氷底より永遠に
「侑士はホンマに桃城の何なん!?」
桃城に抑えられないクソデカ感情を持つ海堂と忍足のダブルス……通称泥沼ダブルスが結成してから謙也が何度叫んだか分からない質問だ。海堂が彼氏面をしてマウントを取るのは分かる、本当に彼氏だからだ。だが忍足侑士の桃城への対応は謎としか言えなかった。
横恋慕を狙っているかと思えば執拗に「イエス桃城ノータッチがポリシーや」と健全な関係だとアピールし、なのに海堂を恋敵と認定し隙あらばかっ攫おうとしている。かわいい後輩では済まされない愛情表情の数々を見せつけておきながら下心がないと言い続けられる度胸だけは、謙也は認めていた。
「俺は桃城の忍足さんや」
「それが分からんっちゅー話や! 桃城の事好きなん!?」
「好きやで」
「即答すなッ!!」
「自分が聞いたんやろ」
そうだけどそうじゃないと頭を抱える従兄弟を見て忍足は何なんだとため息をついた。
忍足にとって桃城は特別な人間だ。氷帝の仲間達ともまた違う、大切な友人。誰よりも熱くさせたライバル。あの広くも狭いコートで、奥底に眠る自分を見つけてくれた恩人。
好意を向けているのかと聞かれれば、今のように迷わず肯定する。これから先もずっと、どれだけの時が経とうと、それは変わらないだろう。