自分に似てるせいか相当警戒してんなぁ
それに比べてちっこい俺は初対面の俺に全然警戒しないどころか手を振ってきた 手を振り返すとぱぁっと笑って海堂の手に抱きつく …俺に似た奴が海堂に懐いてるのって変な気分だな
「餌付けでもしたのかよ?」
「最初からこうだった」
撫でられてるちっこい俺は一緒に遊びたそうにちっこい海堂を見てるのに、こいつは威嚇に必死で気付いてない せっかく仲間が見つかったと思ったのに、仕方ねー奴だな…
「ほらちっこいの、お前の友達だぞ」
ちっこい海堂の背中を押してやると、ちっこい俺が嬉しそうに近付いて来た そのまま小人同士仲良くするかと思ったら、ちっこい海堂はふしゅふしゅ言って後ずさってる
近付かれた分後ろに下がるから全然距離が縮まらない そーゆー遊びだと思ったらしいちっこい俺が走ったら、ちっこい海堂は必死に逃げた
「何だよ、恥ずかしいのか? 誰かさんに似てシャイボーイだな」
「おい桃、転ぶから走るんじゃねぇ」
…桃
海堂を見たら、しまったって顔してる なるほどな、だから部室で桃って叫んだのか
「お前ちまっこい俺の事桃って呼んでんのかよ」
「…桃城って呼んだら桃が良いって言ったんだ」
思わずニヤニヤしてしまう 海堂が俺に似た小人を桃って呼んで可愛がってるなんて面白すぎる、後で乾先輩に言ってやろ
…そういや俺はちっこい海堂の事をちっこいのって呼んでるけど、一回も海堂って呼んでねーな あいつも呼んだら反応するのかな
「海堂」
「あ?」
ちっこい方を呼んだつもりだったのにデカい方が反応した 違う、お前じゃない
「お前じゃなくて小さい方」
「分かりにくい呼び方すんじゃねぇ、他にあんだろ」
「…薫ちゃーん」
「二度と呼ぶんじゃねぇ!」
「じゃあどうしろってんだよ!」
「自分で考えろ!」
「マムシって呼んだらどうせお前も反応すんだろ!?」
「何で俺の名前で呼ぼうとすんだ!!」
「桃だって思いっきり俺の名前じゃねーか!!」
掴み合った瞬間、下の方から今までで一番大きいふしゅーが聞こえてきた
「ちっこいの…」
さっきまで桃から逃げ回ってたちっこい海堂が、俺達の間に入って海堂を威嚇してる
その間に追いついた桃に抱きつかれ、勢い余ったちっこい二人はコロコロと床を転がった
「桃ッ!」
「ちっこいの!」
慌ててバリケードを作って転がる二人を止める ちっこいのは目を回したらしく呆然としてて、桃は楽しかったのか目をキラキラさせて笑ってた…小人だけど大物になりそうだな
「ケガしてなくて良かったな」
「ああ…」
「…お前すげー慌ててたな」
「…うるせぇ」
ボーっとしてたちっこい海堂が捕まえられた事に気付いてハッとする 俺達みたいに喧嘩になるかまた逃げるかのどっちだと思ったけど、ニコニコしてる桃を見て観念したようにふしゅーってするだけだった
仲良くなれそうだなって海堂に言ったらすげー不満そうな顔をされた 言いたい事は分かるけど、ちっこい同士が仲良くしてんのは…いや、まぁ確かに変な気分だけど…ちっこい同士なら別に良いだろ …うん、いや、良いだろ…
部活が終わってから俺はちっこい海堂を連れて海堂の家に行った まさか他にも小人を拾ってる奴がいるなんて思わなかった
「いつ拾ったんだ?」
「2週間くらい前ランニングの帰りに見つけた」
「あー、俺も同じくらいだ 忍足さんと打った帰りに拾った」
「…何で忍足さんと打ってんだ」
「何でって、休みだったし」
下の方からふしゅーって聞こえてきた ちっこいのは海堂の家に来てからずっと俺の前に立って海堂を睨んでる こないだ乾先輩に見せた時はそんなに威嚇しなかったのに、自分に似てるせいか相当警戒してんなぁ
それに比べてちっこい俺は初対面の俺に全然警戒しないどころか手を振ってきた 手を振り返すとぱぁっと笑って海堂の手に抱きつく …俺に似た奴が海堂に懐いてるのって変な気分だな
「餌付けでもしたのかよ?」
「最初からこうだった」
撫でられてるちっこい俺は一緒に遊びたそうにちっこい海堂を見てるのに、こいつは威嚇に必死で気付いてない せっかく仲間が見つかったと思ったのに、仕方ねー奴だな…
「ほらちっこいの、お前の友達だぞ」
ちっこい海堂の背中を押してやると、ちっこい俺が嬉しそうに近付いて来た そのまま小人同士仲良くするかと思ったら、ちっこい海堂はふしゅふしゅ言って後ずさってる
近付かれた分後ろに下がるから全然距離が縮まらない そーゆー遊びだと思ったらしいちっこい俺が走ったら、ちっこい海堂は必死に逃げた
「何だよ、恥ずかしいのか? 誰かさんに似てシャイボーイだな」
「おい桃、転ぶから走るんじゃねぇ」
…桃
海堂を見たら、しまったって顔してる なるほどな、だから部室で桃って叫んだのか
「お前ちまっこい俺の事桃って呼んでんのかよ」
「…桃城って呼んだら桃が良いって言ったんだ」
思わずニヤニヤしてしまう 海堂が俺に似た小人を桃って呼んで可愛がってるなんて面白すぎる、後で乾先輩に言ってやろ
…そういや俺はちっこい海堂の事をちっこいのって呼んでるけど、一回も海堂って呼んでねーな あいつも呼んだら反応するのかな
「海堂」
「あ?」
ちっこい方を呼んだつもりだったのにデカい方が反応した 違う、お前じゃない
「お前じゃなくて小さい方」
「分かりにくい呼び方すんじゃねぇ、他にあんだろ」
「…薫ちゃーん」
「二度と呼ぶんじゃねぇ!」
「じゃあどうしろってんだよ!」
「自分で考えろ!」
「マムシって呼んだらどうせお前も反応すんだろ!?」
「何で俺の名前で呼ぼうとすんだ!!」
「桃だって思いっきり俺の名前じゃねーか!!」
掴み合った瞬間、下の方から今までで一番大きいふしゅーが聞こえてきた
「ちっこいの…」
さっきまで桃から逃げ回ってたちっこい海堂が、俺達の間に入って海堂を威嚇してる
その間に追いついた桃に抱きつかれ、勢い余ったちっこい二人はコロコロと床を転がった
「桃ッ!」
「ちっこいの!」
慌ててバリケードを作って転がる二人を止める ちっこいのは目を回したらしく呆然としてて、桃は楽しかったのか目をキラキラさせて笑ってた…小人だけど大物になりそうだな
「ケガしてなくて良かったな」
「ああ…」
「…お前すげー慌ててたな」
「…うるせぇ」
ボーっとしてたちっこい海堂が捕まえられた事に気付いてハッとする 俺達みたいに喧嘩になるかまた逃げるかのどっちだと思ったけど、ニコニコしてる桃を見て観念したようにふしゅーってするだけだった
仲良くなれそうだなって海堂に言ったらすげー不満そうな顔をされた 言いたい事は分かるけど、ちっこい同士が仲良くしてんのは…いや、まぁ確かに変な気分だけど…ちっこい同士なら別に良いだろ …うん、いや、良いだろ…