ツイログ71
『ひな祭り』海桃
今日家でパーティーやるから、お前も来いよ。
桃城から少し恥ずかしそうに言われた海堂は混乱した。付き合ってる相手に「今日家に誰も居ないんだ」と誘う展開があるとは聞いた事がある。だが今言われたのは逆だ。
パーティー、何の。そう考えているのが伝わったのか、桃城はひな祭りだと答える。
「ちらし寿司とかケーキ用意して妹を祝うんだけど、人数多い方が盛り上がるし…夜も泊まってけば良いだろ? ほら…盛り上がりすぎて疲れるかも…」
男兄弟二人の海堂家にとってひな祭りはそこまで大きな行事ではない。女の子がいる家はパーティーをするのかと感心していると、爆弾を落とされた。ひな祭りパーティーは疲れるくらい盛り上がる事をする為の、自分を泊まらせる為の口実なのでは…とドキリとする。
「…良いのか?」
自分が行って。家に泊まって。そして、その先をして。
期待が込められた視線を受け、桃城は静かに頷いた。
「ほらよ、お前用のペンライト」
桃城の家で渡されたのは食事に使う箸ではなく、ペンライトだった。このボタンを押すと明かりの色が変わると使い方の説明を受けるが、全く頭に入ってこない。
「これからアイドルごっこカラオケ大会が始まるから、全力で振れよ」
「は? おい、待て…アイドルごっこカラオケ大会!?」
「本日の主役が最近アイドルにハマってて、歌とダンスの練習してるんだよ。で、それが広まって今家でアイドルごっこが流行ってんの。歌って踊ってファンサして、聞いてる人はペンライトとかうちわ振ったり声出して応援するんだ」
「お前の家そんな陽気な事になってたのか」
勿論家族全員全力で振るからな、と真剣に言われ、海堂は再び混乱した。ひな祭りパーティーだと聞いたから、誕生日のようにみんなでちらし寿司を食べると思っていた。その後は部屋で二人きりで…とスケベ心を膨らませていたのに、桃城から告げられたのは本当に健全に盛り上がりそうな大会だった。空気の抜けた風船のようにスケベ心は萎んでいく。
「まぁ海堂ってこーゆーの得意だろ? 期待してるぜ」
「得意なわけあるか、やった事ねぇぞ」
しかし海堂は桃城が歌う番になった時、桃城の家族から絶賛される程見事なペンライト捌きを見せた。
