ツイログ72
『エイプリルフール』海桃
「そういや今日エイプリルフールだったな」
桃城がそう言ったのは間もなく正午になるという時間だった。エイプリルフールなのは分かっていたが嘘は得意ではない海堂からすればあまり関係のない日で、そうだなと軽く流す。
「知ってるか? エイプリルフールって嘘ついて良いのは午前中までなんだぜ?」
「知っ…てる」
「あっ、今嘘ついただろ! まぁギリギリ午前中だから許してやるか!」
スマホに表示された時刻は十一時五十九分。嘘をつこうと思って言ったわけではないが、一応は許される時間だ。
「なぁ海堂」
「何だ」
ニヤニヤしている様子から、桃城は嘘をつくつもりなんだろう。この流れでは何を言われても騙されはしないが、仕方がないので海堂は聞いてやる事にした。
「好きだよ」
心臓が飛び出るかと思った。絶対に驚かないと軽く考えていたのに、投げられた言葉は海堂の想像を大きく上回った。
これがあと一分でも、いや、十秒でも早く言われていたらこうはならなかった。
桃城は明らかに、十二時に変わったのを確認した上で、海堂に好きだと言った。手を伸ばしてもけして届かない、届いたとしても掴めないような、そんな雰囲気があった。
動揺する海堂を見て桃城はケラケラと笑い、立ち上がる。
「どっちだと思う?」
俺は時間は守る男だぜ、と肩を叩かれ、海堂の硬直が解ける。それは間違いなく嘘だと返した声はひどく掠れていた。
「そんな事ねーなぁ、そんな事ねーよ!」
拗ねたように言い返す桃城はいつも通りで、海堂は余計に混乱する。エイプリルフールは冗談だとすぐに分かる嘘をつくべきだ。少なくとも人を悩ませるような嘘は言うものではない。ため息をついてから顔を上げると、桃城と目が合った。
読まれたと思った。こみ上げてきた期待を。胸の内で燃え盛る炎を。
だが読まれただけなら、まだ良かった。
「さっきのがホントか嘘か、お前が決めて良いよ」
青学のくせ者は、逃してはくれなかった。
