ハンデがあろうとなかろうと
「何で俵担ぎなんだテメー!」
「荷物は黙ってろ!」
「安定感に欠けるだろーが! グラウンド一周すんだぞ!」
「グラウンド一周程度で俺が落とすと思ってんのか!」
「思ってるから言ってんだよ!」
俵担ぎしてる方とされてる方の変な距離感でやりにくそうに喧嘩する。やりにくくても互いにやめなかった。
「おんぶした状態でラケット受け渡すって結構難しいな、もっと良い持ち方考えないと」
「確かに走者が後ろに手を回すおんぶはリレーに向かないな」
「手を離すとちょっと不安定っスね」
「でも俵担ぎよりはマシだよ…よく不二は手塚をお姫様抱っこできるにゃ〜」
体格に差がある不二・手塚組だが、不二は軽々と手塚をお姫様抱っこしてグラウンドを走ってきた。
「軽いよ、羽根が生えてるのかと思った」
「うっ、美形にしか言えないセリフをサラッと言ってる!」
「恐るべし不二!」
「俺達も遊んでいるわけじゃない、この持ち方に利点があると判断したから試しているんだ」
「「利点?」」
真顔でお姫様抱っこされたまま手塚は続ける。
「荷物がバトンの受け渡しをしてはいけないというルールは無い。荷物同士でバトンを渡し合えば、走者は走る事だけに集中できるというわけだ」
「お姫様抱っこなら走者が体の向きを調整すれば荷物同士でスムーズに受け渡しができるからね」
「なるほど、そ…そう、か…?」
一瞬納得しかけたが何か違う気がする、というか多分違うと思う、いや絶対違う。
「名案だな、おんぶよりも受け渡し効率が60%は上がるだろう」
「ホントか乾!?」
「俺おんぶで良いんスけど」
マユツバすぎる理論だが、菊丸大石組が試してみると本当におんぶよりスムーズに受け渡しができた。
「お姫様抱っこ凄い…! これなら今年も優勝だよん!」
「ちょっと恥ずかしいけどな…
あー…その、海堂、桃…?」
「「嫌っス!!」」
俵担ぎ状態のまま二人が叫ぶ。
「桃、海堂、練習だけでもしてみようか」
「「絶対嫌っス!」」
「俵担ぎは受け渡しが難しいぞ」
「「それでも嫌っス!」」
息ぴったりの抗議三連打を見て越前が呟いた。
「桃先輩達、絶対二人三脚得意だよね」
「来年のハンデはそれを提案すると良い」
「来年もハンデ確定なんスか」