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海桃と小人

帰り道、近所の植え込みの木がカサカサと動いていた 猫でも居るのかと足を止めると、見た事がない生き物が出てきた 大きさは十センチくらいの手のひらサイズで、見た目は人間の子供のような…と言うか、桃城だ 五度見したがやっぱり桃城だ

桃城をちまっこくしたような奴は大きい紫色の目でじっと俺を見ている しゃがみ込んで恐る恐る頬らしき部分を指先で触ってみた…餅みたいに柔らかい 警戒心が欠片もねぇのか、つつかれてる間もずっとニコニコしてる そっと首根っこをつまんで持ち上げてみると、少し驚いていたが楽しそうに俺に手を振った
何なんだこいつ…乾先輩なら知ってるか…?
慎重に手のひらに乗せて、落とさないように気をつけながら家まで歩いた

部屋に着いて、取り敢えずちまっこいのを机の上に乗せたがチョロチョロと歩き回って危なっかしい 大人しくしてろと言っても端に寄ろうとするから教科書を積んで壁を作った
登らないように見張りながら俺も椅子に座って、改めて観察する …小人が実在するならこんな感じだろう、桃城に似てる理由は全く分からないが

「…お前は何なんだ?」

ずっと思っていた疑問を口にする 言葉が通じてるのか通じてないのか分からないが、ちまっこいのはキョトンとした顔で首を傾げた

「名前あんのか?」

今度は首を横に振る 多少言葉は通じるらしい
…名前、名前か

「…チビ」

気に入らないのかムッとした表情でブンブン首を横に振った 猫ならミケやタマみたいな定番の名前があるがこいつはどう見ても小さい桃城だ チビがダメなら他につけられる名前は一つしかない 

「…桃城」

声が出ていたらうんうん唸ってそうな顔をする それから俺の手を叩いてもう一回呼ぶように指を一本出してきた

「桃城」

し、を言った辺りでぺちと手を叩かれる

「…まさか桃が良いのか?」

ちまっこいのは首を縦に振って俺の手に抱きついた ぷにぷにの頬をすりつけ、満面の笑みを浮かべる
思わずこみ上げてきた何かをぐっと堪え、ぎゅうぎゅうと離れない桃をぎこちなく撫でた



乾が自分の部屋でノートを読み返していると、スマホが振動し着信を知らせる 画面に表示された後輩の名前を見て、何かあったのかとスマホを取った

「もしもし、乾です…あぁ、どうしたんだ? …小人? …いや、聞いたことがないな…どんな感じなんだ?」

それが…と後輩が自信無さそうにポツリと言った言葉を、乾は思わず聞き返す

「…海堂にそっくり?」
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