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海桃と小人

『しばらく経った頃』

乾いたバンダナをたたんでいると桃が近付いて来る 端を掴んで持ち上げ、布の下に潜り込んだ

「…おい、また出られなくなるぞ」

この前今みたいに入ったら抜け出せなくなって、じたばたしたのをもう忘れたのか あの後バンダナを見るとくっついてきたから苦手になったと思ったが、もう怖くなくなったらしい 単純な奴だ

「桃、出てこい」

もぞもぞ動くバンダナをめくると桃が顔を覗かせる 出てくるかと思ったら笑ってまた奥に隠れた
…こっちにはやらなきゃいけない事があるってのに、たたませないつもりかこいつは

遊び道具にされてるバンダナを素早く回収すると、パチパチと瞬きをしてから、俺の手元にあるのに気付いてトコトコ駆け寄ってくる 終わりだと言ったら不満そうに見上げてきたが、たたむのを邪魔しないで大人しくしている こういう素直なところは助かる、デカい方なら絶対こうはいかない

「ちょっと待ってろ」

ひっくり返さないように少し離れさせ、たたんだバンダナをしまってくる 戻ってくるまで大人しく待っていたから多めに撫でてやった 嬉しそうに笑う桃を持ち上げて机の上に乗せ、引き出しから飴を一粒取り出した キラキラとぶどう味の飴玉みたいな目を輝かせ、早く開けろと俺の手を叩く

拾った初日に何を食べるか分からず、試しに小さく砕いた飴を渡したら喜んでいたから毎日一粒食べさせている うまそうに食べるのが見れるのもあるが、何より飴を食べてる間はウロチョロしないのが良い
パッケージを開けた飴を渡し、クッション代わりに置いたハンカチの上に座らせた 飴に夢中になってる内に裁縫セットを開ける 後は縫い合わせるだけの小さい服は、今日中に完成するだろう


着替え終えた海堂はバンダナをバッグから出そうとして、固まった
たたんだバンダナの間からぶどう味の飴のような紫色がこちらを見ていた サッと青ざめる海堂などお構いなしに、ぷにぷにとしたちまっこい生き物は笑顔で手を振る

「何してんだ桃ッ!」

「はぁ!? 何もしてねぇだろ!?」

「テメーじゃねぇ!!」

「今桃って言っただろ! …あれ、お前今桃って…」

「テメーの事だ桃城!!」
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