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隣の部屋のお姉さん

 隣の部屋にはお姉さんが住んでいる お姉さんと言っても男だ、男だけど雰囲気がすごくお姉さんだ 女の人に見えるとかじゃなく、エロ漫画とかに出てくるちょっと警戒心が薄くて隣の学生とか宅配便の配達員とかにあんな事やこんな事をされそうな…そんな雰囲気がある人だ

 初めて会ったのは引っ越して来た初日 ガチガチに緊張して挨拶をしに行った俺にお姉さんは笑顔でよろしくと言ってくれた あの眩しさは忘れられない、一目惚れとか雷に打たれたような感覚ってのはあーゆー事を言うんだろう
ちなみに衝撃が強すぎて聞いた名前は忘れてしまった、あの日の自分をぶん殴ってやりたい


 一ヶ月経ってもお姉さんに会えたのは挨拶の日を合わせて三回だけだ 後の二回は運良くゴミ出しの時にすれ違えた 分かった事は漫画と違って隣に住んでる人と会う事はまずない 話す事もないし、当然おかずのお裾分けもない、お誘いなんて夢のまた夢だ
 だから俺は逆に考えた、燃えるゴミの日を狙えば良いさって考えた
 いつもは回収の時間ギリギリに出してるけどお姉さんとすれ違えたのは早起きができた日だった つまり早起きをすればお姉さんに会える可能性が上がる そう考えて俺は夜ふかしをしないでゴミ出しに備えた まさかゴミ出しに張り切る日が来るなんて思わなかった

 目覚まし時計に起こされ、寝癖をちょっと直してゴミ袋を掴んで部屋を出る
 …行きは会えなかった 帰りはどうだろう
 …帰りも会えないまま部屋の前に来てしまった 今日はダメかとしょぼくれてると、隣の部屋の鍵が開いた音が聞こえた 
 ピシッと背筋を伸ばす 髪は結んでるかな、名称は分からないけど髪を緩くまとめた後ろ姿の色気がすごかった ノロノロ鍵を取り出して時間を稼いでると、隣のドアが開いた

「あっ、こ、こんにちは」

 ガチガチの声で挨拶をする

「…こんにちは」

 お姉さんの明るい声を想像していたら命の危機を感じるくらい低い声が返ってきて悲鳴をあげそうになった
 二度見どころか十度見くらいする だってお姉さんの部屋からお姉さんじゃない人が出てきた、しかも顔が怖い
 鍵を落としそうになってるとドアが半開きの隣の部屋からパタパタと足音が聞こえてきた

「わりー海堂、ゴミまだあった!」

 そう言って部屋からビニール袋を持って出てきたのは俺が会いたかったお姉さんだ お姉さんは俺を見ると「こんちは!」と笑顔で挨拶してくれた 安心してちょっと泣きそうになる

「こ、こんにちは…」

 次の瞬間、低い声のお兄さんに睨まれた俺はまた悲鳴をあげそうになった
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