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誕生日

『誕生日』

桃城は空になった皿を置いて、隣に座る海堂を見る

「なぁ、何かして欲しい事とかあるか?」

「何だいきなり」

「…プレゼント、用意してねーから」

本当は前もって用意するつもりだったが、素直に渡せない気がして結局何も選べないまま当日を迎えてしまった

「誕生日くらい喧嘩しなくても良いだろ」

そう伝えると海堂は自分のケーキを切り分け、半分を食べるともう半分が乗った皿を桃城に渡す

「やる」

「へ? でもお前のケーキだろ…苺乗ってるし」

海堂が渡したのはパーティーの主役とも言えるケーキ、それも苺が乗ってる部分だ 他の物なら気にせず受け取るが、いくら何でもこれは食べられない

「お前がして欲しい事言えって言ったんだろうが」

「…じゃあ食うけど、後で返せって言うなよ」

「お前と違って食い意地張ってねぇんだからそんな事言うか」

一言余計だとムッとするが、今日は喧嘩は控えようとしたのを思い出す 少し気が引けるが本人が言うならと貰ったケーキを口に運んだ 

「たくさん食べねーとデカくなんねーぞ」

「身体測定で俺の方が背が高かった」

「夏には俺の方がデカくなるし」

「無理に決まってんだろ」

「うるせー、絶対抜いてやるからな」

桃城は最後に残した苺をフォークで刺し、じっと見つめる

「…他に何かねーの? これだと俺がケーキ貰っただけだし、何かスッキリしねーよ」

「…特にねぇ」

こんな事になるなら喧嘩になっても何か渡せば良かった 苺を食べようとした時、来年、と小さく聞こえた

「来年?」

「…何でもねぇ」

「来年何だよ」

「何でもねぇ」

「気になるだろ…あっ! お前来年の部長の座って言おうとしたな!?」

「そんなの言うまでもなく俺だろうが!」

「はぁ!? お前に任せられるかよ、絶対俺だ!!」

「やんのかコラ!!」

料理をひっくり返しそうになった二人にはグラウンド十周が宣告された




桃城は空になった皿を置いて、隣に座る海堂を見る

「お前ホントはあの時何て言おうとしたんだよ」

中学二年の時、と言うと海堂は意外そうに見返した

「まだ覚えてたのか」

「覚えてるに決まってんだろ、十年経っても結局教えてもらってねーし」

「…大した事じゃねぇ」

自分のケーキを半分に切り分け、片方を食べると残りが乗った皿を桃城に渡す

「来年もお前が居れば良いって思っただけだ」

苺を食べようとした手を止め、まじまじと海堂を見つめる

「悪いか」

「別に、随分可愛い事考えてたんだなって」

「うるせぇ」

今も思ってると呟くと、桃城は知ってると笑った
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