当てないと出られない部屋
受け達の部屋
『一つ選ぶとしたら…一番最初の行為かな。今と比べたら上手くできなかった事も多かったしお互いデータと違うとずっと言ってたけど、それでも初めて好きな人と繋がれたのは特別だよ』
『…先日赤也が喜びそうな事を仁王に教わってな…半信半疑ではあったが実際にやってみたら…その、本当に喜んでくれたのだ。羞恥がなかったわけではないが…やって良かったと思っている』
『海堂の奴、ずっと何か遠慮してる感じだったから別にお前が変態でも気にしねーから好きにしろって言ったんスけど、そしたらその後思いっきりぐっちゃぐちゃにされたんスよ!? あのドスケベエロマムシめ…スケベなくせに変な我慢しちゃいけねーなぁ、いけねーよ!』
今までで一番良かった性行為について聞かれた三人はそう答えた。部屋から出る為の条件の一つと言われれば恥ずかしいと黙っているわけにもいかず、答えるまでにあまり時間は掛からなかった。
そして第二段階として相手が出した答えを海堂、切原、柳が当てるという事で、別室に閉じ込められた三人の映像がモニターに映し出された。相手が一番良かったと思っている行為がどれか当てろと言われた時の反応も、頭を抱えながら考える様子も、音声込みで全てが筒抜けだった。
「これ当てられても恥ずかしいけど、外されても何か複雑っスね…」
乾と真田が同意しようとした時、一番最初に答えた柳が盛大に外す。
複雑だ。そして同じ『受け側』だからか先程答えを言い合った時は感じなかったが、向こうの三人が自分との行為を真剣に思い返していると考えると急に恥ずかしくなる。
「すまない蓮二、新婚プレイも良かったんだが…」
「あ、良かったんスね…」
「…赤也!! 何故鉛筆に数字を書く!?」
鉛筆占いをしようとしている切原を見た真田が思わず声をあげる。運に委ねる姿勢に柳達も攻めとしてのプライドは無いのかと咎めた。
『三回中三回先に暴発した俺にそんなモン無いんスよ!!』
「たわけ!! そんな些細な事を気にしてどうする!! 自分の考えに自信を持たんか!!」
「男の意地ってヤツじゃないスか?」
「それか完全に選択問題に苦手意識があるんだろうな」
しかし運が味方をしたのか真田の気合いが引き寄せたのか、ピンポンと正解を知らせる音が鳴る。過程はともかく当たりは当たりだ。自分も気持ち良かったと言われ、真田の照れ隠しの怒りも鎮まる。
続いて答えた海堂も一発で、それも自力で当てた。具体的に内容を挙げられた桃城はその時の行為を鮮明に思い出したらしく真っ赤になる。
「わ、悪くはなかったけど、お前が一番満足してたから選んだんだからな!? 毎回あんなに激しくしてほしいわけじゃねーからな!?」
「桃は海堂が我慢せずに気持ち良くなってくれるのが好きなんだね」
的確に要点を射抜かれた桃城は「違う」の一言を返すのも大変だった。なるほど、と真田にも見つめられ、萎むように大人しくなる。
「俺も蓮二に好きにして良いよと言ってみようかな、新たなプレイのデータが取れるかもしれない」
「赤也に言ったら…またよく分からん言葉をいろいろと言いそうだな。できるだけは叶えてやりたいが…」
残るは柳だけだ。なかなか当たらず、自信をなくしたように呟いた五回目の回答でようやく正解音が鳴る。
「蓮二はあまり上手くできなかったのが分かっているから、俺が最初の行為を選ぶと思っていなかったんだろうな」
「あー、柳さんっぽいっスね…」
「それも男の意地というヤツか」
ともかく無事に終わった、これで出られるぞと喜んでいると、モニターに映っていた映像は途切れて文章が表示される。
今度は今の逆で、受け側が攻め側の一番良かったと思った行為を当てるように…と書かれていた。