ツイログ72
『シスコンの彼氏2』
「いつ見てもお前の部屋すげーよな」
「そうか?」
薫の部屋には家族写真がいくつも飾ってある。家族写真と言えば聞こえは良いが要は最愛の姉の写真なので、アイドルのグッズを飾るような物なのだろうと桃城は考えた。
俺の彼氏はホントに筋金入りだとぼやきながら写真を眺める。桃城は中学に入学する前の薫を知らないので、小学校や幼稚園時代の姿は新鮮だ。幼い時から目つきはちょっと悪いが、ここから誤解されてしまう程顔が怖くてテニス部屈指のバキバキボディの鬼シスコンになるとは思えない。
「昔はこんなにかわいかったんだな〜。これがこうなっちまうのかぁ、時の流れは残酷だぜ…」
「成長期迎えたら誰だってこうなるだろ」
「残念でした〜、俺は今も昔もかわいい桃ちゃんだぜ」
一番古い写真は赤ん坊の彼が小さい女の子に抱き上げられている時のものだろう。誰かなんて聞かなくても分かる、薫にとっての世界チャンピオンである桃子姉さんだ。
活発そうな女児の長い三つ編みに気付いた桃城は先程見た写真に視線を戻す。何枚か後の写真ではショートカットになっていて、一番新しい写真でも髪は肩より短かった。先日初めて挨拶した時も髪は同じくらいの長さで、こんなに長かった時があったのかとまじまじと見つめる。
「昔の姉ちゃんって髪長かったんだな」
「テニスやるからって中学に入った時に切ったんだ。それからはずっと短い」
「へー、結構バッサリ切ったんだな。長い姉ちゃんと短い姉ちゃんどっちが好き?」
「どんな姉さんもかわいい」
「はいはい、そーだよな」
写真で毎日見ているからか、短くして五年以上経つのに今でも長い髪の姉をすぐに思い出せる。あの頃はまだ学校で過ごす時間が短かったから、遊ぶ時間や世話をしてくれる時間が多かった。
転んで泣いたらすっ飛んできて背負ってくれた、切原に意地悪をされた時はすっ飛んできてドロップキックで撃退してくれた。強くて優しくてかわいい、世界で一番のヒーローのような存在。今でもそれは変わらない。
…そんな何よりも大切な姉が先日連れてきた彼氏を、薫は全く良く思っていなかった。祖母と母から眼鏡好きの血を受け継いだのはまだ良いが、だったら祖父や父のような誠実そうな男に惚れてくれたら良かった。何だあの眼鏡は、ふざけやがって、俺の姉さんだぞ。姉が認めても俺は認めねぇと文句を言っていたら珍しく兄のリョーマが優しい言葉を掛けてきたが、怒りで燃えている薫には焼け石に水だった。
「…昔、姉さんの髪をとかすのを手伝った覚えがある。母さんにとかしてもらってたのを見て、長くて姉さん一人じゃ大変なんだ、俺も手伝ってやらねぇとって思って…」
ブラシを持ってお手伝いすると駄々をこねた、恥ずかしい思い出が蘇る。それを話しても良いと思ったのは、桃城も姉と同じくらい特別な存在だからだ。かわいい事してたんだなと笑われても嫌ではなかった。
「じゃあ今度俺の髪とかすの手伝わせてやるよ」
「とかす程長くねぇだろ」
「下ろすと意外と長いんだぜ」
そんな事ないだろうと薫は手を伸ばし、ワックスでセットしている前髪を少し強引に下ろす。
「あっ! 何すんだよ!」
ぐしゃぐしゃとヘアスタイルを乱された桃城が文句を言っても薫の手は止まらない。あっという間に前髪を全て下ろされ、額が隠れ目にも掛かってしまう。
「たしかに意外と長いな」
「たしかにじゃねーよ! 今度って言ったろ!?」
いつもと印象が違うので至近距離でじっくり観察していると、桃城がソワソワし始める。そういう雰囲気だろうと桃城が目を閉じるのと、姉の帰宅を告げる声が聞こえたのは同時だった。
きっと続きはしないだろうと桃城が目を開けると、目の前まで薫は近付いていた。するの、と問う前にさらに距離を詰められ、そのまま口を塞がれた。
