三千世界の蝮を殺し

一方放課後の青学。菊丸と大石とテニス部の様子を見に行こうとしていた手塚のスマホにメッセージが届いた。

「…跡部からだ」

「跡部から?」

「遊びの誘い?」

『桃城がママになったそうだな。めでたいじゃねーの。
今忍足が怒り狂って海堂に決闘を挑みに向かってるぜ。俺も行くからお前も見に来い。』

「…桃城がママになったらしい」

「「ママ!?」」

 大石と菊丸が叫ぶと、ちょうど桃城が部室から出てきた。

「あ、お疲れ様っス先輩達! 部活見に来てくれたんスね!」

「「桃っ!!」」

「はい?」

「どうしてそんな大事な事を言ってくれなかったんだ!」

「何で俺達より先に跡部が知ってるんだよぉ!!」

「えっ、何がですか?」

 突然詰め寄られ困惑する桃城に手塚は表情を変えずに爆弾を投下した。

「跡部からお前がママになったと聞いた」

「俺がママ!?」

「うるせぇぞ桃城」

「「海堂っ!!」」

 部室から出てきた海堂は鬼気迫る大石と菊丸、無表情の手塚、混乱してる桃城に一瞬で囲まれる。

「な、何スか…」

「桃城はママになったのか」

「俺、いつからママになったんだ…?」

 海堂は困り果てたように眉尻を下げる桃城を見て、フシュウ…と冷静に息を吐く。そうか海堂は知ってるのかと三年生達が安心した次の瞬間。

「誰とだ!?」

 全然冷静じゃなかった。

「お前じゃないのか!?」

「いや海堂とでも複雑だけど!」

「俺まだ中学生なのに!」

「おい桃城、相手は誰だ!」

 混沌とする中、手塚が「そう言えば」と更に燃料を追加した。

「海堂、忍足と決闘するらしいな」

「決闘!?」

「忍足さんと!?」

「今向かってるそうだ」

「「今!?」」

「「桃ちゃん先輩〜っ!」」

 ランニングに行っていた堀尾達が慌てて戻ってくる。

「大変っス! 校門の前にリムジンが!」

「リムジン!?」

「まさか…!」

「はァーっはっはァ! はるばる来たぜ青学!」

 突然聞こえた高笑いに、そのまさかがマジだと悟った。

「海堂! 忍足がお前に決闘を申し込むぜ!」

「いきなり堪忍な」

 本当に現れた跡部と忍足に桃城達の思考が止まる。何一つ処理できないままどんどん事態が積み上がっていく。ママを処理したいけど決闘も気になるしあとリムジン見たい。
 とりあえず桃城は決闘から片付ける事にした。

「忍足さん、どうしたんスか決闘なんて! あと何か、俺がママとか…」

「心配無いで、桃城」

 声は穏やかなのに、拒絶するように心は閉ざされていた。

「お前は何も心配せんでええ」

「忍足さん?」

 忍足は戸惑う桃城の肩を叩き、ただ一人自分の心を理解できる者と向き合う。
 あの目に自分と同じ感情を抱いた男。今日じゃなくても、いずれケリはつけるつもりだった。

「…なぁ海堂、自分も俺と試合したいんやろ」

 海堂は忍足を睨み、コートに入るよう告げた。
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