for you
『For You』
プレゼントを渡すとひどく驚かれた そんなに不思議かと聞けば桃城は何度も頷く
「部長がラッピングしてくださいって店でお願いするの、想像つかなくて…」
「俺もラッピングくらい頼むが」
プレゼントはレギュラー勢で集まって買いに行ったが、誰も俺がラッピングを頼む事に特に何も言わなかった 寧ろそのままレジ袋で渡そうとする方が大石に止められそうな気がする
「見たかったなぁ、部長がラッピングお願いするとこ」
そんなに面白いものではないだろうが、次に誕生日プレゼントを買いに行く時は一緒にレジに並んでみようと思った
「どうしてそんなにラッピングが気になるんだ」
「ラッピングってより、部長がプレゼントとかラッピングの袋選んでるのが見たいっていうか… どんな風に選んだんスか?」
「? お前が喜びそうな物を考えていただけだ」
特別な事はしていない 商品や包装紙の中から桃城が好きそうな物を選んだだけだ 桃城が誰かにプレゼントを買う時もそうするだろう
だがそう伝えると桃城は顔を赤くして黙り込んでしまった
「桃城? どうした?」
「や、何でもないっス…」
具合が悪いのかと顔を覗き込むとますます桃城は俯いた 夏風邪かもしれない、今日は早く休ませた方が良いだろう
大石に伝えに行こうとすると、桃城にジャージの袖を掴まれた
「好きな人に俺の事考えてたって言われんのって、こんなに嬉しいんスね」
ふへ、と桃城が笑うのを見て、具合は悪くないのかと安心する
…そうか、嬉しかったのか 何気ない言葉でここまで喜ばれると思わなかったが、俺も嬉しく思う
「お前に好きな人と言われるのもこんなに嬉しいんだな」