放課後
『放課後』
海堂と桃城は月に一度腕相撲をする仲だ
きっかけは一年生の冬、お小遣いの残りがピンチだった桃城が「自分が腕相撲で勝ったらエビカツバーガー奢って」とダメ元で提案し、負けるわけがないと了承した海堂が瞬殺されたのが始まりだった 帰り道に「次は負けねぇ」と言うと「弱っちいから次までに鍛えてこいよ」と笑われ喧嘩になったが、それ以来二人は毎月賭け腕相撲をするようになった
進級しクラスが変わってからも続き、結果は海堂の四戦全敗…いや、
ーずだん!
「…」
「ごちそーさま」
五連敗だった
「五連勝を記念して、乾杯〜」
「うるせぇ…次は勝つ」
腕相撲のコツを先輩に聞くかと思っていると、桃城の様子がおかしいと気付く いつもなら「はいはい」と軽くあしらって目の前の好物にかぶりつくのに、今日は飲み物を一口飲んだだけで包み紙を開こうともしない
「…どうした」
「他の男子なら腕相撲でこんなに負かしたら『この怪力ゴリラ女!』って言ってくるのに、海堂は言わないなーって思って まぁか弱い女子だから当然なんだけどさ」
勝てないのは自分の鍛え方が足りないからだと受け入れトレーニングの量を増やしてきたが、『桃城が強いから勝てない』と思った事は一度もない ただ、本当にか弱い女子なら運動部男子との腕相撲で五連勝(それも瞬殺)はしないとは少し思った
「ゴリラも酷いけど、昨日なんか『桃城って黙ってれば可愛いのにな』って言われたし 黙ってればって何だよ、いつも可愛いだろ」
「…は?」
「な、何だよ、冗談だけど…」
本気で言ったわけじゃないと口籠るが、海堂が気にしたのはそこではない
「(黙ってれば…?)」
どこのバカだそんな事を言ったのは、桃城の何を見たらそんな事が言えるんだ
「お前が黙ってられるわけねぇだろ、そいつ幻覚見てんのか」
「はぁ!? お前の方が失礼だな!?」
「事実だろうが」
「サイテー! デリカシー無い! だから女子にモテないんだよ!」
「うるせぇな、食わねぇのか」
「言われなくても食べるっつーの!」
文句を言いながら包み紙を開くが、食べた瞬間ぱっと表情が明るくなる
「やっぱエビカツバーガーは最高だな!」
単純な奴、と海堂もハンバーガーを手に取る
よく食べよく喋りよく笑うのが桃城だ 黙らなくて良い、このままで十分…
「(…十分?)」
包み紙を開きかけた手が止まる 十分、何だ 何と続けようとした さっきの会話から考えて続く言葉といったら いや、まさか、そんなはずは
信じられずに隣を見ると、視線に気付いた桃城も海堂を見る その瞬間、絡まっていた紐が解けたような感覚に襲われた
海堂と桃城は月に一度腕相撲をする仲だ
きっかけは一年生の冬、お小遣いの残りがピンチだった桃城が「自分が腕相撲で勝ったらエビカツバーガー奢って」とダメ元で提案し、負けるわけがないと了承した海堂が瞬殺されたのが始まりだった 帰り道に「次は負けねぇ」と言うと「弱っちいから次までに鍛えてこいよ」と笑われ喧嘩になったが、それ以来二人は毎月賭け腕相撲をするようになった
進級しクラスが変わってからも続き、結果は海堂の四戦全敗…いや、
ーずだん!
「…」
「ごちそーさま」
五連敗だった
「五連勝を記念して、乾杯〜」
「うるせぇ…次は勝つ」
腕相撲のコツを先輩に聞くかと思っていると、桃城の様子がおかしいと気付く いつもなら「はいはい」と軽くあしらって目の前の好物にかぶりつくのに、今日は飲み物を一口飲んだだけで包み紙を開こうともしない
「…どうした」
「他の男子なら腕相撲でこんなに負かしたら『この怪力ゴリラ女!』って言ってくるのに、海堂は言わないなーって思って まぁか弱い女子だから当然なんだけどさ」
勝てないのは自分の鍛え方が足りないからだと受け入れトレーニングの量を増やしてきたが、『桃城が強いから勝てない』と思った事は一度もない ただ、本当にか弱い女子なら運動部男子との腕相撲で五連勝(それも瞬殺)はしないとは少し思った
「ゴリラも酷いけど、昨日なんか『桃城って黙ってれば可愛いのにな』って言われたし 黙ってればって何だよ、いつも可愛いだろ」
「…は?」
「な、何だよ、冗談だけど…」
本気で言ったわけじゃないと口籠るが、海堂が気にしたのはそこではない
「(黙ってれば…?)」
どこのバカだそんな事を言ったのは、桃城の何を見たらそんな事が言えるんだ
「お前が黙ってられるわけねぇだろ、そいつ幻覚見てんのか」
「はぁ!? お前の方が失礼だな!?」
「事実だろうが」
「サイテー! デリカシー無い! だから女子にモテないんだよ!」
「うるせぇな、食わねぇのか」
「言われなくても食べるっつーの!」
文句を言いながら包み紙を開くが、食べた瞬間ぱっと表情が明るくなる
「やっぱエビカツバーガーは最高だな!」
単純な奴、と海堂もハンバーガーを手に取る
よく食べよく喋りよく笑うのが桃城だ 黙らなくて良い、このままで十分…
「(…十分?)」
包み紙を開きかけた手が止まる 十分、何だ 何と続けようとした さっきの会話から考えて続く言葉といったら いや、まさか、そんなはずは
信じられずに隣を見ると、視線に気付いた桃城も海堂を見る その瞬間、絡まっていた紐が解けたような感覚に襲われた