「いつ見てもお前の部屋すげーよな」
「そうか?」
薫の部屋には家族写真がいくつも飾ってある。家族写真と言えば聞こえは良いが要は最愛の姉の写真なので、アイドルのグッズを飾るような物なのだろうと桃城は考えた。
俺の彼氏はホントに筋金入りだとぼやきながら写真を眺める。桃城は中学に入学する前の薫を知らないので、小学校や幼稚園時代の姿は新鮮だ。幼い時から目つきはちょっと悪いが、ここから誤解されてしまう程顔が怖くてテニス部屈指のバキバキボディの鬼シスコンになるとは思えない。
「昔はこんなにかわいかったんだな〜。これがこうなっちまうのかぁ、時の流れは残酷だぜ…」
「成長期迎えたら誰だってこうなるだろ」
「残念でした〜、俺は今も昔もかわいい桃ちゃんだぜ」
一番古い写真は赤ん坊の彼が小さい女の子に抱き上げられている時のものだろう。誰かなんて聞かなくても分かる、薫にとっての世界チャンピオンである桃子姉さんだ。
活発そうな女児の長い三つ編みに気付いた桃城は先程見た写真に視線を戻す。何枚か後の写真ではショートカットになっていて、一番新しい写真でも髪は肩より短かった。先日初めて挨拶した時も髪は同じくらいの長さで、こんなに長かった時があったのかとまじまじと見つめる。
「昔の姉ちゃんって髪長かったんだな」
「テニスやるからって中学に入った時に切ったんだ。それからはずっと短い」
「へー、結構バッサリ切ったんだな。長い姉ちゃんと短い姉ちゃんどっちが好き?」
「どんな姉さんもかわいい」
「はいはい、そーだよな」
写真で毎日見ているからか、短くして五年以上経つのに今でも長い髪の姉をすぐに思い出せる。あの頃はまだ学校で過ごす時間が短かったから、遊ぶ時間や世話をしてくれる時間が多かった。
転んで泣いたらすっ飛んできて背負ってくれた、切原に意地悪をされた時はすっ飛んできてドロップキックで撃退してくれた。強くて優しくてかわいい、世界で一番のヒーローのような存在。今でもそれは変わらない。
…そんな何よりも大切な姉が先日連れてきた彼氏を、薫は全く良く思っていなかった。祖母と母から眼鏡好きの血を受け継いだのはまだ良いが、だったら祖父や父のような誠実そうな男に惚れてくれたら良かった。何だあの眼鏡は、ふざけやがって、俺の姉さんだぞ。姉が認めても俺は認めねぇと文句を言っていたら珍しく兄のリョーマが優しい言葉を掛けてきたが、怒りで燃えている薫には焼け石に水だった。
「…昔、姉さんの髪をとかすのを手伝った覚えがある。母さんにとかしてもらってたのを見て、長くて姉さん一人じゃ大変なんだ、俺も手伝ってやらねぇとって思って…」
ブラシを持ってお手伝いすると駄々をこねた、恥ずかしい思い出が蘇る。それを話しても良いと思ったのは、桃城も姉と同じくらい特別な存在だからだ。かわいい事してたんだなと笑われても嫌ではなかった。
「じゃあ今度俺の髪とかすの手伝わせてやるよ」
「とかす程長くねぇだろ」
「下ろすと意外と長いんだぜ」
そんな事ないだろうと薫は手を伸ばし、ワックスでセットしている前髪を少し強引に下ろす。
「あっ! 何すんだよ!」
ぐしゃぐしゃとヘアスタイルを乱された桃城が文句を言っても薫の手は止まらない。あっという間に前髪を全て下ろされ、額が隠れ目にも掛かってしまう。
「たしかに意外と長いな」
「たしかにじゃねーよ! 今度って言ったろ!?」
いつもと印象が違うので至近距離でじっくり観察していると、桃城がソワソワし始める。そういう雰囲気だろうと桃城が目を閉じるのと、姉の帰宅を告げる声が聞こえたのは同時だった。
きっと続きはしないだろうと桃城が目を開けると、目の前まで薫は近付いていた。するの、と問う前にさらに距離を詰められ、そのまま口を塞がれた。
