夏の隣のお隣さん
『出られない部屋』
気がついたら謎の部屋にいた 唯一の出入り口のドアには『ここはキスをしないと出られない部屋です』という貼り紙が貼ってある 何バカな事言ってんだとドアを開けようとするが、押しても引いてもビクともしなかった 出るには貼り紙に従うしかないだろう 幸い出る条件は緩く、話し合うより試した方が早い
「…だとよ、ほら」
「…何だ」
「譲ってやろうかと思って」
「お前からで良いだろ」
「お前から来いよ」
「…じゃんけんだ」
「はぁ? 何で今更恥ずかしがってんだよ」
「恥ずかしくねぇ」
「絶対恥ずかしがってんだろ…分かった、お前が負けたら大人しくキスしろよ」
結果はグーとチョキで桃城の勝ちだった
「っしゃ、俺の勝ち! ほら、観念してさっさと来いよ!」
「…3回勝負だ!」
「お前諦め悪ぃな!」
粘った海堂だがじゃんけんは呆気なく3連敗した
お題を遂行してからドアノブに手をかけるとアッサリと開き、次に気がついた時にはアパートの部屋の中だった
「楽なお題で良かったな」
「…ああ」
「お前全然楽そうじゃなかったけどな」
その日の夕方、海堂が居間を出ようとするとドアに黄色い付箋が貼ってあった 付箋には『桃城の髪を結ばないと出られない部屋』と書いてある
背後からの視線を無視してそのままドアを開けると「ちょっとくらい付き合え!」と文句が飛んできて、海堂は息を吐いて引き返す
「…ヘアゴムよこせ」
「ん」
ゴムを受け取って桃城の後ろに回り、手櫛で軽く梳いてから低い位置で一つに結んだ
「…へー、お前この髪型好きなんだ」
「そういうわけじゃねぇ」
「はいはい、ありがとな」
桃城がドアを開けようとして手を止める
「…海堂、何だよこれ」
『片付けをしないと出られない部屋』と書かれた青い付箋がドアに貼ってあった 海堂は脱いだ服が置きっぱなしになっている床を指差す
「片付けないと出られねぇぞ」
「お前覚えとけよ!」
桃城が服を片付けに行ったのを見て、海堂は部屋を出て風呂場に向かう 脱衣所でタオルと下着は持ったが替えの部屋着を忘れた事に気付いたが、部屋に戻った時に着替えれば良いだろうとそのまま服を脱いで入浴した
風呂から戻ってきた海堂が寝室のドアを開けようとして、取っ手に黄色い付箋が貼られているのに気付く 今度は何だと見れば『桃城に謝らないと入れない部屋』と書いてあった
「おい桃城!!」
「俺に謝るまでパン1だ!!」
「くだらない部屋にするんじゃねぇ!!」
部屋着を人質、いや服質に取られ海堂は考える こんな事で謝りたくない、そもそも謝るような事はしてない だが寒くない時期とは言えいつまでも下着姿なのは嫌だ
バッと振り返り、棚の上にあるメモに殴り書きをして破り取ると付箋を無視して部屋に入った
「あっ、この野郎ルール違反しやがったな!」
ズカズカと近付き、布団に横になってスマホを見ていた桃城の横に『朝まで出られない布団』と書かれたメモを叩きつけた
「…ドスケベ!! このドスケベエロマムシ!!」
「バカ野郎!! 窓開いてんだろうが!!」
「じゃあ閉めてこいよ!!」
「お前の声がデカいんだからお前が閉めろ!!」
「あー閉めてやるよ!! お前はさっさとごくうすでも準備しとけ!!」
「あれはこの前使い切ったじゃねぇか!!」
「新しいのあんだろうな!!」
「当たり前だろうが!!」
「使い切るまで搾り取ってやるから途中でバテんじゃねーぞ!」
ピシャン!と窓が閉まる音が聞こえてからは二人の声は殆ど聞こえなくなった
…それまでの声は全部聞こえてたけど
「(…お姉さん達、ごくうす使うんだ)」
俺は悩んでから、布団を2センチくらい壁の方に寄せた
