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ツイログ72


『誤認』

 日吉が糸を結んだ五円玉を切原の目の前で揺らす。お前はだんだん眠くなる…と定番の催眠術を掛けようとするが、切原の目はバッチリしたままだ。

「いつまで続けるんだよ…」

「お前が眠くなるまでだ」

「やっても良いけど催眠術が成功したんじゃなくて絶対飽きて眠くなっただけだからな!?」

「切原が催眠耐性あるかもしれんから試しに海堂にもやってみたらどうや」

「そんなの効くわけねぇだろ」

「そーだそーだ! ついでに俺にも催眠術させろ!」

 切原は日吉から五円玉を奪い取ると海堂へ向けて小銭を揺らす。無言で揺らすのを見た財前が何か言えと急かすが、催眠の案が浮かばない切原はうんうん唸るだけだ。

「あらっ、見てお父さん! うちの光がみんなと催眠術ごっこしてるわぁ!」

「ホンマやなお母さん!」

「オトンとオカンなら大阪におるんで間に合ってます」

「親子コントって言えばさぁ、海堂と桃城と越前の三人でもできるんじゃね?」

「やるかどうかは別として、人選としてはまぁ悪くはないだろうな…忍足さんは嫌がるだろうが」

 もし合宿所で三人一組親子コント大会をするなら参加しそうな組み合わせだ。日吉はそう考えたが、そんな大会やらないだろうとすぐに自分へツッコミを入れる。

「お前ら何やってんだ? 催眠術?」

「あっ、ちょうど良いところに…なぁ桃城、今度海堂と越前と親子コントやってみろよ! 海堂が父ちゃんで桃城が母ちゃんで、越前が息子のヤツ!」

「えー、何だよそれー!」

「…桃城が嫁で…越前が息子…」

 え、とその場に居合わせた全員が海堂を見る。ガクンと寝落ちしたように海堂の頭が下がったかと思えば、いつもよりボンヤリした目で桃城を見た。

「…母さん、越前はまた宿題もしないで遊びに行ったのか」

 直後合宿所に絶叫が響き渡る。

「何をやってるんだ切原!!」

「アレで催眠術に掛かるなんて思わねーだろ!?」

「てか息子を名字で呼ぶん?」

「俺が海堂の奥さん!?」

「ええやん、今も奥さんみたいなモンやろ」

「せやねぇ、ええ夫婦漫才やと思うわ」

「漫才はしなくて良いんスよ!!」

「海堂、奥さんに普段思ってるけど内緒にしてる事言うてみ」

「結婚してから大分経つがお前はずっとかわいいな」

 恥ずかしくなった桃城が耐えきれずに角度をつけて手刀を入れる。叩けば直るだろうという古典的な発想と照れ隠しからの行動だったが、残念な事にこれがキッカケで催眠が悪化して青学のメンバーは皆自分達の息子だと思い込んでしまった。
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