ポッキーゲーム
巻き込まれた司会の二人にポッキーを一箱ずつ渡し、自分達以外誰も居なくなった休憩室で柳は寝ている乾を肩にもたれ掛からせる 背負うなり何なりして部屋に戻っても良かったが、柄にもなく少しだけ感傷に浸っていた
ポッキーゲームをしたかった、あわよくばキスをしたかった、というかただ単にキスがしたかった
上手くいかないものだなと一人苦笑すると、鼻にかかったような声を漏らして乾が身動ぎする
「おはよう貞治…もしかして寝てた、とお前は言う」
「…おはよう蓮二、ポッキーゲーム大会は終わってしまったようだね」
「気にするな、起きていたのは弦一郎くらいだ」
部屋に戻るかと聞く柳に乾は肯定とも否定ともつかない曖昧な返事をする まだ夢うつつなのだろうと思っていると、先程よりもハッキリとした声で名前を呼ばれた
「口実を作らなくてもキスならいつでもして良いよ」
ポツリと呟いた言葉は水面に投げ入れた小石のようだった 小さくも広がる波に隣を見る 違うのかと言いたげな表情は語弊がある言い方をしたと気付いたものに変わり、言葉を足した
「勿論時と場合にもよるけど、二人きりの時なら構わないよ」
野暮だと分かりつつも柳が問いかける 乾は答えの代わりにレンズの奥で瞼を閉じた