ハンデがあろうとなかろうと
部活が終わった後、解散の前に話があると手塚が告げる。練習試合でも決まったのか、桃城と海堂が喧嘩して何か壊したか、乾汁禁止条例ができたとか…などと各々考えていると、深く捉えられていると気付いた手塚はほんの少し表情を緩めて「体育祭についてだ」と付け足した。
「今年の中等部の体育祭でも部活動対抗リレーが行われる事が決定した」
「部活動対抗リレー?」
あれかと納得してる二、三年とは反対に、一年生は何の事かと首を傾げる。
「一年生はまだ知らないよね 。部活動対抗リレーは体育祭の恒例行事で、陸上部以外の運動部が部に関係する事しながら四人でリレーする競技だよ。優勝すると来年度の部費が多めにもらえるんだ」
「去年はラケット持って走るだけだから圧勝だったぜ。今年もそうなんですよね?」
「いや、ドリブル必須の部からずるいと抗議があったせいでハンデが課せられる事になった」
「「ハンデ!?」」
「何でっスか! 他にも持つだけの部活あるのに!」
「そうだそうだー!」
「安心しろ、全ての部にハンデをつける事を条件に実行委員に話を付けてきた、不二が」
「話が早くて良かったよ」
その爽やかすぎる笑顔を見て全員が察した。
「脅したにゃ」
「脅したんだな」
「で、でもフェアにして貰えて良かったね!」
「全員ハンデ有りってハンデの意味あります?」
敢えて言おう、全く無い。
「ところでハンデって何だ?」
「走者はラケットと部員を持って走る事になった」
「「部員」」
「持ち方は好きに決めて良いらしい」
「いや、そこは気にしてない」
「でも小柄な一年おんぶすればそんなに苦じゃないよね?」
「残念だが一年は一人しか荷物に選べない決まりだ」
「持たれる奴荷物扱いなんスね」
荷物の最有力候補はちょっと嫌そうな顔をした。
「で、誰が走者と荷物をするんだ?」
「それはもう決めてある、一組目は大石・菊丸組だ」
「楽勝楽勝! いつもやってるもんね!」
「グラウンド一周はやった事ないけど、まぁ大丈夫だろ」
「荷物役は大石だ」
「俺!?」
「逆じゃない!?」
「裏をかく」
「いるかその裏!?」
敢えて言おう、全くいらない。
「二組目、乾・越前組。走者は乾、荷物が越前だ」
「妥当だな」
「荷物って名前が嫌だけど」
「三組目、海堂・桃城組」
「「何でこいつと!」」
「来年はお前達が協力して部をまとめるんだ、その予行演習だと思え」
「何もここで予行演習しなくても良くないっスか!?」
「「てかどっちが荷物っスか!」」
「まだ決めてない」
「桃城、お前が荷物になれ」
「ふざけんなお前が荷物やれ!」
「じゃんけんで決めたらどうだ」
本格的な喧嘩に発展する前に手塚が比較的穏便に済むよう指示する。
「「最初はグー! じゃんけんポン!!」」
こんなに気合いの入ったじゃんけん見た事が無いと思うような鬼気迫るじゃんけんだった。
「ぐああああ!!」
「っしゃあ!!」
数回のあいこの後、桃の配送が決まった。
「アンカーは俺と不二だ」
「僕が走者で手塚が荷物だよ」
「各組ベストな持ち方を研究してくるように、体育祭だろうと俺達は負けない」
「何か納得いかないんだけど…」
「俺もっス…てかタカさんの方が適任じゃないスか?」
「リレー中にバーニングしない方が良いかなって思って、先に手塚と話したんだ」
「海堂と桃で組ませといてバーニングは対策するの?」
半数以上が何だかな…と言いたげな顔でパートナーを見て、グラウンド行くかと声をかけた。