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上の階のお兄ちゃん


『上の階のお兄ちゃん』

桃ちゃんは二階の端っこの部屋に住んでるお兄ちゃんだ 鍵を忘れて家に入れなかった時にお母さんが帰ってくるまでうちで待ってろよって遊んでくれて、それからたまに桃ちゃんの部屋に行って遊んでもらってる お兄ちゃんが出来たみたいですごく嬉しくて、遊んだ日はいつもお母さんに桃ちゃんの話をたくさんする 毎日遊びたいくらい、僕は桃ちゃんが大好きだ
桃ちゃんはマムシのお兄ちゃんって友達と一緒に住んでる 平日は夜までお仕事の日が多くてあまり会えないけど、マムシのお兄ちゃんもお休みの時は三人でお菓子食べたり遊んだりしてる そんなに喋らなくて最初は怖い人だと思ったけど、今は全然怖くない でも桃ちゃんといつも遊べるのはずるいなってちょっと思った

家に着いたらランドセルを置いてすぐに家を出て、階段を上がって桃ちゃんの部屋に行った
手を伸ばしてピンポンを押す 桃ちゃーんって呼んでちょっと待ってると、ドアが開いて桃ちゃんが出てきた

「おかえり、今日は早かったな」

「うん、桃ちゃんとホットケーキ作りたくて」

家から持ってきたホットケーキミックスを桃ちゃんに渡す

「ホットケーキ? でもこれお前んちのだろ」

「良いよ、お母さんが桃ちゃんと好きなお菓子食べて良いって言ってた」

「いや、これは流石にな…」

桃ちゃんはごめんなってホットケーキミックスを僕に返す ダメなんだ…桃ちゃんと一緒にホットケーキ作るの楽しみだったのに しょんぼりしてると、桃ちゃんはうーんって考えてから僕の頭をポンポンってしてくれた

「じゃあうちでホットケーキパーティーするか?」

うんうんと何回も頷いたら、桃ちゃんはニッと笑ってスマホを出した



「ただいま」

桃ちゃんの部屋でトランプしてると大きい荷物を持ったマムシのお兄ちゃんが帰ってきた

「おかえりー」

「おかえりなさーい」

お兄ちゃんが近くのドラッグストアの袋を下ろす 桃ちゃんは買い物に行ってるマムシのお兄ちゃんに電話して、ホットケーキパーティーをするから缶詰とか蜂蜜を買ってきてって頼んでた 

「じゃあ準備するか お手伝い隊長、パーティーに使う物を袋から出しといてくれるか?」

「了解!」

大きい方の袋を開けたら食べ物が入ってた 調味料はよけて、ホットケーキミックスと蜂蜜とチョコソース…それから果物の缶詰を出す
洗剤が入ってる袋も探したらチョコの箱みたいなのが入ってる これもお菓子かな? 漢字ばっかりで全然読めない…えーと…

「0.01…?」

「お、すげーな、小数もう分かんのか」

「うん!」

褒められたのが嬉しくて、他に読める文字が無いか探す あ、ここは平仮名だ

「…ごくうす…」

桃ちゃんはその箱をマムシのお兄ちゃんに向かって思いっきり投げた

桃ちゃん達とホットケーキを作るのは楽しかった 卵と牛乳とホットケーキミックスをいっぱい混ぜてホットプレートで焼いて、果物を乗せたりチョコソースとか蜂蜜を掛けて三人でたくさん食べた

「次チョコソース使って良いか?」

僕がチョコソースを掛けてると桃ちゃんにそう言われた 使い終わったから渡そうとして…良い事思いついた

「僕が桃ちゃんのホットケーキにチョコ掛けて良い?」

「お、じゃあ頼もっかな たくさん掛けてくれよー」

ホットケーキの上でチョコソースのボトルをぎゅーっと押して…ぐるーっと掛けて…できた!

「…はい!」

お皿にはみ出すくらい大きなハート描いて桃ちゃんに渡す 桃ちゃんはちょっとびっくりしてから、笑って僕の頭をくしゃくしゃって撫でてくれた

「かわいい事しやがって…お返しにお前のにも描いてやる!」

桃ちゃんも僕のホットケーキにチョコソースでハートを描いた すごく嬉しかったのに、緊張した時みたいにドキドキしてありがとうって言えなかった 食べるの勿体ないな、ずっと残せたら良いのになぁ

「よーし、ついでにマムシにも描いてやるか!」

「誰がついでだ」

「拗ねんなって」

「おい、蜂蜜の上にチョコ掛けんな!」

蜂蜜とチョコが混ざってムッとしてるお兄ちゃんに桃ちゃんがチョコソースを渡す

「お前は描いてくれねーの?」

マムシのお兄ちゃんは桃ちゃんを見て、お皿にちょんとチョコソースを丸く出す それをつまようじの先でしゅっと引くとチョコの丸がハートの形になった…すごい 桃ちゃんもびっくりして「うわぁ…」って言った

「満足したか」

「…した」

桃ちゃんが嬉しそうに笑ったらまたドキドキして、それからちょっとだけギュッて痛くなった



桃ちゃんがホットプレートを片付けて、マムシのお兄ちゃんがお皿を洗って、洗ったお皿を僕が片付ける 桃ちゃんが近くにいないのを確認して、お兄ちゃんをこっそり呼んだ

「ねぇマムシのお兄ちゃん」

「何だ」

「さっきのごくうすって何?」

お菓子の箱みたいなのが何なのか桃ちゃんは教えてくれなかった すごく気になるのに、何回聞いても何でもないってしか言ってくれない

「…スポーツ用品」

「何でスポーツ用品を買って怒られたの?」

お菓子をたくさん買ったら怒られるかもしれないけど、スポーツで使う物なら買っても怒られないと思うのになぁ…

「あ、分かった! お兄ちゃん無駄遣いしたんだね お父さんもお母さんに無駄遣いしちゃダメってよく怒られてるよ」

「…ああ」

その後にちっちゃい声で「お母さんに言うなよ」って言われた きっとお兄ちゃんは無駄遣いして怒られた事が恥ずかしいんだって思った 僕も食べ物の好き嫌いあるの桃ちゃんに知られたら恥ずかしいから、きっとそうなんだ
秘密にするって約束したらホッとしてたから、お兄ちゃんすごく恥ずかしかったんだな


「あ、マムシのお兄ちゃんのだ」

お母さんとドラッグストアに買い物に行ったらあの箱を見つけて、秘密の約束だったのに言っちゃった どうしよう、お兄ちゃんが無駄遣いした事お母さんに言っちゃった…お兄ちゃんに怒られるかな
ゴクンって大きい音が聞こえた 何だろうって思ってたらお母さんが「桃ちゃん達にアイス買って行こうか?」って言ったから、アイス売り場に行って大きいアイスを買った 早く桃ちゃんとマムシのお兄ちゃんと一緒にアイス食べたいな
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