気がついたら謎の部屋にいた 唯一の出入り口のドアには『ここはキスをしないと出られない部屋です』という貼り紙が貼ってある 何バカな事言ってんだとドアを開けようとするが、押しても引いてもビクともしなかった 出るには貼り紙に従うしかないだろう 幸い出る条件は緩く、話し合うより試した方が早い
「…だとよ、ほら」
「…何だ」
「譲ってやろうかと思って」
「お前からで良いだろ」
「お前から来いよ」
「…じゃんけんだ」
「はぁ? 何で今更恥ずかしがってんだよ」
「恥ずかしくねぇ」
「絶対恥ずかしがってんだろ…分かった、お前が負けたら大人しくキスしろよ」
結果はグーとチョキで桃城の勝ちだった
「っしゃ、俺の勝ち! ほら、観念してさっさと来いよ!」
「…3回勝負だ!」
「お前諦め悪ぃな!」
粘った海堂だがじゃんけんは呆気なく3連敗した
お題を遂行してからドアノブに手をかけるとアッサリと開き、次に気がついた時にはアパートの部屋の中だった
「楽なお題で良かったな」
「…ああ」
「お前全然楽そうじゃなかったけどな」
その日の夕方、海堂が居間を出ようとするとドアに黄色い付箋が貼ってあった 付箋には『桃城の髪を結ばないと出られない部屋』と書いてある
背後からの視線を無視してそのままドアを開けると「ちょっとくらい付き合え!」と文句が飛んできて、海堂は息を吐いて引き返す
「…ヘアゴムよこせ」
「ん」
ゴムを受け取って桃城の後ろに回り、手櫛で軽く梳いてから低い位置で一つに結んだ
「…へー、お前この髪型好きなんだ」
「そういうわけじゃねぇ」
「はいはい、ありがとな」
桃城がドアを開けようとして手を止める
「…海堂、何だよこれ」
『片付けをしないと出られない部屋』と書かれた青い付箋がドアに貼ってあった 海堂は脱いだ服が置きっぱなしになっている床を指差す
「片付けないと出られねぇぞ」
「お前覚えとけよ!」
桃城が服を片付けに行ったのを見て、海堂は部屋を出て風呂場に向かう 脱衣所でタオルと下着は持ったが替えの部屋着を忘れた事に気付いたが、部屋に戻った時に着替えれば良いだろうとそのまま服を脱いで入浴した
風呂から戻ってきた海堂が寝室のドアを開けようとして、取っ手に黄色い付箋が貼られているのに気付く 今度は何だと見れば『桃城に謝らないと入れない部屋』と書いてあった
「おい桃城!!」
「俺に謝るまでパン1だ!!」
「くだらない部屋にするんじゃねぇ!!」
部屋着を人質、いや服質に取られ海堂は考える こんな事で謝りたくない、そもそも謝るような事はしてない だが寒くない時期とは言えいつまでも下着姿なのは嫌だ
バッと振り返り、棚の上にあるメモに殴り書きをして破り取ると付箋を無視して部屋に入った
「あっ、この野郎ルール違反しやがったな!」
ズカズカと近付き、布団に横になってスマホを見ていた桃城の横に『朝まで出られない布団』と書かれたメモを叩きつけた
「…ドスケベ!! このドスケベエロマムシ!!」
「バカ野郎!! 窓開いてんだろうが!!」
「じゃあ閉めてこいよ!!」
「お前の声がデカいんだからお前が閉めろ!!」
「あー閉めてやるよ!! お前はさっさとごくうすでも準備しとけ!!」
「あれはこの前使い切ったじゃねぇか!!」
「新しいのあんだろうな!!」
「当たり前だろうが!!」
「使い切るまで搾り取ってやるから途中でバテんじゃねーぞ!」
ピシャン!と窓が閉まる音が聞こえてからは二人の声は殆ど聞こえなくなった
…それまでの声は全部聞こえてたけど
「(…お姉さん達、ごくうす使うんだ)」
俺は悩んでから、布団を2センチくらい壁の方に寄せた